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【第1話】一歳の誕生日

「おはよう、ユーリャ。よく眠れた?」

「あい!」

 私の部屋に来たお母様に聞かれて、ご機嫌に答えた。

 私は一年前、エルフの国「フォーレ王国」の第一王女として生を受けた。名前はユーリャ・フォーレ。種族はエルフだ。

 そして今日は、私の一歳の誕生日!

 生まれてからこれまで、二人のお兄様たちと一緒にお父様とお母様に育てられてきた。王族や貴族の子どもは乳母が育て、実の親との関わりはほとんどないのが一般的らしい。だが、うちのお父様とお母様は一日に一回以上会いに来てくれる。とても嬉しい。

 ところで、なぜ一歳の私が大人みたいな考え方ができるのかって? それはね、前世の人格を持って生まれてきたから。前世の人格があっても、前世の記憶はほとんどないんだけどね。気を抜いたら赤ちゃんっぽくない言動をしてしまいそうでいつもヒヤヒヤしています。

 まあ、そんなこんなで早くも一歳。今日は私の誕生日パーティーがあるそうです。

「ふふ。それではレノア、アルーツィ。ユーリャの準備をよろしくね。先に居間で待っているわ」

 そう言ってお母様は部屋から出て行った。

 レノアとアルーツィというのは、私専属侍女のこと。レノアはエルフ、アルーツィは竜人だ。私は、とても優秀な二人のことを信頼している。

「ユーリャ様、朝の支度をしましょうね」

「あー! よろくー!」

 そうして私は鏡の前に移動した。

 しかし、毎日見ても美幼女だな。鏡に映る自分を見ていつも思う。白銀の髪に空色の瞳、将来美しく育つと約束されたように整った顔立ち。我ながら成長するのがこわいよ。なんちゃって。

 そんなことを考えていたら準備が完了していた。

「ユーリャ様、いかがでしょうか?」

「かーぺき! あーとー!」

 にっこり笑って私は答えた。

 レノアとアルーツィはテキパキと空色のワンピースに着替えさせて髪を綺麗にまとめてくれた。このワンピースは腰のところに大きな白いリボンがついていてかわいい。

「では、居間に行きましょうか」

「あーい!」

 居間で何するのかな? もしかして、今日の予定について教えてもらうとか? でもそれならレノアとアルーツィが教えてくれるか。

 私はレノアに抱っこされて居間に行った。

「ユーリャ様をお連れしました」

「国王陛下方がお待ちです。どうぞお入りください」

 アルーツィと近衛兵でそんなやりとりがあり、扉は開けられた。そこにいたのはお父様とお母様、お兄様たちだった。しかも、豪華なご飯が並べられていた。

 それを見て、朝ご飯をまだ食べていなかったことに気づいた。誕生日だから浮かれていたかな?

 っていうか、もしかして家族で一緒にご飯食べられるの?

 普段は、一人で食事をすることがほとんど。家族でご飯食べたことあったかな? っていうぐらい滅多にない。お父様とお母様は公務があるし、お兄様たちには勉強がある。私の生活リズムに合わせていたらその時間が減ってしまうよね。まあそうだよねって割り切っていた。

「ユーリャ? もしかして、私たちと一緒に朝食を食べるのは嫌かい?」

 あまりに衝撃的でちょっと動けなくなっていたら、お父様が悲しそうな顔で聞いてきた。

 だからとっさに言ってしまった。

「ちがいます! 一緒にご飯食べたいです!」

「「「………………」」」

 あぁー! やってしまった! 自分がまだ上手く言葉を話せない一歳児だってこと頭から抜けてた!

 え⁈ どうしよう⁈ どうしよう⁈

 変だって思われて嫌われたり……しないよね⁈

 するとお父様は側近のラソノーヴァさんを呼んで人払いを頼んだ。

「ユーリャ」

 そして、真剣な顔をしたお父様が私を抱っこした。

「ユーリャ、もしかして前世の記憶とかないかい?」

「え?」

「ーーは、母上。ユーリャって前世の記憶があるの⁈」

「そうかもしれない、としか言えないわ」

「それってもしかして……」

 お母様たちがそんな会話をしているのが聞こえた。よし、現実に戻ろう。これも現実だけど。

 こほん。

 お父様、おしい! 前世の記憶じゃなくて前世の人格なら持っています!

 なんて言えるはずがなかった。

「おっと、当たりだったかな?」

「な、なんで分かるんですか⁈」

 もしかしてお父様って心が読めるの⁈

「はは、かかったね」

「……?」

「鎌をかけたんだよ。半信半疑だったから」

 ある意味心を読まれた⁈ けど、さすがのお父様にも詳細まではわからないらしい。ちょっとホッとした。

「おや? まだ何か隠しているのかい?」

 やっぱり心を読めるの⁈ お父様の前では隠しても隠れない気がしてきた。…………よし、隠すの諦めよう!

「…………厳密に言うと、前世の記憶はないです。前世の人格を持っているだけで……」

「そうか」

 それから、難しい顔をしてお父様は黙り込んでしまった。

 そして五分ぐらい経った時、お父様は話し出した。

「……ユーリャ。それは神からのギフトだ」

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