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早百合の芽生え始める思い

翌日。

 いつものように俺は早く学校に着いていた。自分の席に着き一息吐く。


 昨日は疲れた。


 あの後、連絡先を交換したのだが、その後が大変だった。


 合格祝いと言われ続け、何かと夜遅くまで遊んでしまった。近くのゲーセンで遊んだり、近くのカフェに寄ったりなど、久々に遊んだ。

しかし、一番多変だったのは昨日、俺はお金を一銭も使っていないということだ。


 昨日は凜先輩が全額出してくれた。

 俺は大丈夫と何回も言ったのだが、凜先輩は合格祝いだと何度も言い譲ろうとしなかった。

 楽しかったが、少しもやもやする気持ちもある。


 今日ジュース買って渡すか。


 すると、前方のドアの方から早百合が教室に入ってくる。早百合は慌てた様子で周りを見渡す。


 早百合は拓哉の隣に座り深い深呼吸をする。そして、呟いた。


「凛先輩と付き合ってるの!?」


 早百合は拓哉を見つめながら言う。早百合の一言に拓哉は椅子を引き立ち上がる。


 な……何を言ってるんだ!!?


 つ……付き合ってる? 俺なんかが凛先輩と?


「いやいや! 俺なんかが無理でしょ」


 拓哉は早百合を見つめながら言う。その様子を見て早百合は安心したかのように口を緩ました。


「なんだ……てっきり鼻の下を伸ばして、幸せそうにしているかと思ってたわ」


 おい、なんで俺が幸せになることが許されないみたいに言っているんだよ。


 拓哉は椅子を元に戻し腰を下ろす。


「てか、その話どこからなんだ?」


「昨日生徒たちが入っているグループトークに流れてたわ」


「なんだそれ?」


「由比ヶ浜高校の生徒だけが入れるグループトークね」


「そんなのあるんだ……」


 もちろんの話だけど俺は入っていない。


「ええ。それに誰かが書き込んでいたわ。だから本当か気になったのよ」


「なるほど」


「これから大変なことになるわよ」


 早百合はそっと呟いた。

 これから大変なことになる? いやいや、なるか? そもそも、生徒なら誰でも書ける場所で書かれたとしても意味をなさないだろう。だから、大変な――


「拓哉って居る?」


 前方のドアの前には男子が立っていた。

 なるほど、大変なことになるな。




 今日一日中、何度も同じ質問をされ、疲れてしまった拓哉は放課後の教室でゆったりしていた。


「ほらね、大変なことになるって言ったでしょ?」


 横に座っている早百合が言う。


「ああ。大変だ」


 拓哉は背もたれに背中を預ける。

 疲れた……本当に疲れた。今日だけで何度同じ質問されたか。


「凛先輩と付き合ってるの?」「凛先輩と付き合っているんですか?」「凛先輩と付き合えるなんて……」「凛先輩とはどこで知り合ったの?」「凛先輩ってやっぱり優しい?」「凛先輩を返せ!!」


 などのことを今日だけで何度も言われた。怒っている人も居や、喜んで祝福している人も居た。


 俺がこんなに言われるってことは、凛先輩はもっと大変だろうな。


「ねぇ、拓哉」


「なんだ?」


「そもそも、昨日何があったの?」


「ああ。昨日――」


 俺は昨日起きた出来事についてきっちりと話した。


「なるほどね……」


 早百合は頷きながら相槌をする。

 そして、早百合は何か閃いたような顔を浮かべる。


「そうだ――」


 その時、前方のドアの前に人影が現れる。

 早百合が何かを言おうとした時、その人も声を上げる。


「拓哉居るかー」


 声の主は凛であった。凛は鞄を背負ったまま教室を覗く。


 凛は拓哉と目が合う。一方早百合は落ち込んでいた。


「えーと。拓哉今から時間あるか?」


 凛先輩は俺を見つめながら言う。その声は透き通っていてすぐに耳に届く。包み込むような声でもあり、名前を呼んでいるだけなのに特別感があるような感じであった。


「は……はい。あります」


「ならよかった。生徒会室に来てくれ」


 そう言い凛は拓哉たちに背中を向け生徒会室に向かって歩く。


 拓哉はそれを追うように机の横に掛けてある鞄持つ。


「早百合?」


 俺は早百合の方に視線を向ける。早百合は机の中に手を入れたまま、下を向いていた。


「拓哉。明日は部活に来なさいよ?」


 早百合はそう言いながら顔を上げ、笑みを浮かべた。その笑みは無理をしている笑みであったが拓哉は気づかなかった。いや、気付くことはできなかった。今までと同じ笑みであったから。悩みなんて少なくなっていると思っていだからだ。だが、違った。


「ああ。明日な早百合」


 そう言い、俺は教室を出た。



 早百合視点。

 何故か分からない。何故私はさっき偽りの笑みを浮かべてしまったのだろう。拓哉にだけはありのままで居ると約束したのに。

 どうして何だろう。

 早百合は机の中に手を飛ばす。机の中には2枚のチケットがあった。

 早百合は机の中からチケットを取り出す。

 そのチケットは、遊園地のチケットである。


「きっと、このチケットのせいだ……」


 早百合の声は誰も届くことはなかった。

 

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