限界
「絶対に許さない!!」
レティシアもどきのベロニカは、息も切れ切れなのに身体中から魔力が溢れ出した。
俺が嫌いだと言ったからか、ティナとキスをしたからか、見るからに怒りに満ちている。
「……っシグルド……」
「ティナ、大丈夫だ。そして身体は諦めろ」
「……寿命が無くなるのは私だったはずですよ……」
「今は違う……」
しかし、このまま引き裂くことも出来そうだが、身体はティナの物だ。
引き裂くことに躊躇してしまう。
考えている間にレティシアもどきのベロニカは、魔力を集めるように魔法弾を特大級にしている。
それが、レティシアもどきのベロニカの頭の上に球体に形作っていた。
「二人とも許さないからね!!」
レティシアもどきのベロニカがそう言い、魔法弾を放つ準備が整った所で、レティシアもどきのベロニカが足元から一気に凍り始めた
「……っな、なに!?」
レティシアもどきのベロニカが目を反らし、足元に集中した時に、すかさず頭上の魔法弾を魔法攻撃すると、一気に相殺されたように弾けとんだ。
寿命が短いティナの身体のせいか、明らかに弱くなっていた。
「キャアアアア……ッ!?」
そして、限界がきたのかレティシアもどきのベロニカは吐血した。
もう、身体は限界だったのだろう。
「何事ですか? シグルド様」
凍らせたのはやはりヴィルヘルムだった。
「……っヴィ、ヴィルヘルム!?」
「誰ですか? この女は?」
レティシアもどきのベロニカは、ヴィルヘルムのことも知っていた。
明らかにヴィルヘルムの姿に、驚愕している。
「ティナの身体だ」
「ヴィルヘルムさん! 私の身体が見つかったんですよ!」
「はぁ……」
ヴィルヘルムは、身体が見つかったのに何をしているのか、不思議がっていた。
「ヴィルヘルム、ティナの身体にはレティシアが入れ替わっているが、元々レティシアの身体は魔女ベロニカという奴が入れ替わっているらしいぞ」
「ベロニカが?」
ヴィルヘルムは魔女ベロニカを知っているようだった。
そして、凄く嫌そうな顔になった。
「知っているのか?」
「不死王様の追っかけですかね? しつこい女でしたよ」
「だ、誰が追っかけよ!?」
追っかけって……一言で言えばストーカーか。
「ティナの身体みたいですが、吐血していますよ? 戻らない方がいいんじゃないですか?」
「ヴィルヘルムさんまで……」
ヴィルヘルムも身体を戻らせるつもりはないようで、レティシアもどきのベロニカをゆっくり足元から凍らせたままだった。
そして、少しずつ体幹へと氷付けになっている。
「ヴィルヘルム……そのまま凍らせてくれ。ティナの身体を引き裂きたくない」
「畏まりました」
「嫌よ!! やめてーー!! ……っう!! ……このポンコツのせいでもう魔法が出ないのよ!?」
レティシアもどきのベロニカはもう逃げる術も力もなく、吐血しながら叫んでいた。
そしてヴィルヘルムは、足元からそのまま凍らせていった。
「……っシグルド、レティシア様が……!」
「あれはレティシアじゃない。ティナは見なくていいから」
「イヤァーーーー!!」
ティナの顔を胸板に押し付けるようにして、自分の身体が死ぬところを見せないようにした。
ティナは震えていた。
氷山の一角のように氷付けになったティナの身体は、置物のように動かなくなった。
「私……ずっとこのままですよ」
「ティナが生きている方がいい」
抱擁している腕の中で、泣いているティナにゆっくりとそう言った。




