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プロローグ
最後に外に出たのはいつだっただろうか、
息を大きく吸い込み、背伸びをする。
久しぶりに着た新しい制服、
伸びた髪を結んで、ヘッドホンとアイマスクを装備、
髪はボサボサだが、まぁいい。
「いってきます」
二年ぶりにその言葉を口に出し、
玄関のドアノブに手を掛ける。
いろいろな匂いが鼻を刺激し、日の光が目に差し込む。
そして何より、
「あったかいな…」
季節は春、あったかいのは知っていたが、
実際に肌で感じると懐かしさを覚える。
ゴミ出しに出ている主婦の方々や小学生、中学生が登校している。
いつの間にか家の数は増えていたようで、道路は工事されて綺麗になっていたり、信号機がそこら中に設置されていた。
「随分都会チックになったな…」
ヘッドホンを耳にあてて、音楽を流す。
外界の情報はほとんどシャットアウトされ、
自分だけの世界が広がっていくのを感じた。
あれから2年、
引きこもりの青年「王明 シンジ」は再び自分の人生を歩み出した。
しかしシンジは知らない。
これから起こる不可思議で残酷なストーリーが始まることを…。