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36話 アーティファクト

日が半分沈んだ頃、アユミ達はゴブリンの巣穴に戻り、隠して置いた鍛冶道具を回収した

誰にも見つかる事は無かったようで、そのまま倉庫にしまった

そして2万ゴールドを倉庫から出し、バローの元へ向かった


「ニャんでまたここに来たニャ?」

「なんだか僕の持ってるお金って、気付いたら無くなってる気がして…それなら

払えるうちに賃貸料を払っておこうと思ってね…あ、物が沢山ある所だから

剣形態になっておいて」

「吾輩、はしたニャい猫じゃニャいけどニャー…わかったニャ」


アユミはカラドボルグを陰に配し、古物商店に入った


***


「いらっしゃ…アユミか」

「バローさん、来月分の賃貸料を前もって払いにきました」

「ほう…殊勝な心掛けだ…と言いたい所だが、その必要は無くなった」

「…どういうことですか?」


「アユミ、指名手配されたんだってな?」

「はい…でも、すぐ取り下げられるそうで…」

「一瞬でもなった奴は普通…信用が一気に下がる。そんな奴に不動産を貸す訳にはいかん」

「そ、そんなぁ…」

「これは信用と風評の問題だ。荷物をまとめて…」

「横暴ニャ!!」


カラドボルグが猫形態に戻り、バローに飛び掛かろうとしたのでアユミが素早く胴を抑え込んだ


「なっ!? こ…こいつは…!」

「カラドボルグ! …わかりました、荷物をまとめて出ていくので1日待って下さい」

「待て! そこまでは言っていない!」

「…?」


アユミは首をかしげる


「その黒猫…アーティファクトか?」

「アーティファクト? カラドボルグはカラドボルグです」

「知らんか…まぁいい…ちょうどいい機会だ」


バローは独り言を言いながら、傍らから底の非常に浅い金属の箱を取り出し、開いて中を見せて

そのままアユミに持たせる。中には何も無いように見える


「その箱…何に見える?」

「え…何の変哲もない箱としか…」

「ニャ!? こ、この箱は…!」


カラドボルグは何故か箱を見て怯えているが、それに構わず


「…私バローはエターナルボックスの所有権をアユミに譲渡する!」


言い終わると、箱が眩い光を放ち…光が止むと、箱の形はそのままなのに

奥行きがあり得ないほど広がっており、顔を近づけてよく見ると

黒いモヤのような中に、鉄くず木くず生ゴミが大量に浮かんでいて底が見えない


「バローさん!? これは一体…」

「これは「エターナルボックス」という名のアーティファクトだ

試しに「鉄くず」の事を頭の中で考えながら手を入れてみな」


言われた通りにすると、さっき覗き込んだ時は遠くにあったのに

手を入れた瞬間に、鉄くずの触感が手に伝わり、そのまま掴み上げる事が出来た


「おお…!」

「その内枠に収まるなら、どんな物でも際限なく入る。所有権のある奴が近くで使わないと

機能を発揮せず、ただの箱になるがな…」

「す、すごい…!」


アユミは鉄くずを取り出し、また入れるを繰り返している

カラドボルグは相変わらず怯えている


「アユミ! 吾輩を入れるんじゃニャいぞ! 絶対ニャぞ!」

「この箱知ってるの?」

「200年くらい前…中に入れられたら出られなくなったのニャ…

もうあんニャ思いはしたくないニャ…」


所有権のある人によって中に放り込まれて放置される…

カラドボルグの事だから、おいたが過ぎてお仕置きの一環で入れられたのだろうが

さすがに可哀そうに思った


「この箱を知ってるってことは、やはりその猫はアーティファクトと呼ばれる奴だったな

大昔に作られたが、現在の技術で再現できない物の事をアーティファクトと言うのだ

もっとも、自我のある奴は俺も初めて見るが…っと、話が逸れたな


倉庫は使わせられないが、代わりにその箱をくれてやろう…剥き出しで使うと混乱を招くから

鞄とかを買って偽装した方がいいぞ」


「はい、ありがとうございます…でもどうしてこんな貴重なものを…」

「貴重で…強力なアーティファクトだから、時に奪い合いが起き、死者も出る…流れ流れて

俺の手元までやってきたが…俺ごときがこんな物を持ち続けていたら、遅かれ早かれ身を滅ぼす


かといって譲渡できるような相手も居なくてゴミ箱代わりにしていたが…

ちょうどアユミが居てよかったぜ」

「は、はぁ…」


「さ、倉庫の荷物をまとめにいってくれ」

「は、はい~」


それだけが理由の全てとは思えなかったが、心変わりされるのも嫌なので黙っておいた

アユミ達は倉庫に行って鍛冶道具をボックスの中に入れていく。金床が一瞬引っかかったが

縦にしたら入った。そして箱の重さが、入れる前と変わっていない…改めて凄さを実感する

ボックスは一旦置いておき、お金をもって鞄屋に向かった


***


カラドボルグは外で待ち、アユミが1人で鞄屋に入る


「いらっしゃ~いませぇ~♪ ようこそアダムのアトリエへ~♪

あら~可愛らしいお客様ねぇ~♪」

「ど、どうも…」


鞄屋の店主はオカマだった、アユミは手持ちのお金を提示して


「この予算内で買えるカバンを探しています」

「そうねぇ~これとこれかしら~?」


アダムが提示したのは肩掛け鞄と背負い鞄、どちらも子供用なのか小さ目で革で出来ている

アユミは内側を確認し、底が広くて「エターナルボックス」がちょうど嵌る背負い鞄の方を

選んで背負ってみた。体への負担は少なく、強度も充分だ


「では、これを買います」

「それは33000ゴールドになるけどい~い?」

「はい」


アユミは代金を支払い、アダムが満面の笑みで受け取る


「ありがとぉ~♪ そうそう…鞄の修繕もやってるからよろしくね~♪」

「はい、その時はお願いします」


店を出るアユミに手を振っていた、変わった人だけど悪い人ではなさそうに思った

カラドボルグと再び倉庫に来て「エターナルボックス」を鞄の底に仕込み

倉庫の鍵をバローに返した


「鍵をお返しします、ありがとうございました」

「おう、今後も買い取り自体はするからよろしくな…アーティファクトは勘弁だが」

「はい、わかりました」


***


冒険者ギルド内にある定食屋で肉野菜炒めを食べながらカラドボルグと会話する

先程から元気が無いようで気になっていた


「カラドボルグ…疲れてるの? 大丈夫? 一口食べる?」

「ニャ…精錬してくれれば餌はいいニャ…箱から出られなくなったトラウマが…」


大人しいカラドボルグも良いが、このままにしておくのは本意ではない


「安心して、僕は箱に入れたりしないから」

「本当ニャ!? イタズラしても良いニャ!?」


目を輝かせてアユミを見るカラドボルグはとても生き生きして見える

早まったか…と少し後悔


「うーん……うん、分かった。他の人にイタズラしちゃダメだけど

僕に対してはイタズラしていいよ」

「ニャフ…そう来たニャ…」


再び食べ始めると、カラドボルグはアユミの背にのしかかったり、髪の毛をクンクンしたり

頬をペロペロしたりしてきたが、あえてなされるがままにしていた


***


「な、なんだあの喋る猫は!? け、けしからん奴…!」

「そんな猫に抵抗しない…やはり痴女…」

「お前ら…さっさと声掛けないから猫に取られてるじゃねぇか…」

「そ…そんなんじゃねぇさ」

「まぁ…これで気にする必要は無くなったな、やっぱ仲間ってのは大事だよ」


***


そんな状態のまま、ワンダラの外へ野宿しにやってきた


「ねぇカラドボルグ…」

「何ニャ?」

「僕に対してはイタズラしてもいいけど…」


アユミは振り返りカラドボルグに抱きつき、全身を撫でまわす


「ブミャァッ!?」

「それで僕がイタズラしないなんて言ってないんだからね~!」


今回はカラドボルグが嫌がっても手を放さず、足を絡ませてゴロゴロと転がりまわる


「イタズラされる側の気持ちわかった~?」

「わ、わかったニャア~やめるのニャア…」

「…ダメ~♪ 僕が満足するまで離さな~い♪」

「ニャア!? 発情でもしてるニャ!?」

「それでもい~ん~」


思いっきり濃厚な口づけをした。閉経してても色々とたまる

ジェニファーとベスと裸のお付き合いをしたのが決定打となっていた


「んふ…カラドボルグ…可愛い…なぁ…」


柔らかいカラドボルグを抱き枕にし、そのまま寝てしまった


「まーったく、しょーがニャい主人だニャ…」


***


「やれやれ…やっとゴミ箱の処理ができた…あいつに押し付けときゃ大丈夫だろう…っと

いらっしゃ…なんだスーザンか」

「お父さん、何だとは何よ~…もう少し愛想よくしても…」

「お前は少しは疑うことを覚えた方が良い…でないと今日のように悪人に利用されるぞ」

「うっ…もう知ってるのね」

「もちろんだ…アユミに感謝しろよ?」


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