4話
この学校は、レベルによってカリキュラムが3つに分けられる。その中でも、レベル4以上の高スペック保持者が学ぶA、Bクラスは「特進クラス」と呼ばれ、将来を約束されたエリート様達の集まりだ。そして、俺ら底辺のFクラスは、《レベル1》が学ぶクラス。はっきりいって落ちこぼれの集団だ。そもそもレベル制度というものが社会に浸透化した5年前。この世界に、レベルよる新たな格差問題が生まれた。
レベル――《スペック》と呼ばれる脳の情報処理能力を現した数値は、旧来のPCで言う、CPUに当たるものの数値だ。そしてそれは、今の社会の絶対的価値であり、人間の存在価値そのものになりつつある。
レベルは1~6に分けられ、レベル6にもなれば、スーパーコンピューターをも凌駕する演算を可能にすると言われている。まさに生きた次世代コンピュータ。優遇されるのは当然……か。
難しい顔をしたままクラスに入り、席に着く。そのとき不意に誰かが俺の肩を叩いた。
「おっはよーナオ。あ、それと祥平も」
「オマケみたいに言うな!!」
キーキーと喚く祥平に、声の主、水瀬瑞樹は、「うっさい」と一喝。これはいつもやり取り。見慣れた光景だ。
俺は声の主に手を振り上げ、答える。
「おはよう、水瀬。」
「ん?どうしたの~?辛気くっさい顔しちゃって~ほら、シャキッとしなさぁい!!」
水瀬は尚也の背中をバシリと叩くと、にっと歯を見せて笑う。そんな彼女に苦笑いを浮かべていると、ドタバタと音を立てて、誰かが教室のドアを開けた。
「瑞希ぃ~早いよ~」
膝に手を付いて、息を切らしながら教室に入ってきたのは、西野舞香。内気な性格ながら、誰にでも優しい彼女は、《Fクラスの女神》などと呼ばれ、男子達に崇められている。しかし、鈍感で天然の彼女が、それに全く気付くことはない。
「おはよう、ナオくん。」
舞香はこの騒がしい集団の輪に入ると、俺に眩しい程の笑顔を向ける。正直、「これは男子が誤解すのも仕方ない」、と一瞬思ってしまった。
「おはよう西野。大変だったみたいだね」
西野に軽く挨拶を返し、彼女の頭の上に乗った落ち葉を指さす。西野は疑問符を浮かべながら、頭の上に手を置くと、自分の頭に乗った落ち葉に気付き、顔を赤くしながら落ち葉を取り払った。




