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42話 従者無双

「では、アユミ様の事はお任せください」


気絶したまま起きないアユミを、アイとシズカも使っている個室に寝かせ

女性兵士に様子を見守らせる事にした


「頼んだニャ…さぁーて、アユミの代わりに一肌脱ぐかニャー」

「本当に大丈夫なの? 起きた時ついててあげなくて…」

「シズカ、アユミは阿呆じゃニャいから心配は無用ニャ。さぁ出撃ニャ!」


***


夜の闇があたりを包み、ヒュージリバーが暗く見えなくなった頃、計画は動き出した

人間領側では、壊れた橋の元に兵士達が大盾を持って集まり、ノブヒロとアイが

塹壕内で「合図」を待ち、シズカとクルネドは後ろに控えている


魔族領側では、拠点北西方向すぐ近くまで広がっている「裏切りの森」の中に

カラドボルグとルードヴィッヒとジュンヤが潜んでいた


「…完全に日が沈んだ、計画通りに頼むぞ」

「…おう」

「…わかってるニャ、それじゃ行ってくるニャ」


カラドボルグはルードヴィッヒに渡された特製の発煙筒を咥えると、拠点西部の出入口付近へ

篝火に注意しながら慎重に近づく、黒猫なのでアユミ程ではないが、隠密性は抜群だった

見張りが居る出入口を直接突破するのは難しいと見ると、猫特有の跳躍力で西側の壁を越えて

配給所の屋根にたどりついた


肉球の前足でなんとか発煙筒を立てると、電撃で着火を試みる

火は着いたが、平らな屋根ではなく、衝撃で倒れてしまった


「あーもう、しょうがないニャー」


カラドボルグは肉球の前足で発煙筒を直接はさみ、発射させた

それは発煙筒と言うより、手筒花火のように強烈な光と音を夜空にまき散らし

「合図」を送っていた


「なんだ!?」

「うるさいぞ…敵か?」


見張りの魔族達の動揺を誘い、視線が集まる


***


「合図だ! ノブヒロ!」

「はい! のびろー!!」


まず塹壕とヒュージリバーの間の地面から木々が生えて防矢設備を形成し

次に破壊されてる橋を生木が覆いつくし、ギッチリ詰まって渡れるようになった


「よし! 「ライト」点灯! 突入開始!」

「「「おおっ!!」」」


大盾を持った兵士達が、橋を渡って魔族の拠点へと押し寄せていった

照明魔法で光り輝く波のように見える


「て、敵襲!! 橋から敵襲!!」

「バカな! …ええい! 槍を投げろ! 屋根上の奴も黙らせろ!」


人間の兵士達は槍の雨を浴びつつも、盾を掲げて守りを固めながら前進を続ける

槍の発射地点目掛けてアイがフレアを撃っていく

距離減衰があるが、アイの能力「留置」によって、爆風に当たった敵は

足に力が入らず移動が困難になり、そこを他の魔法兵が集中攻撃していく…しかし

これらの全ては囮であった


***


「なんだこの猫!?」

「痛ってぇ! この!」


魔族領側の拠点内では、カラドボルグの独壇場が始まっていた。屋根から飛び降り

篝火を蹴り倒し、火のついた薪を咥えて、拠点中央で手あたり次第に暴れまわり

槍投げも妨害する。電撃も調子良く光り、客寄せと化したカラドボルグに攻撃が集まる


しかし、「生きてる剣」のカラドボルグにはヘルファイアもアイスコフィンも効かず

斧や槌の直接攻撃も大部分は華麗にかわし、たとえ当たってもしなやかに受け流し

まさに我が世の春を謳歌していた…もちろんこれも囮である


***


本命のルードヴィッヒとジュンヤは、「合図」の光が止んでから拠点内へ侵入し

カラドボルグに気を取られている魔族に闇討ちを行っていた。折を見て

建物の入り口に発煙弾を投げ込んで、魔族を燻り出してから2人1組で連携して倒す


ジュンヤはまだ未熟だが、ツーマンセルなら短い訓練期間でも習得でき、大剣の大振りの隙を

ルードヴィッヒの剣が埋める形で次々と切り伏せていった。ジュンヤの「怪力」により

切るペースも速い


全ての建物に順番に発煙弾を投げ込んでいった。アユミの地図のお陰で入り口に迷う事はない

兵力が集中する地点も予測でき、死角に潜む魔族を討ち漏らすこともない


「何をやっている! はやく押し返せ!」

「猫が! 猫がぁ! グハッ…」

「猫くらい早く片付けろ! なんだこの煙は…」


魔族達は混乱状態に陥っていた。橋を渡ってくる盾持ちにもカラドボルグにも

決定打を与えられず、闇討ちによって戦力を削られる焦燥感もあった

やがて盾持ちの先頭が橋を渡り切った


「よし! 全員抜剣! 突入ー!」

「「「オオオー!!」」」


魔族領側で両軍の兵が相対し、正面から激突した。狭い橋の関係で

人間側は一度に剣を振るえる人数が限られ、序盤こそ苦戦していたが

すかさずカラドボルグの電撃とルードヴィッヒとジュンヤの背面攻撃が加わる

暗闇の中、指揮系統もうまく回らず、魔族は総崩れとなる


「くそっ、ここまでか…海に逃げ込めー!」


魔族達は一斉に拠点南側から海へ飛び込んでいった。逃走経路確保の為に南を空けていたようだ

通常なら、夜の海に逃げ込んだ相手を深追いするのは、逆襲される可能性もあって危険だが

今回は電撃を放てる猫が飛び込む…あまりにも分が悪かった


「錆びるけど仕方ない…ニャ!」


水面が明滅する、海の中にいた魔族は叫び声を上げることもできない

暗闇で先の様子がよくわからない魔族が、なおも次々と飛び込んでいく


***


そして日の出、海にはおびただしい数の魔族の水死体が浮かんでいるのが見えた

魔族の生き残りはおらず、人間側は投げ槍で負傷者は出たが、シズカの処置により

死亡者ゼロという、すさまじい戦果を上げたのであった


***


「…という事があったのニャ」


アユミは結局朝にカラドボルグか帰ってきて起こすまで寝ていた

起き抜けに戦いの様子を聞かされている


「すごい…カラドボルグは無敵だね」

「ニャッフッフ…吾輩の雄姿、アユミにも見せたかったニャー」


そこにクルネド以外の5人がやってきて、ジュンヤがカラドボルグをたしなめる


「違うだろぉ? アユミのお膳立てがあって快勝できたんだからな」

「ニャフ…そうだったニャ、ついつい調子に乗っちゃうニャ」


アユミは、姿を見たとたんに寝床を飛び出て土下座した


「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでしたー!!」


アユミは見てないが、5人は一瞬引いていた

だが、まずアイがアユミの手を取った


「アユミちゃんっ、顔を上げて? アユミちゃんの地図のお陰でうまくいったんだからね」

「その通りだ…こちらに死者を出さず、地理を理解していたから爆弾も最小限ですみ

魔族の物資を収奪する余裕ができ、戦闘技術も窺い知れる…

これ以上ない戦果と言って良いだろう」


「でも僕は地図を描くくらいでしかお役に立てなくて…」

「それを言ったら僕も木を伸ばしただけで直接戦闘には参加してないさ、でも

僕らのような裏方も重要だろう?」

「剣を持つだけが戦闘じゃないわ、私は包帯を持って戦ってるのよ」

「う…」


また自らを卑下する様子を見て、ジュンヤは苛立ちを隠せなかった


「だーっ!! もう卑下すんのはやめろ! アユミのお陰で皆助かったんだから

いいじゃねぇか!!」

「あ…はい」


アユミは勢いに押され、返事をした。ジュンヤは少し居心地が悪く感じ、先を歩き出した


「そ…そら! 朝飯食いにいくぞ!」

「待ってよジュンヤー」

「…ありがとうございます」



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