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55話 完成品はアーティファクト

日没後、鍛冶をしているアユミの噂を聞きつけた兵士達の一部

興味をそそられた者が見物しに集まってきた。その中には「五人衆」全員と

クルネドも含まれていた。戦闘に備えてさえいれば注意されることも無いようだ


そんな中、日没までにまたシズカが運んできた夕食を食べ終えたアユミは

鍼灸ワンピースを脱いで準備する。オグホープでの衆人環視を思い起こすが

もう慣れていて辺りも暗いので躊躇する事は無かった


「よーし…焼き入れを始めるニャ、温度は鉄の色を見て判断するケド

熱はゆっくり加えるようにして…吾輩の合図で温度を保って

しばらくそのままにするニャ」

「わかった…ゆっくりだね」


息を整え、両手を刀身に当ててヒートハンドを使う。じわじわと赤熱していく様は

遠くからでもよく見える


「ここニャ! この色を全体に行き渡らせるのニャ」

「うん…」


外側の赤と内側の白が多くも少なくもなく、バランスよく配色されているようだった


「ねぇ…これで大体何度位なのかな?」

「この色で大体750度のはずニャ」

「そっか…」


熱を加え続ける手はうかつに動かせない


「…そろそろ水に入れる準備をするニャ、水桶の奥まで一気に突っ込まないと

焼きにムラができてヒビが入るからニャ」

「…わかった」


「……今ニャ!!」

「はっ! はぁぁぁ!!」


ジュウウゥゥゥ…


見ていた兵士達の中から歓声が沸く

水が沸騰しなくなったのを確認してから水から上げる


「…どうかな?」

「…大丈夫そうだニャ、じゃ焼き戻しをするニャ

ここからは明かりが必要ニャ、ジュンヤに頼めるかニャ?」

「おう! まかせとけ! ライト!!」


ジュンヤは魔法が苦手そうに思えたが、弱めの照明魔法なら使えるようだ

鉄が赤い光を出さない程度に、まんべんなく熱を伝えていく


「よし、今ニャ!」

「ほっ! はっ!」


ピシュゥ…


「…これで良いの?」

「これが良いのニャ。さぁ砥石を水に漬けておいて…

穴開け用のたがねで目釘の穴を開けて…

それから砥石で軽く研いで、柄をつけて完成ニャ」


アユミは鍼灸ワンピースを着ながら話す


「研ぐのは軽くでいいんだ…」

「こういう長剣は遠心力で断ち切るから…よく研ぐのは短剣の時だけニャ

それよりムラなく研ぐ事を重視するのニャ」

「はーい」


薄暗い中、研ぐ音が響き渡り、見ている兵士達の期待が高まっていった

アユミは、研ぎ終わったときにそれを感じ取り、刀身を高く掲げてみる

ジュンヤのライトを反射して美しく光り、周囲からも嘆声が聞こえる

手ごたえを感じつつ、柄と目釘をつけて、完成した剣をジュンヤに差し出す


「さぁっ、ジュンヤさん」

「お、おぅ…」

「どうかしらジュンヤ…?」

「す…凄ぇ…綺麗だよ…姉貴…」


ジュンヤは、まるで姉の結婚式に同席するかのような感傷的な気持ちになっていた

それを打ち消すかのように、カラドボルグが声を上げる


「試し切りの時間ニャー!!」

「「「ウオオー!!」」」


それを合図に、ルードヴィッヒが木製の的を打ち立てた。アユミの居ない間に

カラドボルグが頼んでいたようだ。ジュンヤは的を見て固唾を呑む


「私には分かるわ…ちゃんと切れる形になってる、後はジュンヤの気持ち次第よ」

「姉貴…」


ジュンヤは両手で剣を持ち、正眼の構えを取る。両手剣の柄をそのまま使ったので

片手でも両手でも構えられる、自然に使い慣れた構えになったようだ


彼の脳裏には、かつて「怪力」を使って木を剣で切ろうとして、途中で刃が食い込んで

止まってしまった苦い思い出が蘇っていた


「ジュンヤ! 私との日々の訓練の成果を見せてみろ!」

「ルードヴィッヒ…オオッ!!」


ジュンヤは剣をゆっくり高く掲げ、袈裟切りをした


「イィーーヤッ!!」


大きな音を立てて木製の的の上半分が吹き飛んだ。切断面は荒かったものの

一刀両断された事に変わりない。周囲から拍手と歓声が沸き起こる

ジュンヤは一瞬だけ喜びを全身で表現するが、すぐに落ち着いて

ルードヴィッヒの元へ向かう


「ルードヴィッヒ! 俺の腕はまだまだだ、姉貴に相応しい使い手になって

皆を守れるようになりたい…引き続き指導を…よろしくお願いします!!」


いきなり敬語になって頭を下げたジュンヤにわずかに動じたものの、すぐまた微笑み

ルードヴィッヒは語りかける


「…いいだろう! その剣に恥じぬ剣士にしてみせよう!」

「はい!」

「ジュンヤ…お姉ちゃん嬉しいわ」

「姉貴…そうだ! アユミにも礼を…アユミ?」


アユミは出来上がりを見て安心したのか、カラドボルグを抱き枕にして寝ていた

傍にいたシズカがアユミの頭をそっと撫でている


「ニャフ…まだ銘入れが残ってるんだけどニャア…」

「それは明日でも良いでしょ…寝かせてあげましょう」

「本当に可愛い寝顔♪」

「殆ど休まず打ってたからな…ありがとな」


***


「クルネドさんも来ていたんですね」

「ノブヒロか…兵士達が集まって士気が下がる事が無いか見ていただけだ」

「そうですか…逆に、上がってるように見えますけどね」


「フフ…そうだな…今までもジュンヤは弱くはなかったが、精神的に未熟な少年だった

しかし今回の一件で一皮剥けたようだ。真の戦士というのは中々得難い

その主軸を立てたと言うのなら…アユミには感謝せねばなるまい…おっと

この話は内密で頼む」

「率直に褒めたりなさらないので?」

「それはお前達に任せる、軍には私のような役割も必要なのだ」


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