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神の愛し子  作者: 豊世神
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~第八章~


~第八章~

誰かの腕が私の腰に回された。真っ黒な自分の髪の後ろから、真っ白な髪が見えた。腰に回された腕がとても冷たい。

「天之御中主神……」

術を跳ね返され、尻餅をついていた先生が私の後ろに立っている人を見て呟いた。呼ばれたその人はゆっくりと先生の方を見た。

見なくても分かる。その人は、とても怒っていた。

「何故、ここに」

先生はがたがたとみっともなく震えながら問いを口にした。

「我が愛しの巫女に呼ばれたから…ではいけませんか?」

優しい声。

あぁ、この声を、私は知っている。私の一番愛おしい声。

私は目を閉じて、自らの身を後ろにいる人に預けた。その人は優しく、けれどもしっかりと受け止めてくれる。

「翡翠さんは、人間です」

先生は、やはり震えながら漸う口を開いた。私の後ろにいる人はその真っ白な瞳を細める。

「翡翠、ですか。…笑止。我が巫女の名は水幸神。その方らが力を封じ、記憶を封じ、自らを見ることを許されなかったこれまでとは違う。この者は元々我が元に、我が吾妹として送られてきた者。そして数えで五つになる前までは、我が元で、我が愛しの巫女として育ってきた。本来ならばそれを妨害し、記憶を奪うなど許されることではない」

強くはない口調。けれども、誰も逆らうことを許さない、そんな威厳があった。

そんな中でも私を優しく抱きしめてくれているその人が、私は堪らなく愛しいんだ。

そんな実感が持てた。私を想ってくれている彼に抱きしめられていることに、私は何の違和感も持たなかった。

「人を人として生きさせて何が悪い!!」

突然先生が我慢の限界だとでも言うように叫びだした。本当にみっともなく、醜く見えた。

私は思わず目をそらす。

「そなた達自身が安全に生きるために水幸神を、まだ名もないころであったこの者を私に贄として差し出した者がそのようなを口叩くか」

その言葉に先生は、下唇を噛んで黙った。

もうやめて欲しい。

それ以上私に、醜い姿を見せないで欲しい。

人が生きるために人を差し出す。

あぁそうか。

私はお母さん達にとって、都合のいい玩具でしかなかったんだ。

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