2話
――一週間前。
それはいつも通りの月曜日。五月蠅く鳴り響くアラームで、俺は目を覚ます。眠い目を擦ながら階段を降り、寝癖で跳ねた髪を抑えながら、玄関扉を開ける。そして、小さなポストの中身を確認した。
――あった……。
何もない日常、平凡な俺に見合った、特に特徴のない高校生活。でも、それだけで満足だった。しかしあの日から、俺の日常は少しずつ狂い始めていた。
――《BRAINアーツ》数年前から政府が始めた、今の日本の根幹を担うシステム。それは、特殊細胞、通称「BRAINアーツ」により、人間の脳を極限まで活性化させ、機械を超える演算を可能にさせた。
しかし、このシステムには、大きな《欠陥》があった……。
俺はため息を吐きをつくと、ポストから取り出した一枚の紙を握り潰す。気ダルさを振り払って階段を上がり、奥の部屋を開ける。そして、部屋のカーテンを勢い良く開けた。
「美奈。起きろ、朝だぞ」
朝が苦手な妹、神童美奈。俺と同じレベル1でありながら、友達も多く、活発な、自慢の妹だ。美奈は、「うぅ~。眩しい……」と唸りながら、渋々といった様子で起き上がる。
「おはよう……。おにいちゃん。」
「おはよう。母さん達、もう下で待ってるよ」
眠そうな美奈を引きずるようにして階段を降り、リビングのドアを開ける。そには、電子新聞を読みながら、味噌汁をすする父と、俺と美奈の朝食をテーブルに並べる母の姿があった。二人は両親に「おはよう」を言うと、各々の席に座る。他愛ない会話をしながら朝食を食べ終え、鞄を取りに自室へと戻る。そして、机の上に無造作に置かれたしわくちゃの紙切れに目を向ける。そこには、僕を絶望させる言葉が、太く、ハッキリと書かれていた。
「あなたのスペックはレベル1です、か……」
項垂れるようにベッドに倒れ込み、枕に顔を伏せたまま思い返す。正直、今回の結果には少し期待をしていた。勉強も運動も普段の倍こなし、人生で始めての努力をした。実際、これをやってレベルを上げた人間は数多くいる。……だけど、俺は上げることが出来なかった。
つまり――負け組。
「努力が足りなかった……のか」
ガクリと肩を落とすと、よしと自分に活を入れて起き上がる。
――ピーンポーン……。
不意に家のインターホンが鳴り響く。俺は窓に駆け寄り、外を見る。そこには、友人の祥平と正也がいて、こちらに気が付くや、笑顔で手を振ってくる。それに手を振り返し、俺は早々と準備を整えると、部屋を飛び出した。




