歪
歪んだモノほど人は魅力を感じてしまう。
どれだけ恐ろしくても、目を瞑りたくなっても、それは人にとって心の平安を皆殺しにするのだ。
神秘的で遠い場所にある気がして、
どうせ世界なんて面白くないのだと脳みそに気付かせてくれる。
これは、とある悪魔のお話。
名前の無い悪魔のお話である。
ある日暗闇に向かって一心不乱に走っていると、
いつの間にか帰るべき方向が分からなくなってしまったんだ。
元いた場所が恋しくもあり、少し寂しくもあり、仕方なくそのまま暗闇へと向かっていった。
その先に何があるのか興味があったからだ。
気がつくと帰る方向すら分からなくなって、自分の声も届かない深い場所に留まっていた。
すると闇の中から大きな顔が現れて、パクッと体ごと食べられてしまった。
光もない、匂いもしない、音も聞こえないその場所で、悪魔は一つ願ったのだ。
「 夢が覚めたら、どうか名前を下さい。 」
悪魔が怪物のお腹の中をしばらく彷徨っていると、ふと気がついた。
そこは怪物の腑では無い。そこは自分の心の中だったのだ。
なんて暗い。深い。恐ろしい。
そんな空虚な“心”の中をずっと悪魔は見て回っていた。
そう気がつくと、一つ灯を灯そうと決めた。心の中なのだから想像するだけで灯火が現れる。
暗闇の中に一滴の炎が誕生した。
それは弱々しく静寂な炎で、それもまた心なのかも知れない。
炎に照らされて、真っ暗だった視界に世界の全容が映った。
悪魔は理解した。暗いのは心だけで、そこはしっかりとした場所だった。
目の前に鏡が置いてあり、自分の姿が映っていた。炎の光に照らされた悪魔がそこに存在していたのだ。
その容姿は誰もが目を背けたくなるような歪な見た目をしていた。
まるで人とは違う恐ろしい見た目をしていた。
そして悪魔は自分の容姿を見て誇らしく思った。
アイデンティティを見出し、自身の恐ろしさを美として賛美した。
なんて素晴らしい見た目だろう。
こんなにも気持ちが高ぶったのは生まれて初めてな気がした。
しかし悪魔はそこで目が覚めた。
そこには、普通の家のベットで横になっていた1人の人間がいた。そう、これまでの出来事は全て夢だったのだ。
そして人間は朝シャワーを浴びる為に洗面台へと向かった。そこで自分を鏡に映してこう言うのだった。
「 つまらない。 」
人間はまた、いつも通りの日常へと戻っていくのだった。
最後まで読んでいただき、
誠にありがとうございました。
今後とも、
この作品を完結まで描き続ける所存であります。
もし少しでも良いと感じられましたら、ブックマークやコメントなどお待ちしております。
また、アドバイスやご指示等ございましたら、そちらも全て拝見させて頂きたく思います。




