3話
――でも、今思うと、この時には既に始まっていたのだ。
狂ってしまったこの世界で、生き残りを掛けた、デスゲームが……。
「おい、おいって。聞いてるかぁ~尚也?」
視界に祥平の顔が入り込み、俺はふっと我に返る。
「どうしたんだよ、尚也。ボーとしてるなんて珍しい。何かあったのか?」
正也は目の前のARウィンドウを弄りながら、相変わらずの揺らぎのない無表情でそう言った。
「なんでも、ないよ……」
「ふーん」
正也はそれだけ言って、深く追求してはこなかった。でも、正也も薄々は気付いていたのであろう。寧ろ突っ込んだ質問をしてこないのは、こいつなりの配慮なのかもしれない。正也は昔から、そういう面では少し大人で、空気が読める奴だった。今はそれに凄く救われる。俺も正平くらい気楽になれたら……。
「ふ~んふ~んふ~~ん♪」
鼻歌交じりに隣を歩くもう一人の親友を見て、一度ため息。
大通りに出て、信号を待つ。目の前を巨大な緑色が通過する。
「うっへ~。戦車だ、戦車。戦争でも始めるつもりかよ」
走り去っていく重量級の車体を指さしながら、祥平は子供の様に燥ぐ。
でも確かに、どうしてこんな所を戦車が……それによく見ると、街の至る所に自衛官が立っている。そしてその手には、物騒な小銃が握られていた。
……胸騒ぎがする。
しかしそんな俺の心情とは裏腹に、次々と目の前を通過する戦車に目を輝かせる祥平を見て、ほっと胸を撫で下ろした。
……気のせい、だよな。
今日はやけに、街を清掃するロボットの数が多かった――。
――キーンコーンカーンコーン
聞き慣れた鐘の音が鳴り響く。
優秀な留学生も多く通うここ、『BRAIN・SPEC・ACADEMY』。通称、「BSA」。小学校~大学まで、エスカレーター式の特殊なカリキュラムを敷いたマンモス校。そして、俺達の通う学校でもある。
三人は、他愛もない話をしながら校門を抜け、昇降口に入る。特進クラスの正也と別れ、同じクラスの尚也と祥平は、自分達の教室《2‐F》へと向かった。




