イチゴとパフェとおにぎり君
みんなに問いたいのだが、このように平等はあると思うか? 俺はないと思っている。何故かって? それはスクールカーストがあるからだ。
スクールカーストは平等とは程遠い存在だ。
例えば勉強ができたとしても、モテはしないし、人気になる訳ではない。だが、勉強ができなくても容姿端麗であれば人気者になれる。これは、果たして平等と言えるのだろうか。
無論、平等ではない。
こんなひねくれた考えをするのは、真治拓哉。
俺は自分の席に座りながら、人だかりができている場所を眺める。
人気だな……
拓哉はそれを観ながらため息を漏らす。
「やっぱり、早百合って人気者だな」
拓哉のため息を無視しながら言うのは――早川成瀬。
成瀬はイケメンである。短い髪が人気の象徴でもあるように、その髪型はともて整っている。
「お前が言うなよ」
俺は成瀬を見つめながら言う。
「もしかして、俺のことが好きなのか?」
この言葉を聞いて思うように、コイツがモテているのに誰とも付き合っていないのは、性格に難があるからだ。
「うん。俺お前のことが好きなんだ」
俺は冗談を言う。
だが、当の本人は。
「……」
「おい、無言はないだろ」
「ごめんなさい」
成瀬のボケに笑ってしまう。
こんな風に成瀬とは友達である。中学からの付き合いでもある。
「それにしても、早百合ってやっぱり人気もだな」
成瀬は人だかりができて場所を見つめる。
「そうだな」
俺たちが人気者だと言っているのは――斎藤早百合。
クラスからは天使だと言われている。また、学校で一番美人だとかも言われている。
それに比べて俺は、勉強ができるのだが、容姿に関しては、まぁ――なしで。
俺から見ても、早百合は美人で天使だと思う。
よく物を落とした時に出てくる神様に似ている。なんとなくだけど。
まぁ、住む世界が違うな。
無事に4時間目が終わり、俺は今購買に向かっている。高校に入学して数週間が経つのだが分かったことがある。
この高校の購買は死ぬほど人気だ。
おにぎりを買おうと思えば、信じられないほど並ぶし時間が掛かる。それに、買えるのも確定ではない。
つまり、命がけである。
そんなことを思いながら長蛇の列を並ぶ。
神様が味方しなんとか、おにぎり二個購入することができた。
おにぎりを持ち、教室に向かう。
教室に向かってすぐ分かるのは、早百合の人気さだ。お昼休みとうことも相まって教室には多くの人が来ている。
数週間しか経っていないのに、なんであんなに人気なんだよ。それに比べて俺は成瀬以外の友達なんてできてないし。
世界は残酷だな。
俺がもう少しイケメンだった人気だったのかな……ってそんな訳ないか。そんなバカな考え消し俺は自分の席に座る。
おにぎりを開け、口に運ぶ。
んーーっま。なんだこれ……美味すぎだろ……
こんなに美味しいおにぎりが購買で売っていて良いのか?
ぽっぺが落ちるというか、なんていうか、とにかくうまい。
拓哉はおにぎりに夢中になっていた。そのせいで、目の前にいる人に気付いていないのだ。
え?
机に置いていたおにぎりがない。無くなってる。
それに、誰かが俺の前に立って……
「おにぎりありがとう」
そう言い早百合はおにぎりを取る。
あのー、命の次のおにぎりが天使に盗まれたんですけど。
「え?」
気が付くと俺は変な声が出ていた。そりゃでるだろ。だって、世界で一番おにぎりが取られたんだぞ?
「待って」
拓哉声をあげたときには既に遅かった。
早百合はもう自分の席に座っていた。
それから、俺は空腹と戦いながら午後を過ごした。
「明日の体育あるからな~! 忘れたどうなるか分かるな?」
先生それぎり脅迫になりますよ?
一人で思いならがら俺は鞄を持つ。
てか、まだ、こんなことを言っている学校あるんだな。
「「さよなら」」
クラスのみんなが挨拶し、とさくさと教室を出て行く。
俺も教室を出ようとしたとき、不意に声をかけられる。
「おにぎり君」
「?」
なんとなく後ろを向く。そこには、意地悪そう笑っている早百合が居た。
もしかして、俺のことなのか? いや、まさか。
いつの間にか教室は俺と早百合しかいなかった。
「近くのパフェ食べに行かないかしら?」
「えーと。俺に言ってるのかな?」
「そうよ。おにぎり君に言ってるの」
あれー。なんかイメージ像と全然違うんですけど。もっと、ふんわりとした喋り方だと思っていたんですけど。
「あのー俺は真治拓哉って言います。なのでおにぎり君ではないですよ?」
「そうなんですね……」
早百合は下を向く。
流石に失礼と思ったのか早百合は反省した顔をする。
「わかりました。拓哉さん。イチゴパフェを奢ります。なので近くのカフェに行きませんか?」
なんだろう、なんていうか。こんなに心が躍らないデートの誘いがあるのだろうか。
「わかりました」
2人の間に妙な雰囲気が流れる。2人は鞄を持ち学校を出た。
洒落た音楽が気持ちを高ぶらせる。
改めて考えると、なんで天使だと言われている早百合と一緒に来ているんだ? 誘われた時は緊張しなかったのに。
「拓哉さんイチゴパフェで良いですか?」
「は……はい」
早百合は呼び鈴を鳴らしイチゴパフェを頼む。肝心な早百合は何も頼まなかった。
「本当に今日はすみません」
早百合はカフェに着いても何度も拓哉に謝る。本当に悪かったと思うように。
「いえ、大丈夫ですよ」
「私、お腹が空いていて」
なるほど。とはならないがそれなりに理由があるなら、そこまで怒る必要がないだろう。
それに、いちごパフェが食べられるなら何もかも許せる。
「お待たせしました~」
そう言い、テーブルにイチゴパフェが置かれる。
透き通ったクリームが高級感を匂わす。
イチゴパフェを見つめていると、不意にクリームが少なくなっていることに気付く。
あれ?
早百合の方に視線を向けると……
「美味しい」
あれ?
早百合は美味しそうにイチゴパフェを食べていた。
「ご馳走様」
美味しい部分が無くなったイチゴパフェがそこにはあった。
「今日はありがとう」
そう言い、早百合は鞄を持つ。
「あのー。早百合さん?」
「奢ってもらえるなんてありがとうございます」
そう言い早百合はカフェを出る。
残った拓哉は困惑していた。
めっちゃ性格悪いやないか。
これが、裏の顔を持つ容姿端麗の斎藤早百合との出会いだった。