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UTOPIA〜ユートピア〜  作者: トミー
ヒキニートファンタジー
5/5

ヒキニートファンタジー エピローグ

「さて、着いた」


「着いたって……、何する気だよ?」


ツララとヨモギに連れられるまま、やって来た場所はマイが捕らえられている銀行の裏側であった。

そこは

不気味な機械音が鳴り響き、生ぬるい空気が肌を撫でるたびに身震いする。


はっきり言って怖い。




「まずは、作戦のための下ごしらえだね、真っ向からぶつかっても蜂の巣にされるだけだし」


ツララはなにやら壁に張り付いている機械をゴソゴソといじりながら、話を始める。


「とりあえず、銀行の中で動き回るのはなんとかなるだろうけど、結局人質を助けるためにも犯人のいる場所も動けるようじゃないと」


「どうすんだよ、あいつらを一瞬で倒す手段とかあんのか?」


「ない」


多少期待の念を持ちつつ、ツララに問いかけたのだが、やはり無策なのか。


「あー、そんなに心配しなくても大丈夫、この作戦はヨモギの技量にかかってるから!!」


「任せとけ」


「いや、無理だ」


やはりこいつらを信用したのは間違いだった。


悪いのはこいつらじゃない.


結局はおれの事情なのだ。


他人の手を借りようなんてのは甘すぎた。


おれが、おれ一人でやらなくちゃ…。




「よし、下ごしらえ終了!!いつでもいけるよ!!ってあれ?シンジ君どこにいくの?」


無言で立ち去ろうとするおれの姿をみて、引き止めたツララは笑いながらこう言った。



「だーいじょうぶだって!!君の妹さんが君の言う通りの子なら必ずうまくいくから!!」


「……この作戦はおまえの妹も必要だからな」



「おれの妹を利用するってことか?妹を助けるために?いったいどうやって……」























「一体なにが!?」


マイは突然の暗闇に頭が混乱していた。


マイだけではない、


強盗や他の人質の人たちも同じように困惑していた。


「停電?にしてはタイミングが良すぎる…、誰かが故意に?」


さすが俺の妹、一瞬にして答えにたどり着いた。


普段はマイのことを毛嫌いしているが、内心こいつの実力を俺は認めている。


恥ずかしいから目の前では言わんが。





それより、第一次作戦は成功、


ツララの実力もすごいものだ。


さっき、機械をごそごそといじっていたのは、このためだったとは。



そして第二次作戦、


俺はすかさず走りだし、人質の中に紛れてマイの後ろに座った。


そしてマイの腕を縛っている縄をほどき出す。


「え、お兄ちゃん!?なんでここに」


「あ、あとでわけは説明する!!今はとにかく…」



しかしここで運悪く、強盗の一人が俺の存在に気づいた。


「おい!!あい…」



その瞬間、

強盗の声は言葉は途切れて、


そのかわり、ゴフッと腹の中から何かを外へ吐き出すような声が聞こえた。


男はそのまま地面にめり込むように倒れて、気絶した。


「おい、どうしたんだ!!」


他の強盗が動き出すが、まだ目が慣れていないようであたふたとしていた。


そしてまた一人、殴られる鈍い音が鳴った途端に倒れていった。


「す、すごい」


マリは感嘆の声を漏らす。


「おまえには見えるのか、マイ」


「う、うん、まだぼんやりだけど、あの暗闇の中、寸分違わず急所を撃ち抜いて気絶させてる…どういう目をしてるの」


俺には全く見えていないのだが、


マイの説明と目の前でみた状況を見ると、


ヨモギは相当な腕の持ち主だったらしい。


「くそっ!!誰だかしらねぇがそれ以上暴れるなら撃つぞ!!」


そういって強盗は、人質のほうへ銃を向ける。


目がかすかながら慣れてきているようだった。




「ヨモギ…」


ガスっと地面を蹴る音、それと同時に俺の視界に人影が飛び込んできた。


それは紛れもなくヨモギだが、


俺が見えているということはすでに……。


「ヨモギ!!避けろ!!」



その声は届かなかったのか、



案の定、強盗はニヤリと笑い、ヨモギに銃を突き出した。



ヨモギは動きを止める様子もない。


そして強盗は迷いなく引き金を引いた。




「!!!!?」




火薬の爆発音、銃の硝煙が俺の視界を曇らせた。





そこに、ヨモギは……。




「よ、避けただと!?この距離で…」


平然と立っていた。



無表情のヨモギと違って強盗は混乱し、再び銃を向ける。


だが、ニ発目は第三者によって阻止された。


「やぁぁぁぁぁ!!」


マイの大声と同時に、強盗は抱えられ、そのままジャーマンをくらい気絶した。



にしても和服でジャーマンは流石に……。



というか、マイが必要ってこういうことだったのか、


目が慣れた強盗にヨモギ一人では対処できない。


それならヨモギ以外の、マイに任せればいいということ。


結果的に、


強盗はヨモギに釣られて、マイの存在に気づかなかった。


そこまで考えた作戦だったとは、


「ふぅー、終わったね」


「あぁ、終わった、ツララ、シャッターを全部開けろ」


『イエッサー』


今だに興奮冷めきれない俺を置いて、二人は人質の縄を解きにいった。


あれだけ命がけの勝負に挑んでおいて、よく動けるなと素直に感心する。
















あれから少し経ったあと、


外は警察やマスコミで賑わっており、通りに出るのにも大変だった。


でも最も厄介だったのは、もちろん警察に誰が強盗を捕まえたのかを聞かれた時だった。


警察としては、その立場上知らないといけないようで、うまくかいくぐりながら誤魔化した。




にしても、今日は散々だ。



入学式だの銀行強盗だの、


普通ではない俺にはとても応えるメニューだった。


といっても銀行強盗のときはほとんどなにもしてない。



結局、俺はその程度なのだ。


誰にも必要とされず、何もできない。


でもそれでいい、



いつもの日常に戻れれば、また何もしなくていい毎日がやってくる。




それだけあれば、俺は満足だ。





だが、数日経ったある日のこと俺はなぜかヨモギたちの部室にいるのだった。



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