表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/88

13話 現実を知る

「クォラ! 何をしてやがる!」


冒険者ギルドの裏路地にて、チャラ男がアユミの体を抱き上げ

今まさに一つになろうとしていたのをスキンヘッドの大男が見咎め

大声で怒鳴る


「ギルマス!? い、いやぁ~入団審査をしていたんですよ~」

「入れさせてくれたら入れてあげると言われて」

「君ィ!?」

「馬鹿野郎! ギルドを汚すんじゃねぇ! ヤるならよそでヤれ!」

「ヒィ! スンマセンッシター!!」


チャラ男はズボンを上げて一目散に逃げだした

そしてギルマスと呼ばれた大男は腕を組み

恐ろしい形相でアユミを見下ろした


「お前もお前だ! 何色仕掛けで入ろうとしてやがる!」

「だ…だって…服どころか自分の体すら盗品と言われてどうすればいいのか…」


アユミはさめざめと泣きだした。大男は頭をかきながら反省の弁を述べ

後からやってきた男性職員を問いただす


「言い過ぎたよ、悪かった…おいリューツ! 服すら無いなら最初からそう言え!」

「そんな事を言ったら、貴方は彼女に服を与えようとするでしょう?

ギルドマスターなんですから、特別な誰かをエコ贔屓するのはよくないと

前々から申し上げているのに…」

「クッ…ならばリューツ! お前がこいつに与えるなら問題なかろう…

早く服を持ってこい!」

「わかりました…持ってきます」


リューツと呼ばれた男性職員は肩をすくめ、ギルド内部へ入っていった

持ってくるまでの間、アユミは涙をぬぐってギルドマスターと話をする


「俺の名はギュスターヴ、冒険者ギルドのギルドマスターをやっている男だ

…お前さんの名は?」

「アユミ…と言います」


「アユミ…今からでも接客業の方へ行くのを考えてみる気はないか?

アユミの容姿なら引く手あまただと思うんだが…ギルドマスターの俺が

言うのも変だが、多分冒険者に向いていない」

「いえ…僕は知らない人とコミュニケーションを取るのが苦手で…

薬草採取依頼で細々と生活していこうかと」


「ふむ…どんな草が薬草かわかるのか?」

「いえ、まだ…植物図鑑とか見られますか?」

「その位なら良いが…覚えられるのか?」

「物覚えは良い方なので」


「ギルドマスター、服を持ってきました」

「おう…ってそれだけってお前…」

「まだ彼女を信用したわけではありませんし、この位で十分でしょう」

「はい、十分です、ありがとうございます」


そう言うとアユミは白いワイシャツを受け取って着た

成人男性用でありブカブカであるので、腕まくりをした


「よし、中に戻るぞ」


***


どよめいていた客達も静かになっていた

3人は受付カウンターにて話を続ける


「改めて、入団審査を続けるぞ…自身がカウンターの上に乗るまで

黄色く光り続けるようなケースは、奴隷落ちした場合で

主人が所有権を放棄していない事を意味する。リューツも覚えておけ

その主…ひょっとして魔族じゃなかったか?」

「はい、その通りです」


水晶が青く光った


「人間にとって魔族は敵対種族だから人権は無視して良い事になっている

アユミは今この時をもって奴隷ではなくなった」

「わかりました」


ギュスターヴがそう言うとリューツはカウンター下から木の札を取り出して

アユミに差し出した


「ではこれが冒険者ギルドに所属している証となります」

「お、おい…それは前科持ちに渡すやつ…」

「どんな事情があろうと前科持ちに違いありません

例外を認めたら私の首が飛びます」

「ぬぅ…規約を改定する必要があるか…悪いが今は我慢してくれ」

「はい」

「前科持ちにはしばらくの間ギルド職員がついていき、依頼遂行を見守る決まりです

今日は夜遅いので、明日紹介します」

「わかりました」


「じゃ、さっき言った植物図鑑を見ていくか?」

「はい、ぜひ」


***


建物2階にやってきた。上がって右手側に大きめの倉庫部屋、左手側に「資料室」、

「ギルドマスター部屋」と並んである。植物図鑑は資料室にあるそうだ

室内には管理する為か、別の男性職員が1人いて、ギュスターヴに一礼した

ギュスターヴは本を1冊取り出すと、薬草のページを開いて本ごと渡してきた


「ほれ、これが薬草だ。根っこは取らずに地上に出ている部分だけを刈り取るんだ

そうしたらまた生えてくるからな」

「わかりました…他のページを見ても良いですか?」

「別にいいが今日は遅…お、おいおい…」


アユミは1秒に1ページの速度でパラパラと見ていき、程なく全てのページを見終えた

食べられる草花、毒草、キノコなどの情報が頭の中に書き込まれていく


「見終わりました。ありがとうございます」

「こんな読み方で…頭の中に入ったってのか?」

「はい」

「…ま、まぁまた見たくなったら職員に頼めばいいからな」

「わかりました」


「ところで…寝床はどうするつもりだ?」

「この街にたどり着くまでずっと野宿でしたし、また野宿しますよ」

「そ、そうか…気を付けてな」


***


ギルドを出て、入ってきた街門とは反対方向にある街門…北門から街の外に出て

北西へ歩き、森の中に入り、ワイシャツを脱いで木の札と共に木の上に隠して

「透明化」を使った…次の瞬間


「なっ…どこへ消えた!?」


急に背後から声が聞こえたので振り返ると、先ほど合体しようとしていた

チャラ男の姿が見えた


「バレたか…やっべ!」


チャラ男は走って街まで引き返していった。アユミも透明になったまま追いかける

チャラ男は何度か振り返り、その度に走るペースが遅くなっていった

北門までたどり着くと


「追ってこないか…ふぅ」


あの時同様のヘラヘラした態度に戻った。どうやら「透明化」能力自体は

わからなかったらしい、だが様子が気になったのでさらに後をつけてみると

…娼館に入っていった


「本日はどの娘をご指名なされますか?」

「そーだなぁ…ミッちゃんいる?」

「申し訳ありません、只今先客の相手をしておりまして」

「そーかぁ…じゃ、空いてる一番若い娘を頼むわー」

「かしこまりました」


そしてチャラ男は奥へと消えていった、これ以上は追わなくてもいいだろう

恐らくは、アユミの寝込みを襲おうとしたのかもしれない

もっと注意して「透明化」を使うように心にとどめ

元の木の位置まで戻り、透明のまま眠った


「前途多難だ…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ