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40話 良すぎて逆に

朝になり、目が覚めたアユミはキノコをつまんでから北側に行き

トラバサミがどの程度の密度で仕掛けられているのかを観察してみた


「…無理だね」


想像以上に多い、たとえ覚えても簡単に位置を変えられるから

北側から攻める事は考えない方が良いだろう


***


気を取り直して、西側を見に来た。馬車の轍があるだけでトラバサミは全く見当たらない

探している間に、西の方角から馬車が来て、そのまま拠点内に入っていった

馬車が通るたびにトラバサミを片付けるのは効率が悪いという事だろうか?

トラバサミは無いと断定し、馬車の後を追って荷台を見た…どうやら補給物資を運んできたようだ


「調子はどうだい?」

「いやー連中のゲリラ活動もワンパターンになってきてなー恐るるに足らんよ」


アユミは聞き取れる距離で会話を聞く


「ゼログニ様はまだお越しにならないのか?」

「あぁ…もうじき魔弾の投手と一緒に来られるらしい」

「へぇ! ならもう暫くの辛抱だな」

(…ふむ)


あのゼログニが来るのならば、エルフの事を話してみるのも良いかもしれない

もう明らかな敵対行為をしてしまっているので難しいかもしれないが…

「魔弾の投手」とやらは良く分からないが狙撃手とかだろうか?

…やがて世間話になったので、アユミはその場から離れ、「武器庫」を探し始めた


***


日が差しているから、昨日よりも探しやすい。しかし「武器庫」は見つからない

「記憶能力強化」により建物のシミュレートもできるが、構造的に

隠し部屋の余裕がある建物もなく、地下室も無い

建設途中の物見櫓を「武器庫」として使う事も考えにくい


「うーん…」


配給所に武器も置かれているが少ない…考えられる事は、そもそも武器庫が無いのではないか?

魔族は皆大柄で力が強いので、自分の武器は肌身離さず持っていても負担が無いのかもしれない

武器が壊れても鍛冶場で直せるので、予備の武器貯蔵も最低限で良い…そう結論付けた


明るくなった拠点外周を見て回り、北側以外にトラバサミが仕掛けられていない事を確認し

岩に登って全体の構造を見渡してから帰路に着き、川の水面から数々の大きな岩の頭が出ている

個所に向かった。時刻は正午になっていた


***


川を渡り終わると、魔族が1人、地面に伏せて双眼鏡を人間の拠点に向けているのを発見した

木々に覆われ、拠点側からは分からないだろうが、川を渡ってきたアユミの方からは丸見えである

敵の斥候を排除するのもアユミの仕事…川に戻って大きめの岩を両手で持ち、ゆっくり近づいて


ゴッ


悲鳴を上げる事無く、魔族は双眼鏡を手放し、動かなくなった。死んではいないようだ

アユミは「健康な肉体」の持久力で何とか背負い、そのまま人間の拠点に歩いて行った


***


「なっ!? と、止まれ!」


見張りの兵達が、1人でゆっくり近づく魔族に武器を向け警戒しだしたので

アユミは「透明化」を解いた


「あ…アユミ様!?」

「こいつは魔族の斥候です。まだ死んではいないようですが…尋問とかの処遇はお任せします」

「わ、わかりました」


アユミは再び透明になり、地下へと歩いて行った


***


個室にて、カラドボルグがアイとシズカと一緒に遊んでいたので

少し呆れ顔になり、ゆっくり近づくとカラドボルグが気付いて、そのまま声を出す


「アユミ~お帰りニャ~ン」

「「えっ!?」」

「ただいま…僕の荷物は?」

「あっ…それならこっち」


シズカが部屋の隅から鞄を持ってきてくれたので、「透明化」を解いて

鍼灸ワンピースとストラップを着けた


「カラドボルグと遊んでくれて、ありがとうございました」

「いいのよ♪ 楽しかったし、今度はアユミちゃんも一緒に遊びましょ♪」

「ごめんね…可愛くてつい…」

「いえいえ、仕方ないですよ。僕はルードヴィッヒさんに報告して地図を描く作業に

入りますから…カラドボルグはまだ遊んでていいよ」

「ニャハーン?」


そう言ってアユミは鞄を背負って部屋を出た。アユミもドキドキするような美少女2人

オスのカラドボルグが懐くのも仕方ない


***


「ただいま戻りました」

「おお、戻ったかアユミ…魔族の斥候兵も捕らえてきたそうだな?」

「はい、見張りの方に引き渡しておきました。早速地図の作成に移りたいのですが」

「それなら隣の部屋に紙と万年筆があるから使ってくれ」

「わかりました」


「そうだ、この後すぐに会議があるから武器庫がどのあたりにあったか大まかな位置を知りたい」

「結論から言うと、武器庫は無く、代わりに北部に鍛冶場、西部に配給所があって

予備の武器等はそこに必要最小限だけ置かれている感じでした」

「なんと…ずっと思い込んでいたよ…」

「魔族は大柄で力がありますから…自分の分は普段から持ち歩いていても負担は無いのでしょう」


そういうとアユミは隣の部屋に向かい、大き目の紙を選び出して地図を描き始めた

「記憶能力強化」で、頭の中に模型を思い浮かべながら描けるが

積まれた岩の表現方法をどうするか悩む


「うーん…頑張って見たままを描こうか」


***


1時間後、描いている途中にカラドボルグがやってきた


「ニャ? アユミまぁーだ描いてたのかニャ?」

「そうだよ、慣れない作業だからまだかかるよ」

「どーれどれ…ニャンじゃこの絵画!?」

「…絵画?」


立ち上がって全体と脳内模型を比べるが…芸術作品には見えなかった


「ただの図形だよ…もうちょっとかかるから遊んでていいよ?」

「いやー今皆会議中だし…午前中にいっぱい遊んだからいいニャ」

「そう…」


アユミは座って再び描きだした


「ニャんじゃーアユミ、アイとシズカと一緒に遊べるのがうらやましいのかニャー?」

「少しね…僕にそんな度胸は無いし…他の娘と遊べるなら遊べる時に遊んだ方がいいよ」

「度胸~? 女同士で何言ってるニャ」

「あくまで外見だけ…って、わかってて言ってるでしょ?」

「バレたニャー…でも心も女になろうとは思わないのニャ?」


思わず筆を止めて真剣に考えてしまう


「……いやいや僕には無理でしょ、そりゃ世の中には身も心も女になれる人がいるけど」

「いるのニャ!?」

「…あぁー…僕が前にいた世界の話ね、手術で先天的な女性顔負けな美女になった人とかが

珍しくなかったんだよ…でも、僕がやっても気持ち悪いだけだよ」


「アユミは可愛いのに、どうしてそこで諦めるんニャ!」

「ありがと、僕も鏡を見て少しはそう思う、でもアイさんとシズカさんを見て

やっぱり本物には適わないと確信したね。あの2人は本当に可愛い、まさに美少女だ」

「ニャァ…これは重症だニャァ…」


カラドボルグが部屋を出て行ったので、再び地図描きに戻る

話をして少しは気が紛れた


***


うつ病だからかは分からないが、一つの事に短時間集中し、のめりこむのは得意だった

脳内模型をなぞり、加筆修正を繰り返す。結局北側のトラバサミ地帯は個を描かずに簡易に描き

積まれた岩は面倒なので上から見た光景をそのまま一つ一つ描く事にした


「うん…よし、できた」


持久力上昇に「空気摂取」を併用しながら、日が沈む前には仕上がった

早速ルードヴィッヒに見せに行く事にした


***


会議はすでに終わっていたようだが、ルードヴィッヒが残って書き物をしていた


「ルードヴィッヒさん、地図が完成しました」

「おお、出来たか…むむぅ…」


地図を見たルードヴィッヒが唸る、地図制作など慣れていないので

何を言われるかわからず緊張する


「ダメなら描き直しますが…」

「あ、あぁ問題は無い。会議に提出する前に、概要を今解説してくれ」

「わかりました」


アユミは横に回り、説明を始めた


「まず北側…わざと岩が積みあがっていない箇所を設け、多くのトラバサミを敷き詰めて

誘っているようでした。夜だとまず分からずに踏み抜くでしょう」

「うむ…過去に踏み抜いた兵がいてな…味を占めたか」


「次に東側…多くの岩が波状に…地図に描いてある通りに積まれていて

一つの山を越えている間に、奥の山から狙い撃ちされるような構造になっていました」

「ちょ…ちょっと待ってくれ、これは適当に描いた岩ではないのか?」

「これは上から見たままを描いた物です。変に省略しても伝わらないと思ったので」

「う…むむぅ…」


「魔族の兵士は小型の槍を複数本常に持ち歩いていて、川を常に見張っていました

投石器は見当たらなかったので、こちらの塹壕を崩される事はなさそうですが…」

「消極的では拠点を守ることはできても奪取はできないだろうという考えが

我らの総意だ…東側の様子は分かった、他の方面はどうだったかね?」


「では南側…そこも岩が波状に積まれていましたが、見張りは最小限という印象を受けました」

「積まれている岩も東ほどではない…と受け取ってよいのかな?」

「はい、トラバサミもありませんでした」

「ふーむ…」


「それで残った西側ですが…馬車の轍があるだけでトラバサミは全く見当たりませんでした」

「南側に沿って馬車の入る道が設けられている…という事か」

「はい、後は建物の壁があるばかりです」


「内部ですが…西側に沿って南から順に、西側出入口への道、配給所、仮眠室、司令部

食堂の順で建物が立ち並び、北部のここに鍛冶場、拠点中央には建設途中の物がありましたが

詳細は分からなかったので「物見櫓?」と書かせていただきました」

「そうか…」


「アユミ、武器庫が設けられていないという話を、先程の会議でも提言したのだが

否定意見が根強くある。疲れている所申し訳ないが、夕食後の会議に君も参加して説明してくれ」

「わかりました」


***


人間の兵士達が世間話をしている


「新しく入った娘…どうだ?」

「可愛いといえば可愛いが…若すぎるぜ…やっぱ母性溢れるアイ様が一番だろ」

「そこは凛としたシズカ様だろ…新入りの娘は…ダメだ、あんなエロくない全裸を見たら…」

「全裸!? 痴女かよ!?」

「い、いや、そういう感じじゃなかったんだが…気絶した魔族を全裸で背負って来ただけで…」

「なんだって? 全裸で…魔族と…ナニをしてきたんだ?」

「そ、そりゃあ勿論…」


「フツーに殴って気絶させただけニャろ」


「そ、そうだよなぁ…って、うおぉ!?」

「ニャッハッハ、その娘に飼われてる猫ニャ…あー、こんニャ戦場で禁欲生活中ニャー

こういう話もしたくなるのは仕方ないニャ」

「お、おぅ…」


「アユミの名誉の為に言っとくけど、透明になれる能力を買われてここに来たんニャ

でも全裸じゃないと能力を発揮できないのニャア…」

「そ、それであの時急に全裸で…か」

「そんニャんだからアユミの第一印象は大抵最悪になっちゃうのニャ…どうしたもんかニャー」


「最初に裸を見てしまうと厳しいが、後からでも印象を良くしたいなら…やっぱ服装だろう」

「服ニャ?」

「戦場じゃ難しいかもしれんが…アイ様みたいな髪を結ってる装飾品とか」

「そうそう、シズカ様も雑嚢を可愛くあしらってるからなぁ」

「ニャア…アユミも首にストラップかけてるけどニャア…」

「そうなのか? 多分服の中に入れてしまってるんだろう…全然分からなかったぞ

そうでなくとも…鍼灸ワンピースはないだろう…他に服は無いのか?」


「無いはずニャ…猫の吾輩には盲点だったニャ…この依頼が終わったら

服屋とか勧めてみようかニャー…」

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