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50話 人生経験豊富な猫

「まぁーったく、どいつもこいつも…」


カラドボルグは愚痴をこぼしながらも、アイの骨壺の前に座ったので

アユミもそれにならう


「吾輩みたいな剣になるってことは、不老不死になるって事ニャ

わかってて言ってるのかニャ?」

「え? ええ…もちろん…」

「ハァ~…人間って不老不死になりたがるクセに、なった後の事をロクに考えない…

困ったもんニャ」


アユミ自身にも思い当たり、耳が痛い


「この前寝床でも話したけど、溶鉱炉に足を滑らせて落ちて、そこをミナモが

剣に加工して「生きてる剣」として生まれ変わらせた…つまり不慮の事故ニャ

その後が幸せなら不老不死も悪くニャいと思えただろうけど…」


カラドボルグはどこか遠い目で寂しそうに見える


「ミナモが居た時は楽しかったケド、どんどん年老いて吾輩が最期を看取る事になって

あれはツラかったニャ…アイもジュンヤを看取る日が必ずやってくるニャ

その後ヘンな連中に拾われてロクな使われ方をされず…鋳鉄を被せられて

自由を100年は奪われたニャ…まぁ、バーン家のキャリーがいたから少しは紛れたけど

アイにはこんニャ苦労を味あわせたくないのニャ…」

「そんな後の事まで考えてくれるなんて…優しいねカラドボルグちゃん」


サリエルも不老不死は天罰だと言っていた。アユミも、なると決めたときは

冒険者ギルドの事で頭が一杯で、寿命の関係でひとりぼっちになった時の事など

あまり考えていなかった気がする


「吾輩は運よくアユミと巡り会えたから、不老不死の生活を満喫する準備が整ったニャ

でもアイは…うまく整うかは分からないニャ」

「それは鍛冶する人を見つけろってこと? なら僕に言ってくれれば…」

「アユミにはやるべきことがあるニャ、ホイホイ安請け合いしてたら

いつまでたっても使命を果たせないニャ」

「うっ…」

「まー最初の鍛冶だけはアユミにやらせるけど、後はジュンヤ次第になるかニャア…」


「私はね…この世界に来た時からジュンヤの為に生きようって決めてたの

たとえブラコンって言われても…ね」

「う…聞こえてましたか…すみませんでした」

「ふふっ、アユミちゃんはいいのよ…ジュンヤの為を思って言ったのでしょう?」


「…決意は固いようだニャア…そこまで言うニャら剣になって、吾輩の苦労を

味わってみるがいいニャ。でも、吾輩の場合はミナモの勇者能力があったから

こういう形に成れたケド、アユミは鉄を溶かす温度にできるってだけで

「魂をこめる」能力があるわけじゃないニャ、それでも良いニャ?」

「そこは私が「留置」の能力で頑張る…うまくいかなくても恨んだりしないわ

何もしないで成仏しちゃうよりマシでしょ?」


「前向きだニャー…分かったニャ、指示は吾輩が出すから…アユミもそれでいいニャ?」

「うん、僕は最初からアイさんの助けになりたいと思ってたから」

「今回は長丁場になるし、うかつに作業の中断とかできニャいから覚悟するニャ」

「が、頑張るよ」


そして、カラドボルグから手順と、必要な道具を聞く。まずはアイの魂を安定させるため

ねずみ鋳鉄にすることにした。これは常識では考えられない手法のようだが

カラドボルグが身をもって体験した事らしいので、信じることにした


***


全部話し終わった所で、アユミが部屋の外に出るとジュンヤが興奮気味に両肩を掴んできた


「アユミ! やってくれるんだろ!?」

「び、微力を尽くします」

「そうかぁっ…よかった…っ」


ジュンヤは、人生で一番の安堵の声を上げたかもしれない


「やることはやるケド、うまくいくか分からんから安心するのは早いニャ」

「ああ…俺に何ができる? 何でも言ってくれ!」

「よーし、じゃあ…拠点西側の食堂に骨壺を持ち込んで、骨を粉々になるまで砕くニャ」

「おう! …な、なにぃ!!?」


ジュンヤは、人生で一番の驚嘆の声を上げたかもしれない


「火葬した骨は粉末状にしないと溶けずに残り続けるのニャ、鉄から浮いた骨を

後から砕くのは苦労した…と、吾輩を作ったミナモは言っていたニャ」

「うっ…そ、そうなのか…」


「骨に痛覚は無かったから気にする必要は無いニャ、この中で一番力があるのはお前ニャ

…やっぱり姉の骨を砕くのはキツイかニャ?」

「ジュンヤ君、私も手伝うから…」

「シズカ…くっ、男に二言はねぇ!」


そう言うと、ジュンヤは部屋にある骨壺を持ち出した


「その意気ニャ…あとアイ、完全に粉になったら一旦喋れなくなると思うから無理するニャ」

「わかったわ…」

「ルードヴィッヒには、あの鍛冶場と食堂を使う許可をもらいたいニャ」

「ああ…まだ魔族領側の施設を使おうとする者はいないから、許可は問題なく下りるだろう」

「頼んだニャ、アユミは鋳型と鉄と石炭の準備ニャ」

「うん、わかった」


カラドボルグから指示を受け、方々に散っていった

外はもう真夜中だった


***


アユミは鍛冶場で鋳型の製作にとりかかった、周囲にある、壊れたまま放置されている

武器を溶かして叩いて鉄の板を作り、さらに溶接して骨壺並みの大きさの箱を作る

そうしているとノブヒロがやってきた


「アユミさん? こんな真夜中に頑張るねぇ…」

「ノブヒロさん…」

「ちょうどいい所に来たニャ、ノブヒロはこっちで石炭をハンマーで粉々に砕くニャ」

「うん、わかった…猫の手も借りたいってやつかな?」

「ニャ? 昔にも聞いたけど、こーんな肉球に何期待してるんだかニャー」

「アハハ…ルードヴィッヒさんから事情は聞いてね…僕も協力させてもらうよ」

「助かります」


ノブヒロも加わり、作業が捗る

アユミは、鉄の箱よりも一回り大きな穴を地面に掘り、底に浅く、粘度のある砂を敷き

その上に鉄の箱を置き、箱の外側の空間を粘度のある砂で埋め、鋳型が完成した

本当は木の枠に砂を入れて鋳型を作るべきなのだが、もともとここに溶鉱炉が無く

当然鋳型関係の道具も無いので急ごしらえになるのも仕方がない


「ふぅっ、アユミさんは凄いね…こんな根気のいる作業をあっさり引き受けるなんて」

「しかもタダ働きニャ」

「カラドボルグ! そんな事言わない! こんなうまくいくか分からない事…

むしろタダでやりたいくらいだよ」

「ニャー…アユミはそう言うやつニャ」


***


「よし…これが最後の欠片か…姉貴…」

「どうしたの…?」

「怖いんだ…また姉貴の声が聴けなくなると思うと…」

「もう…今から失敗した時の事考えてどうするの? 大丈夫、何とかなるって」

「アイちゃん…私がずっとついてるから…ね、ジュンヤ君」

「ああ…姉貴…またな」

「またね、ジュンヤ…」


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