54話 素延べ火造り
素延べの直前、ジュンヤとシズカがやってきた
「おーい! アユミ…!? そ、それは姉貴か!? な、なんて綺麗なんだ…」
「うふふ…ジュンヤったら…アユミちゃんが頑張ってくれたお陰よ」
「本当に綺麗…あ、そうだわアユミちゃん、クルネドさんから伝言があるのだけど…」
「…何です?」
「「鍛冶を頑張っているのは良いが、明らかに契約外の行動だ。結果がどうなろうと
こちらは責任持たないし、費用負担もできないぞ」…ですって」
「そんな事言ってやがったのか! あの野郎…!」
「まぁまぁ…クルネドさんの言うことはもっともです。「そもそも僕が勝手にやっている事
このようなうまくいくか分からない事では料金請求とかできませんし、むしろ
タダでやりたいくらいです」とお伝え…この理由じゃまた怒られちゃうかな」
「そうね…私がうまく伝えておくわ」
「お願いします、シズカさん」
「さーてジュンヤ、これから剣の形に仕上げていくケド…どんニャ形、長さがお望みかニャ?
あ、片刃の剣にする事は確定だから、それ以外で頼むニャ」
「え…何でだよ…?」
「両刃だと手入れが大変ニャし、力任せに振り回してると自分も傷つける場合があるニャ」
「うっ…」
「どうやら、やっちまった事があるようだニャ? 片刃なら心配いらないニャ
後で手入れの方法も教えてやるからニャー」
「わ、わかったよ…そうだな…今まで使っていた剣は1メートルを超えてたから…
少し短くして片手でも扱えるような…真っすぐな剣が良いな」
「ホホーウ…「怪力」を持ってる割には堅実な選択だニャ、どういう風の吹き回しニャ?」
「茶化すなよ…今回、姉貴がこんなことになって盾の重要性を思い知ったんだ」
「ニャーるほど、ルードヴィッヒみたいに片手剣と盾の恰好に変えるって事かニャ
それじゃ80から90センチ位の刀身に仕上げるかニャ…アユミもそれで良いニャ?」
「僕はどんな要望でも頑張って打つだけだよ」
「よーし、それじゃ素延べを始めるニャ、最後に柄にはめ込む事も考えながら
伸ばしていくニャ」
「はーい」
「俺にできる事はあるか?」
「ここからは無いニャ」
「そうか…」
シズカはクルネドの元へ行き、ジュンヤは座りこんで作業を見守るようだ
アユミは、今更特に気にすることはなく、ヒートハンドで熱を加えて叩き始める
完全に一体化したので傍目からは分からないが、造り込みの事を意識して
長く伸ばしていく
「よしよし…そろそろ柄の大きさに合わせていくニャ
でも目釘の穴は後で開けるからニャー」
「はーい」
「…ん? その柄…俺が今まで使っていた両手剣のじゃねぇか?」
「あ…はい」
「ニャフ…使い慣れて手に馴染んだ物の方が良いニャろ?」
「まぁな…」
とっさにフォローしてくれたカラドボルグに心の中で感謝した
「よーし、これから切っ先を打ち出すんニャけど…今回は面倒くさい作り方をしていくニャ
まず芯鉄を上にして、先を斜め方向に打つニャ」
「うん…こう?」
「そうニャ、そしたらまた皮鉄の方から打って…先を尖らせていくのニャ」
「ふむふむ…」
「ま、これで完全に尖る事はニャいから…その位で良いニャ。最後に刃鉄を上にして
先を真っすぐ打っていくニャ、そうして先が金床まで降りて芯鉄側がまた真っすぐになったら
皮鉄を打って形を整えて…これで素延べは終わりニャ」
「ふぅっ…ちなみに簡単な作り方ってのもあるの?」
「簡単というか、刃鉄が長くなるように斜めに切り落として、そのまま刃鉄側を
芯鉄側が真っすぐになるまで打つだけなんニャけど…体の一部が切り落とされたみたいで
気持ち悪い感覚になっちゃったから、吾輩は好きじゃない方法だったニャー」
「へぇ…」
今回はまだ何とかわかる金属トークだった
***
時刻は夕方になったが、アユミはまだ続ける気満々だった
「さぁて…「火造り」を始めるニャ、打つ所をまた熱するけど、素延べの時よりは
低温を維持して…尖った刃に変えていくニャ」
「はーい」
皮鉄部分を金床面に当てて、刃鉄側を斜めに叩く。しかし打つ方向からの視点では
どのくらい変形したかが分からず不安になる
「ねぇ…これで本当に合ってる?」
「ニャ? 不安ニャら透かしてみると良いニャ」
「透かす…ってどうやるの?」
「刃を上に向けて、柄部分を左手に持って、右手は刃先をつまんで
片目を閉じて、で、刃先を目元に近付けて見るのニャ」
「ふむふむ…おぉー…」
「まーここでは1ミリ程度のズレは許容範囲ニャ」
「わかったー」
修正方法を知って安心し、迷い無く打てるようになり、外見だけは
立派な剣の形になった
「上出来ニャ…でも最後の焼き入れと焼き戻しを終えるまで安心はできないニャ
これは日が沈んでから行うニャ」
「それはどうして?」
「鉄の正確な温度を色で判別する為ニャ。これで剣の全てが決まるから
テキトーな熱の加え方は許されんのニャ」
「そっか…じゃあ新しい水に換えてくるね」
「頼んだニャ~」
「姉貴は俺が見ておく、完成まで他の奴には指一本触れさせないぜ」
ジュンヤの頼もしい言葉を受け、アユミは鍼灸ワンピースを着て
焼き入れ用の水桶を運んで行った
***
アユミが水を換えてくる間、カラドボルグとアイとジュンヤが話をする
「フフ…いよいよニャ…鍛冶師アユミの誕生ニャ…ここでの噂が広まれば
いずれ注文が来て売り上げガッポガッポニャ」
「お前そんな事考えてたのかよ…」
「アユミちゃんなら不可能じゃないかもね? 一生懸命だし」
「あの性格を積極的で自信タップリなものにしてやれば…美少女鍛冶師アユミ
ウ~ン夢が広がるニャ~」
「楽しみねぇ♪」
「一番難しい問題じゃねぇか…どうする気だよ…?」
「ニャッフッフ…吾輩、この前ヒントを得たニャ…あのパッとしない服を
いつまでも着てるから自信がつかないのニャ。ここで可愛い服の一つでも
着せてやれば自信は急上昇するはずニャ!」
「あぁ…確かにアレは無いとは思うが、そううまくいくか…?」




