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呼勇至魔記  作者: SaicA
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1日目、晴れ(2)

 さて、面白味も無い講義の様子を紹介した所で時間の無駄だ。例の如く要点を纏めるとしよう。


 ・この国の名はベギナ王国。それなりの領土を持ったそれなりの国。

 ・魔王領はここから北北西の方角。他国を挟んだ向かい側に位置する。

 ・隣接していない為、被害が少ない。環境も人が住むのに適する。

 ・従って異界の勇者の召喚・育成に最適であった。勇者の召喚には他国との会議でこの国に決定された。

 国絡みの大まかな情報はこの程度。


 ・魔法は誰でも使える訳では無い。100人に1人いれば良い方。ちなみに、魔法を使えるものは「魔導士」と言われている。

 「あ、私は魔法は使えません。剣の実力だけで団長の座を勝ち取りました」とはテレンス談。

 ・この国で抱えている魔導士の数は多くはない。申告すれば重宝され職に就けるが、秘匿する者も一定数いる。理由は多々あるが、「死ぬまで魔王軍と永遠に戦わされる」という噂が広がったせいだとか。

 ・そんな理由で、この国の場合魔法はあまり発展したり生活に根付いてたりはしてない。

 勇者の召喚に使われた魔法陣も、偶然の産物とか超古代文明とか言われてるらしい。

 魔法はそんな感じ。勇者の俺達も素質があれば使えるらしいが、さてどうなるやら。


 ・魔物はいる。動物に似ているが、その違いは主に凶暴性で判断されることが多い。ただ、魔物は総じて動物とは一線を画す程に強い力を持っているらしい。

 ・勿論魔族もいる。一般的に、人に似た姿をしながらも常軌を逸する力を持った者や、魔王側に与する者を指すとの事。前者は魔人と呼ばれる場合も。

 ・ちなみに、人型であり力を持っていても人の味方をする種族は「亜人」と呼ばれる。

 獣人やエルフとかはこの部類だそうだ。

 ファンタジーでお決まりの種族やらなんやらはこんくらい。


 そういえば、こんな話も出た。というよりも前から常々疑問に思っていた事を聞いただけだが。

 「それ、何でただの人間が基準で考えられているんだ?人間が食物連鎖の頂点って訳でもあるまいし」

 「良い質問ですね。ですが、それは簡単な話です。単純に人間の数が多いのですよ」

 知恵ある生き物の中で人間が一番数が多く、結果的に人間を基準で考えるようになったらしい。成程。こちらで言う所の何かと比較対象にされる某ドームのようなものだろうか。


 「さて、大分時間も頃合い。この辺りで今日の座学は終了といたしましょう」

 俺の叡智で纏めればものの数分で確認が終わりそうな内容だが、その実大量の時間をかけて無駄話や休憩等を挟みつつ進行されていた為、太陽が既に大きく傾いていた。具体的には半日程の時間が経過済み。

 ゲームの知識を入れ込むみたいに聞くことは聞けたが、どうも疲れた。それにこの男、なかなかどうして自信家というか自己顕示が強いというか。時折入る自慢が絶妙にウザイ。

 「ん?今日"の"?」

 頭に引っかかった言葉を半ば無意識にリピート。

 「ええ。本日より勇者様方の教育指導の任を受けまして。どうぞ宜しくお願いします」

 と、実に爽やかな笑顔でテレンス騎士団団長殿はそう言った。


 ふと横を見れば、隣には勇者だった虚ろな目をした死体が一つ。犠牲は大きかった、南無。

 


 そんな、色んな意味で前途多難を覚悟させられた1日目の話。




 この日聞いた話を、俺は半分も信じていなかった。


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