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41話 自信無き一流

夕食は全員一斉にとるのではなく、見張りの数を減らさないように

一度の人数を制限して行われた。アユミは「五人衆」と一緒に…などという

都合の良いスケジュールを組んではもらえず、1人で保存食を食べていた

もっとも、人間関係に苦手意識を持つアユミにとっては、その方が都合が良い

その最中、岡田信弘…ノブヒロが自分の保存食を持ってアユミの傍に来た


「隣…いいかい?」

「あ、はい」

「いやー種を植えてたらもう夕食だ…時間が経つのは早いねぇ」

「種…こんな最前線で畑ですか?」


「あぁ…僕の「農耕補助」という能力はなんとも非常識な代物で、爆弾を埋めたら

爆弾の実が生って、麦を埋めたら一晩で収穫できて、苗木を埋めたら僕の合図で

ビューンと急成長して伸びるんだ…たまげるよ」

「それはまた…すごい能力ですね」


サリエルに提示された能力の中にも「農耕補助」は書かれていた、そこまですごいなら

そっちを選べばよかったかもしれない


「近日中に拠点奪取作戦が始まるから、その仕込みで引っ張りだこさ。予定では

防矢設備をいきなり出現させたり、破壊されてる橋を生木で渡れるようにするとか

僕の今までの常識では考えられない作戦だとは思うよ」

「へ、へぇ…でも僕も透明になれますし、電撃出す猫もいますし…異世界ですから…」

「うーん…ジュンヤ君とかも「異世界だ!」って言ってたけど

異世界って…結局何なんだろうねぇ?」

「う…」


「急にこの世界に呼び出されて、魔法みたいな能力があるよって調べられてチヤホヤされて

理想郷かと思えば半ば戦うことを強いられ…普通に戦争で兵士は死ぬし、憎み憎まれを

繰り返してる…僕は本当は「農耕補助」なんてあるんだから農家にでもなって

のんびり暮らしたかったよ…もう戦争に勝利するまで叶わぬ夢だろうけどね…っと

すまないね、愚痴を聞かせてしまって…」

「いえ…呼び出される直前、どんな状況でしたか?」


「ん? うーん…僕は高校の用務員だったんだけど、急に床から変な手が生えてきてね

そのままジュンヤ君達共々引きずり込まれて、気が付いたら城の中だったよ」

「天使とかには会いましたか?」

「天使? 背中に白鳥の翼生やしてる…神とかかい? 会ってないなぁ…君は会えたのかい?」

「はい…印象は悪かったですけどね…あんなロクでもない天使ばかりでない事を願います」

「そ、そうかい…」


アユミは渋い顔になって大天使の事を思い出す。図らずも

「なぜアユミだけ天使に会っているのか?」の追及を逃れた形になった


***


夕食を済ませて程なく、ルードヴィッヒが迎えに来たので、アユミはノブヒロと共に

会議室にやってきた。そこにはジュンヤ、アイ、シズカだけでなく

もう1人、軍師らしき男がいた。目つきが鋭く、アユミは萎縮する

それを尻目に、いつの間にか近寄ってきたカラドボルグは剣形態になって鞄の中に納まった


「ふん…お前がディーン殿下に推薦された斥候か」

「は…はい…」

「クルネド、これが彼女の描いた地図だ」


ルードヴィッヒが机の上に広げ、他の者は立ち上がって見に来た。 思わずうなり、感じ入っている

…ように見える。手ごたえは悪くない


***


ルードヴィッヒにした説明と同じ内容を、他の者にも伝えた


「なんだ…本当に武器庫はないのかよ…散々あるあるって言っといて…」

「西部の配給所が武器庫を兼ねてるってことかしら…」

「いやぁ…それよりもこんな最前線に鍛冶場って…」

「アユミちゃんじゃなきゃこんな構造分からなかったわねぇ」


アユミはおどおどしながら推移を見る、おおむね良い評価だ


「それから…近い内に魔王ゼログニと「魔弾の投手」なる助っ人がやってくるそうです」

「何!? 魔王がこんな最前線に!?」

「あ、あくまで一般兵の会話を又聞きしただけなので、本当かどうかは分かりませんが…」


「解せんな…」

「どうしたクルネド…何か問題が?」


軍師…クルネドがアユミを睨みつけ、再び萎縮させる


「地図が芸術品のように綺麗すぎるのはまだ良い、書かれた詳細情報が良すぎる

まるで魔族と通じているかのような…」

「…っ」

「クルネド! 詳細がわかるのも、透明になれる能力があるからで…そもそも

アユミは殿下の信頼を得て、わざわざここまで来てくれたのだぞ!?」


実際魔族の子とへその緒で通じていたので、アユミは何も言えなくなった


「それならなぜ魔王の名を出す? 人間が恐れて攻めるのを取りやめるのを

狙ったのではないか?」

「そ…それは…本当にそう話してて…そのまま…」


アユミは怯え切って、全身の穴という穴から、汗と涙があふれ出し、尿も数滴垂れた

周りの「五人衆」も疑いの眼差しで見ている気がしてきた


「大体…10万ゴールドで受ける所から私は怪しいと思っていたのだ

こんな金額で受ける奴は魔族の密偵だと疑わねばならん…」


怯え切って「10万」と「怪しい」というワードしか聞こえていなかった

アユミは鞄から5万ゴールドを取り出し、机の上に乱暴に置いた


「やっぱり多かったんじゃないですか!! もうこれ返します!!」

「なんと…無償で働くというのか?」

「そうです!!」

「お、おいアユミ…」

「…冒険者がタダ働きするはずがない! やはり魔族の密偵か!」

「う…う…」


身体中が痙攣を始めた


「もういいでず!! ぼぐがひどりで! ぎょでんおどじでぎまずぅ!!」


涙と汗と鼻水でもうワケが分からなくなった顔のアユミは、錯乱しながら走り出した

が、強烈な電撃を受けて倒れ伏した


「ハイ止まるニャ」


カラドボルグが猫形態になってアユミにのしかかった


「はなじでぇ…ひどりでやるどぉ…」

「…そんニャ事、1人で出来るわけニャいし、タダの迷惑ニャ。少し頭冷やす…ニャ!」


常人ならショック死する程の電撃を受けて、アユミは気絶した


***


「ハァ…クルネドって言ったニャ? あんまりアユミを試すのは止めてもらいたいニャー」

「「「ええっ!?」」」

「フッ…猫にバレるとはな…殿下に推される程の者がどんな奴か興味があった

地図の出来は、本来なら文句のつけようが無いほど素晴らしい物だ

今夜の作戦にも、このまま用いられるだろう」


「なら何故あんな言い方をした?」

「アユミちゃん可哀そう…」

「彼女には…斥候の専門家としての意識が抜けている、私に責められた時も

自分が調査した結果を堂々と話せばよかったのだ…陛下相手とかでは無いのだからな

しかし…なんなのだあの態度は! あそこまで戦々恐々とされるとこっちが不安になる!」


「アユミはまーったく自信が持ててなくてニャ、このとんでもニャい地図を

ただの図形だと言い張る程ニャ。大方地図を提出する時も顔色を窺ってビクビクしてたはずニャ」

「なるほど…それで最初報酬は3万ゴールドで良いと…?」

「グブッ!? な、なんだそのふざけた金額指定は!?」

「あぁ…下水道掃除の報酬が3万らしいぜ」


「フ…フフ…我ら最前線で働く危険な仕事が3万…フハハ…」

「ニャ…アユミは素直ニャから、そこまで深読みしてないと思うニャ」

「いいだろう…そんな事を言うアユミには相応しい任務を用意してやろう…フフフ…」

「ハァ…前途多難だニャア」


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