11話
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「くっそ……あいつのプログラミング技術を忘れてたぜ」
正也は祥平のものと思われる死体を蹴りつけ、地団駄を踏む。
――しかし、何度見てもこれが人間だとは思えない。
――カツン……カツ……
誰かがこちらに歩いてくる音が聞こえ、正也はバッと背後を振り向く。
「……濁った目。ヘドが出そう」
――綾美瑠衣。
彼女は正也を冷めた目で見据え、静かにそう吐き捨てた。
「お前……なんで、人の姿で見える?……まぁ、関係ないか……死ねよ」
正也は銃を向ける。しかし、そこに瑠衣の姿はない。死角から手が伸びる。懐に入り込んでいた瑠衣の一撃が、正也の顎下を貫く。倒れた拍子に手から零れ落ちた拳銃に触れると、全く同じ型の拳銃が、綾美の右手に握られる。そして瑠衣は、銃口を座り込んだ正也の額に突き付けた……。
――パン……。
乾いた銃声と共に、ばたりと正也の体が後ろに倒れる。
「……クリア」
小さく呟き、手に持った弾倉0のリボルバーを投げ捨てる。そしてそれは、ポリゴンの結晶体となり、粉々に砕けた。瑠衣は、ゆっくりと目を閉じる。脳内で高速で演算を繰り返す。そして、尚也の居場所を割り当てた。
「見つけた……神童尚也。いえ…………ナオ」
ARの壁に手を触れ、そのまま壁をすり抜ける。そして、尚也がいるであろう方向を見据えると、駆け出した。
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