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37話 ゲリラからの要請

朝、目覚めるとアユミはカラドボルグに抱き着いたままだった

寝ている間に離れなかったようだ


「オーウ、ようやく起きたニャ?」

「あ…うん、おはよう…それと、ごめんね無理やり抱きついて」

「気にするニャー…とは言わんニャ、今度からは一言断ってからにするニャ」

「うん…わかった」


良い目覚めのアユミはカラドボルグを片手で優しく撫でてから立ち上がり

道中のキノコをつまみ食いしながらギルドに向かった


***


今日は朝から多くの冒険者がギルド内に集まっていた

多くは耐水性の装備やマスクで身を固めていたので

もしやと思い掲示板を見ると、下水道掃除の依頼が張り出されていた

アユミは心の中でガッツポーズし、早速受注しに受付カウンターのリューツの下に来たが…


「おや…アユミさんには直接指名依頼が来ていますよ。しばらくお待ちください」

「え…下水道掃除が…」

「王家からの推薦でもあるので、今日は諦めてください」

「…はい」


せっかくの高給依頼が…アユミは渋い顔になるが、ギルドは国営なので仕方がない

それにしても、こんな10歳児の手を借りたいとは、一体どのような依頼なのだろうか?

考えていると、下水道掃除を受けた者達が出発し、しばらくしてギュスターヴが来た


「待たせたなアユミ…リューツから聞いたと思うが、直接指名依頼が来ている

今から依頼人に引き合わせるから、ついて来てくれ」

「はい」


***


建物2階の「ギルドマスター部屋」に通された。そこには2人の男性が座っていた

その顔には見覚えがあった。ヒュージリバーで魔族側の拠点に襲撃を仕掛けていたゲリラだ

しかし、その時アユミは「透明化」を使って彼らの地図を見ていただけなので

混乱させないように注意し、まず一礼した


「初めまして…ご指名いただきました、アユミです」

「…ん、おお…私はルードヴィッヒと言う、よろしく」


ルードヴィッヒは軽鎧に片手剣と小盾を携えた七三分けの熟練の戦士という感じがした

彼は椅子から立ち上がり、一礼したが、もう一人の男は座ったまま懐疑的な目を

アユミに向け、口を開く


「…俺はジュンヤだ」


ジュンヤはツンツンオールバックヘア、重厚な鎧と鉢金で身を固めて両手剣を背負っていた

相当重いはずなのに平気な顔をしている。年は16歳程だろうか


「なぁルードヴィッヒ、こんな子供を戦場に寄越して何の役に立つんだ?」

「ジュンヤ!!」

「同感ですね、僕のような子供は下水道掃除でもしてれば良いのに」

「アユミよぉ…」


ルードヴィッヒとギュスターヴは揃って頭を抱える


「アユミ、こいつ殴って良いニャ?」

「ダメ」

「ね…猫が喋った! さすが…異世界は何でもアリだな…」


今のセリフで、ジュンヤは地球から「人間の異世界召喚」方法で来た勇者だと分かる

しかしアユミは、弱い自分をわざわざ指名する意味が分からない


「ジュンヤさんは勇者ですね? しかも結構強い」

「お、おぅ…そうだ」

「どんな戦場か知りませんが…弱い僕をわざわざ指名しなくても事足りるんじゃないですか?」

「んなっ…」


ジュンヤは驚きを隠さない

アユミ自身は、カラドボルグが珍しくてまだ驚いているのだと思っているが、本当の所

自らを卑下するアユミの態度が、ジュンヤが今まで見た事の無い信じられないものだったのだ


「ま、待ってくれアユミ! 君の斥候兵としての力が必要なのだ!」


ルードヴィッヒが慌てて口を開く


「エンゼのディーン殿下から話は聞いている、自らの姿を透明にできる稀有な勇者が

ワンダラの冒険者ギルドに所属しているとな…」

「何っ…本当か?」


それを聞いたアユミは「透明化」を使ってから全裸になり、問いかけた


「…見えますか?」

「「おお…!」」


2人の様子を見る限りでは、納得したようだ。再び着てから「透明化」を解いた


「それで、何をすれば良いんですか?」

「うむ…我らはヒュージリバーの川岸に陣を敷き、魔族の侵攻を防いでいる

だが川が広大故に、こちらから攻め込むことも出来ていない

密かに川を渡り威力偵察をしたこともあったが、思うようにいかない

せめて武器庫を爆破できれば活路を見出す事もできるのだが…」


ここまでは、アユミも見ていたので何となく想像できた。だが黙っておく


「そんな時、ディーン殿下から君の事を聞いてな。透明になれるのなら

アユミ以上の適任者はいない…偵察任務、引き受けてくれるかね?」

「はい」

「では早速我らの馬車に乗って…」

「ちょ…ちょっと待った!」


今度はギュスターヴが慌てて口を開く


「いくら王子推薦の直接指名依頼だからって、お前は冒険者ギルドに所属していて

兵士とかじゃない…報酬を請求する権利がある! それを決めずに承諾するんじゃない!」

「はぁ、そうですか…3万ゴールド位ですか?」

「「グブッ!!」」

「?」


ルードヴィッヒとギュスターヴは揃って吹き出し、ジュンヤは分かっていない様だった


「グ…ゴッホン! …君は欲が無いのか…?」

「いやルードヴィッヒ、アユミが世間知らずなだけだ…報酬は10万ゴールドにしとけ」

「たかっ!?」

「高くねぇ!! 最前線に行くんだぞ…これでも安い位だ! あまりに安すぎると

悪しき前例になっちまう…他の傭兵達の事も考えろ!」

「あ…はい、すみません。では報酬として10万ゴールドを請求いたします」

「う…うむ、こちらに異存はない。今、前金として5万ゴールド支払う

偵察に成功し、魔族の拠点を奪取できたら、さらに5万支払おう」

「わかりました」


アユミは5万ゴールドをこの場で受け取った。「責任」という名の重さが加わっている気がした


「では…他に用事がないなら出発するが?」

「あ…食料は買う必要ありますか?」

「それは兵士達と同じ物が配給されるぞ」

「なら問題ありません、出発しましょう」


***


アユミとルードヴィッヒとジュンヤは、補給物資が積まれた馬車の隅に乗り込む

カラドボルグはそのまま乗り込む余裕が無いので、剣形態になってアユミの鞄に収まった


「おぉ…便利な猫だな」


ジュンヤの言い方はムカつく物だったが無視した


「ではギュスターヴさん、行ってきます」

「ああ、無茶はするなよ」

「よし…出していいぞー!」

「ははっ!」

「ヒヒーン!」


馬車がゆっくり動き出し、ギュスターヴが手を振って見送ってくれていた

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