はじまりのつづき
◇あれは昔でいまはここ
なにかを食べている人影、においはしない。頭の整理が追いついていないボクは
その人影に声を掛けてしまう。
くるりとこちらに向く人影、なんとなしに(女の子だ)そう思った。
口の周りを 色で汚した女の子。ボクに近づいてくる。
「……たベ rう?」そういって彼女が差し出したものは
○○○
「すみませーんっ誰か居ませんかー!」
「だれか いませんかー」
家の中を探索して三十分…ボクたちの呼び掛けに返ってくる言葉はなかった。
人気も人影もなくて人の温かみの無い家……けれど、
埃がなく、家具や食器があり、その他生活するのに必要な道具がある家。
家があるのに人が居ない、何か引っかかるものが脳裏を掠めなぞっていく、
うーんうーんと悩んでいるとボクの頭にあったかい何かがのっかる。手だ。
「アタマ いたい?だいじょぶ?」彼女が椅子のってボクの頭をなでている。
どうやら心配させちゃったみたいだ。これはいけない。
「ん、大丈夫だよ。ありがとう」お返しにボクも彼女の頭を撫でる。
気持ちよさそうな彼女にボクは予定を説明する。
「今日はここに泊まることにします。掃除や片付けがいらないようだし、なにより玄関の鍵をかければ安全みたいだからね。」
「おとまりっ ……かぎかけると あんぜん?」ぱたぱたと腕をふりながら問われる
「この家はたぶん”無人家”だと思うから、最初に入った人が鍵をかけちゃえば他の人から守ってくれるはず。」
「むじんかー?」
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【無人家】:たてもの わすれもの? 家に人がい無い
『この家は誰が住んでいたか、誰が住むのか、そういうのはなく最初から人がい無い家です。』
『けれど埃がつもることがなく、食べ物があり蛇口をひねれば水が出るのです、じゃばー。』
『ごはんをたべておふろにはいってべっどでねむれる、そんなところ。いいよねー。』
『ただし、ここは寄り道あなたの家ではありません。きちんと意識を持たないと』
『家に無いことにされるかもしれないので、お帰りはお早めに。三日くらいがいいかもね。』
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あの人の教えてもらったことを思い出す。絵描きじゃなくて物書きじゃないのかなぁあの人。
「えーと…」なんてまとめよう彼女に分かりやすく伝えるには…
「今日と明日は」
「きょーと あしたは?」
「ごはん食べ放題?」がばっ、ボクの目の前が見えず重さがかかる。
「ごはんっごはんっ!ごはんっ!」彼女が抱きついてきたらし……っ、わった、たおれるっ!
倒れる寸前、床を擦る音が聞こえ、硬い衝撃を背中に受けると思ったボクは
柔らかい感触に包まれて気を失った。