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昨日、変わった人に私は出会った。
あまりにも風変わりな人だったので、私は反射的に、その人の姿をスマホのカメラて撮っていた。
ーーじっくりと私はスマホのカメラロールから、その人の写真を探して見つめる。
その人はまず、服装がだいぶ変わっていた。
何と説明したらいいのか、ちょっとわからないくらい。
まず、その人の服は全体的にのっぺりとした印象だった。
色合いはとても地味なのだ、よく言えば落ち着いているとも言える。
トップスの色はグレーで、ボトムスはネイビーだった。靴の色は黒。
そして、目立つ柄は一切無かった。
けれど、私が本当に特徴的だと思ったのは、その服の形だった。
全体的にその服は、身体に沿うようにぴったりとしている。
グレーのトップスは長袖だった。そして襟がフードになっていて、フードには紐が付いている。他に装飾的なものは見当たらない。
もっと変わっているのはボトムスだった。ボトムスは足に沿うように二股に分かれ、その人の脚のかたちをあらわにしていた。そして、装飾的なものは見当たらない。
私はそのような服を、それまで見かけたことがなかった。
私が日常的に着ているのは、着物や浴衣やワンピースだった。家族や友達、街の人々もだいたい同じように、着物か浴衣かワンピースだった。
着物や浴衣は華やかな色で、柄があるのが普通だった。帯や小物を含めて、柄でそのひとが何を大事にしているのか、センスはそうなのか、大体の年齢や価値観などを推測できた。
ワンピースやスカートにも、大体柄がある。いちばん人気があるのは花柄で、ありとあらゆる種類の花がワンピースやスカートを彩っていた。
小物にもセンスが出る、バッグの形、色、材質。靴は大抵パンプスか、ストラップシューズか、バレエシューズだった。靴の色は落ち着いた色が多い。
雨の日や日差しの強い日は傘も重要だった。特に夏は誰もが日焼けを防ぐために日傘を持ち歩く。
髪はだいたいまとめて結っている人が多い。編み込んだり、ハーフアップにしたり、巻いてみたりする人もいる。髪飾りやリボンも重要だった。
ーーここまで考えて、私は再びあのひとに違和感を抱く。
写真を改めて見直してみる。
そのひとの髪は、とても奇妙だった。かなり短いのだ。
頭のかたちが、はっきりとわかるくらい短い。
ーーそのような短い髪のひとも、まず見かけることはなかった。
髪は長いのが普通だった。
なぜそのひとは、そのような短い髪と、身体にぴったりと沿った装飾のほとんど無い服を着ているのだろうか?
ーー明らかに街で見たら、奇妙な感じがするのに、わざわざ?
目的がわからない、見当もつかなかった。
けれど、私の心は、なぜか強烈にその人に惹かれていた。
なぜなのかはわからない。
ーー多分、そのひとの変わった服装や髪型に興味を持っているだけだわ。
その時の私は、そう思っていた。