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転生者は何をするもの?

「シグルド、大丈夫ですか? 眠くなったんですか?」


ティナの発言に一気に疲れが襲ってきたようにソファーにぐったりと凭れるとティナは、心配そうに背中をさすりながら言ってきた。


……何でレティシアの姿なんだとさえ思う。


冤罪で捕えられてから、初めて優しくされた気がする。

あの場で誰も処刑を止めようとする者はいなかった。

こんな国のために、戦いに出た自分が滑稽にさえ思えていた。


「お前……優しいな」

「普通ですよ」

「……転生者というのはなんだ?」

「……生まれ変わり? みたいなものですかね。そして、私は異世界からの転生者ですね!」

「異世界?」

「はい! 日本というところで若くして病死しました。だから今度こそは悔いが残らないように食い倒れをしようと思って……!」


わけのわからないワードが出てきた。

日本? とはなんだ。

そして食い倒れから離れろ。


「転生者とは何をするものなんだ?」

「……何も。転生しただけです。慎ましく一人で生きていたんですけど……私は村人Aみたいな感じですかね。NPCみたいなやつです」


NPCってなんだろうか……。さっぱりわからない!

しかも、村人Aって……。 


よくわからないがティナが言うには、この世界に生まれ変わり、1ヶ月前に病気で余命を伝えられた時に突然転生したことを思い出したらしい。


「シグルドは処刑された勇者様ですよね? ……どうやって生きていたんですか?」


そんなこと全く知らん。

俺が知りたい。


「よくわからんが、死んでなかった。傷もすぐに治るし……」

「……さっきの斬られたところは?」

「もうふさがっていると思う」


背中を見せると、確かにもう傷はなかった。


「……レティシアの行き先に心当たりはないのか?」

「ほとんど会話しませんでしたから……」


逃げたということは、とりあえずは大丈夫なのだろう。

もしかしたら教会に逃げたのかもしれない。


それにしても頭がおかしくなりそうだ。

身体はわけがわからんし、レティシアとティナは入れ替わっている。

そのティナは転生者というやつらしいし……。


「シグルド……これからどうするんですか? 私はどうしましょう。この身体じゃすぐにショーン王子に捕まるかもしれませんし……」


レティシアとティナが入れ替わっているなんて誰も信じないだろう。

ティナを一人で出すのは心配だし、ショーンにやるのはしゃくにさわる。


それに早くショーンを殺したいと思っているが、ただ殺すのはつまらない。

かといって、俺は策略家ではないからどうするか。

……一晩中起きているせいか、もう朝で眠い。

窓からは少しずつ日の光が差し始めていた。


「……俺は少し寝る。お前はしばらく一緒にいろ」

「私も寝たいんですけど、どこで寝たらいいですか?」

「ベッドは一つしかない。寝たいなら一緒に来い」

「えっ、嫌です。私はレティシア様じゃありませんし……レティシア様とは恋人でしたか」

「そんなわけないだろ。レティシアは仲間だ。レティシアにそんな感情はない」

「そうでしたか。でも一緒のベッドは嫌ですね」


ティナは顔をひきつらせながら、少しずつ離れて行っている。


「いいから来い」

「えっ! ちょっと待って下さいよ! ヤダ!」


嫌がるティナを脇に抱え上げるとティナは足をバタバタさせて抵抗していた。

そのままベッドに降ろし逃げようとするティナを、逃げられないように抑え両腕で抱き締めて眠りにつこうとした。


「……シグルド……身体が冷たいですよ……そして、離して下さい!」

「ティナが温かいからこのままがいい」


レティシアの身体のティナは温かく、この死なない自分の身体が、人肌が恋しかったのではと思ってしまう。


そして、「離して!」とうるさいくらい叫ぶティナを無視して眠りについた。





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