~第四章~
~第四章~
検査入院の夜、看護師さんが夕食を運んできてくれた。面会時間はとうに過ぎていたのでお母さんはもういない。そのことに、どこか安心する自分がいた。
「ありがとうございます」
「また取りに来ますね」
お礼を言って夕食を受け取った私に、看護師さんは笑顔で返事をしてくれた。
カラカラと外から車輪の音がする。他の看護師さんが入院している人達に夕食を運んでいる音だ。その音が、静か過ぎて妙に怖い。
「失礼します」
そう言って看護師さんが私のいる病室を出て行った。
私は、個室だった。
検査入院なのだ。どこかが悪いわけでもない。他人と接触しても、何の問題もない。私が個室に入る意味は何なのだろうか。
「そう言えば私、ずっと一人だったなぁ」
友達がいないわけではない。ただ、何か物足りないような、寂しいような。そんな感じがいつもして、一人のように感じてしまうだけだ。
「豊世神様………」
会いたい。
どうして?
分からない。
懐かしい。
愛おしい。
「私は…一体、何なの?」
何のために彼を求めるの?
あの人がどこにいるかも分からないのに。
「水幸神……。それが、私の名前なの?」
でも私には五歳までの記憶がある。普通皆ないって言っているけど、それは私の記憶力とか、そういうのの問題じゃないの?それとも本当に、私はあそこにいたの?
「………馬鹿馬鹿しい。そんなことあるはずがないじゃない」
私は普通の家庭に生まれた、少し体が弱いだけの娘なんだから。
ならば何故?
「え?」
何故お前はそんなにも泣いているの?
「泣い…てる?」
帰っておいで。
「どこに?」
私のところに。
「貴方は誰?」
…分かって、いるでしょう?
『水幸神』
「豊…世神、様?」
ほら言いなさい。貴方の帰る場所の名を。
「たか…まがは――――」
「翡翠さん!!」
名を、呼ばれた。
偽者の名を。