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11話 脱走完了

夜、食料を食べながら脳内地図を確認する

先ほどの塹壕から海沿いに東へ行くと「ジス」という人間側の城塞都市がある

さらに東へ行くと首都の「エンゼ」があるが、今は関係ない

アユミの気になっていたのは人間領中央…ここから北東にある

「ワンダラ」という町である


「冒険者ギルドに協力要請…?」


見た地図にメモと印があった。ワンダラには「冒険者ギルド」という施設が

あるらしい。戦場からの要請だから傭兵事務所か何かかもしれないが

なんだろうこのワクワクするような名称は


「ワンダラの冒険者ギルド…行ってみようか」


人間領に着いた以上、もう盗みをするわけにはいかない

手に職をつける為にも街にたどり着く必要がある

ワンダラの方がジスより遠かったが、食料はギリギリ足りる


***


ひと眠りした後、最後の食糧を食べながら北東へ向かう

途中から馬車が通るような道が見えてきた。方角は合っているようだ

しかし、木陰で待ち受ける盗賊っぽい獣人も見かけたので

そこだけ迂回した


「着いた…!」


夕方、街門が見えてきた。守衛の姿も見える

適当な茂みの中で「透明化」を解いて服を取り出す

ブカブカの黄色いシャツとズボンと外套…あの盗人獣人のだから臭いが仕方ない


「どこから来たか質問されたら…どうしようかな」


悩んだ結果、「誘拐されて命からがら逃げだしてきた」で

通すことにした。親というか保護者がいないが…あの島の様子だと

魔族にさらわれて奴隷落ちするケースもあり得るように思えた

何より腹が減った。宝石も換金したいし…守衛が鬼じゃないことを

祈るアユミであった


***


「こ…こんにちは…」


すごく怯えた感じで守衛に話しかけてしまった

相手はこの世界に来てまともな会話をする人間第一号である


「む? 君1人か?」

「は、はひっ! その…誘拐されて逃げてきて…」

「またか…最近盗賊団が活発でね…運が良かったのだろう

入れてあげるから、早く親御さんの所へ行きなさい」

「はい…ありがとうございます」


10歳女児の容姿も相まってか、すんなり入場許可が下りた

全くの嘘というわけではないが、なんだか申し訳なく思った

しかし、この街で暮らすことを考えた時、正規の手段で入場することは

絶対必要なことであると考えていた。門を通過した後、早歩きで離れ

古物商を探して宝石を換金しようと行動を始めた


***


「悪いけど、5000ゴールドでしか買わないよ」

「…じゃあ、それで」


ウサギ獣人の店主に手持ちの中で一番大きな宝石を提示した所、保証書が無いので半額

自分の身分を証明するものが無いのでさらに10分の1になった

島でのやり取りで、レートは大体1円が1ゴールドだと分かっていたが文句は言えない

こんな所に宝石持ち込む時点で盗んだ物だと言っているようなもの…

加えてこの服装である。買い取ってくれただけでも感謝しなければならない


「お客さん…お節介かもしれんが…カタギに就かんと破滅するぞ…」

「はい、これから冒険者ギルドに行って働きたいと思っています」

「ふん…せいぜい頑張りな…世間知らずが」


得たお金で露天商を見て回り、食べたい物を2500ゴールド分腹いっぱい買って食べた

そして、あらゆる覚悟を決め…冒険者ギルドにたどり着いた

日の入りにより、徐々に暗くなりはじめていた



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