表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/17

歓迎会前日

「今日は合同練習をする」

 

 筋肉質な先生が俺たちを見つめながら言う。

 

「1組と2組で競い合ってもらう」

 

 俺たち1組は2組との合同で練習をしている。

 ちなみに今からバレーをしリレーをする。という順番だ。

 

「それじゃあ、準備開始」

 

 筋肉質な先生がそう言い、準備を始めていく。

 拓哉は体育館の端に腰を下ろす。

 

 その隣に成瀬も腰を下ろす。

 

「バレー勝てるかな?」

 

 成瀬はいつもの声で言う。

 

「早百合が強いから勝てるよ」

 

「へー。なんで知ってるの?」

 

「いや、聞いたから」

 

「そうなんだ。てか、最近仲が良いよな?」

 

「まぁ」


「羨ましいな」

 

 成瀬は笑いながら言う。

 

「俺はお前のイケメンな顔が羨ましいけどな」

 

「って、もしかして、狙ってるのか?」

 

「んなわけ」

 

「おい。そこは、そうだよ、だろ」

 

 成瀬は笑う。そんな成瀬を見て拓哉も笑う。

 久しぶりに話した親友はちゃんと親友だな。

 そして、試合開始の合図が体育館に鳴り響く。


 圧勝で俺たち1組の勝利だった。

 バレーを終えたメンバーは近くの壁に腰を下ろす。

 圧倒的に差があった。その差は早百合によって生まれていた。

 早百合の長所を完全に活かしていた。早百合の身長は周りに比べて高く、それが完全に早百合を優位にさせていた。

 

 凄いな。

 

 早百合の言ってた通りだ。完全に早百合の力で勝っている部分もあった。

 

「早百合上手いな」

 

 成瀬は足首の体操をしながら言う。

 

「そうだな。俺らも頑張るか」

 

「もちのロン」

 

 成瀬はそう言い、体育館の真ん中に向かって走る。

 俺もそれを追うように走る。

 

 そして、リレーメンバーが真ん中に集結する。

 

「これより、練習試合をする」

 

 筋肉質な先生が言い。俺らは位置に着く。

 ちなみに、俺がアンカーだ。

 

 昨日の練習によって俺がアンカーになったのだが、不安でしかない。

 それに、昨日は加奈からの相談もあって練習があんまりできていない。

 だが、言い訳はできないし、するつもりもない。

 

 練習だからって手を抜くつもりはないし。

 勝ちにこだわる。

 ピーと笛の音が鳴る。それにより、一人目が走り出す。

 俺は体操をしながら、目で追う。

 

 やや、俺たちが勝っているがすぐに抜かれそうである。

 練習でもあるのにも構わず大きな声援が飛び交う。

 体育館は熱狂に包まれる。誰もが走っている人に注目をする。ある人は息を呑む。ある人は好きな人の走っている姿を目に焼き付ける。ある人は興味がなさそうな顔をする。


 ある人は緊張で死にそうになっている。

 

 やべー。緊張だ。

 てか、俺がアンカー? いやいや、絶対に無理だって。そもそも、バスケって短距離だし。

 もちろんアンカーは一周走ることになっている。そのため短距離でない。

 拓哉が緊張していく中でリレーは終盤に向って行く。

 

 「ふう」

 

 深いため息を吐く。

 目の前に居る成瀬がバトンを貰い走る。綺麗なフォームに目をやられてしまう。

 そして、俺は成瀬が居た所に立つ。

 

「俺ならいける」


 小さく呟き自分に言い聞かせる。

 その時、走り終わった加奈が拓哉に声をかける。

 

「拓哉ならいけるよ」

 

 周りに居る人は誰も気付いていなかった。誰もがリレーの行く先に目が離せなかった。だが、加奈は落ち着いてメンバーのことを気にしていた。

 

「任せろ」

 

 拓哉は覚悟を決める。

 俺ならいける。

 反対側でバトンが渡る。

 その人は勢いよく走る。だがそんなことお構いなしに2組は距離を離していく。


 やがて、2組のアンカーにバトンが渡る。

 遅れて1組のアンカー拓哉にバトンが渡る。

 拓哉は勢いよく走る。絶対に負けない。最後まで諦めない。誰が見ても拓哉は輝いていた。差が縮まっていく。

 

「拓哉行けー」

 

 声援が上がる。

 声援が拓哉の背中を押す。

 拓哉は2組のアンカーに並ぶ。

 両者譲らない。誰が勝ってもおかしくない。どちらかが負ける。当たり前のことなのに、誰もがどっちとも勝つと思わすほどだった。

 白熱する。

 

 声援は天を貫く。

 

「負けるな」

 

 いろいろな声援が聞こえてくる。

 本当にどっちが勝ってもおかしくなかった。だが、ゴールを目の前にしたとき。

 

 行ける。勝てる。

 

 心臓の鼓動は落ち着かない。

 目の前にゴールが待っている。

 2組のアンカーは最後の力を振り絞り、勢いをつける。

 それを、追うように拓哉も力を振り絞ろうとしたとき、どん、とでかい音が体育館に鳴り響く。

 拓哉は頭からコケる。

 

 なんとか手でカバーできているが、誰からも見ても痛そうであった。

 あ、あれ。

 足に力が入らない。

 ゴールは目の前なのに。

 

「拓哉」

 

 成瀬が叫ぶ。

 頭を打ったせいか視界がぼやける。

 あ、あれ。

 

 拓哉はそのまま倒れる。

 

「拓哉……」

 

 早百合の声は蝉の鳴き声によってかき消される。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ