~第六章~
~第六章~
声が重なった。その事実が、私の心を保たせた。それなのに、今度は何も起きなかった。
豊世神様が自分の傍にいると言う感覚も、豊世神様のぬくもりを感じることさえなかった。
いや。
そんなのいや。
でも、いくらそう想っても何も変わらず。視界がどんどん暗くなっていくような気がしただけだった。
「翡翠さん、今日はそろそろお休みになられてはいかがですか?」
戸の外にいる看護師さんが私に話しかけてきた。
応える気も起きない。
「…翡翠さん?」
応えがないことを不安に思ったのか、私を心配してなのか、看護師さんが、私のいる病室のドアを開けた。私はそちらの方へと目を向ける。
曽於時、腰のあたりを何かが動くような感覚があった。腰だけではない、腰から上、いつもは何もないところで何かが動くような感覚があった。
「え?」
看護師さんと私の声が重なる。
看護師さんは私を見る目を大きく開いて、化け物でも見るような雰囲気をかもし出していた。
いつもは、あんなに華やかに笑いかけてくれるのに。
「看護師さん?」
私が看護師さんに近づこうとしたその瞬間。
「やめて!!」
え?
どうして?
どうしてそんなことを言うの?
驚きに目を見開いていると看護師さんはもう一度、今度は私を見ないように目を硬く瞑って叫んだ。
「化け物!!!こっちに来ないで!!!」
ばけ…も…の……?