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呼勇至魔記  作者: SaicA
12/18

14日目、曇り

 キンキンキン、と剣戟の音が響き渡る。

 しかしその音の元凶たる剣に、刃物としての役割を全うする為の刃は無く、鈍い音を奏でる打楽器と化していた。

 いや、正確には、この刃無き剣であろうと人一人くらいを殺める事は可能だろう。何故なら俺の知る史実に於て、剣は鈍器としても使われていたのだから。

 質量を用いて叩き折る。先端部分を利用した急所への突き。遣り様は幾らでもあるのだ。

 勿論、振るった剣が相手に当たれば。の話だが。


 「クソッ、いい加減一回くらい食らってもいいだろ……!」

 「御冗談を。刃が無いとはいえ、その目にも留まらぬ速度で当たれば無事では済まないので」

 「目にも留まらない速度なのに何で防げるんだよ!」

 「それは私が天才だからです。おお恐ろしい」

 こんなやり取りをしながら、俺達は剣の打ち合いを続けていた。

 ……正しくは、俺の剣が全て完全に往なされた結果打ち合いになってるだけだが。


 さて、何故こうなっているかについてだが。

 いよいよ片手で練習用の剣を振るえるようになった頃。時を同じくして、俺とテレンスで模擬戦が行われるようになった。

 曰く、対人の経験値を積むため、と。その日からこうして模擬戦が日課に追加された。

 ちなみにもう一人(彼女)は見学。あまり剣を扱うのが得意ではない為、魔法の練習中だ。


 話を戻そう。

 模擬戦用に整えられた剣は練習用のそれよりも軽く、電光石火もかくやと言わんばかりの速度で振れた。

 同時に思った。これならばあの憎き金髪に一太刀入れられるだろう。と。

 しかし、相手はこの国最高戦力の騎士団長。そう簡単に俺の攻撃が届くはずもなく。

 全力で振るった剣は直線的だと見切られ、かと言って変則的な剣には力が籠められず往なされる。

 そんなトライアンドエラーの繰り返しで、とてもじゃないが当たる気がしなかった。

 加えて厄介なのが、奴はこっちが決定的な隙を出さない限り攻撃をしてこない。つまりは守りに専念してるのだ。

 これについては俺も抗議したのだが、なんやかんやで誤魔化された。納得はしてないが、話が進まない為諦めた。

 まあ、それは兎も角。それ故こちらの攻撃が一切通らない。それでなんとかならないものかと悪戦苦闘している訳だ。


 「はい、これで終わりです。今日は此処まで」

 威力を殺した変化球が容易く打ち破かれ、勢いのままに大きく態勢ごと弾かれると、無防備な俺の喉元に剣が突き付けられる。

 「チッ……これもダメかよ」

 両手を上げ、降伏の意を示す。すると剣は下ろされ自由の身へ。

 「狙いは良かったけれど、まだまだ力が入ってません。もう少し強く踏み込まれていれば、危なかったでしょうね」

 確かに、指摘通り踏み込みが浅い自覚はあった。しかしそれも次を考えての事だったのだが、今はもう終わった話。

 「では、先程の反省点を踏まえて素振りです。もっと早く、強く打てるよう頑張りましょう」

 笑顔でそう告げる団長殿。いつかこの顔を屈辱に歪ませる日は来るのだろうか。



 力の差を実感した14日目。




 『さて、今日の成果を聞こうか』


 夜も更けた頃。灯り一つ無い暗闇に満ちた部屋に二人。


 寝台に寝かせた彼女の上を位置取り、覆う形で俺は問うた。



 此れは、布石だ────

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