ティナ視点
踊り子達が、そろそろ踊りを終わる頃、お酌に回っていた私も一緒に下がろうとすると、大きな声でショーン王子に呼び止められるように止められた。
「そこのピンク髪の娘! 私のところには酌に来てないぞ!」
顔はベールで隠していたがピンクの髪はそのままで隠してなかった。
それが、どうやら目立ったようでショーン王子の目に留まってしまった。
レティシア様の身体だから、バレないようにわざと近寄らなかったのに!
「お、畏れ多いですわ……ホホホッ」
「ん……? なんだ? 全く聞こえんぞ?」
ご機嫌のショーン王子には私の小さく言った声は聞こえなかった。
近づきたくない! 本当に近づきたくない!
ジリジリと酒の瓶を持ったまま下がっていると、後ろから観客の一人に捕まってしまった。
「まあまあ、ショーン王子にお酌を一つ……」
気を効かしたつもりなのか、私を捕まえた男は笑顔でショーン王子の前に私を差し出した。
余計なことをしないで欲しい。
「顔を見せろ」
「……下っぱは、顔を出してはいけない決まりでして……」
苦しい言い訳をしながら、ショーン王子の持っているグラスにトプトプとお酒をついだ。
「ねえ様達をお待たせしてはいけませんので、どうぞこれでお許し下さい」
事前に踊り子達と入る時に、私は下っぱの設定だから、踊り子達のことは、「ねえ様」と呼ぶこと、と言われていたのが役にたった。
おかげで、自然に「ねえ様」と口からでた。
踊り子達はもう皆下がり、打ち合わせ通りにクリストファー様が準備した部屋に避難しているだろう。
部屋がすぐに分かるように、避難する部屋の前には一際大きな花瓶を目印に置いているはずだ。
私もすぐに下がりたい!
それなのに、ショーン王子はくどくどとお喋りをしてくる。
「恥ずかしがらずにもっと近くに来い」
踊り子達にご機嫌になってしまったショーン王子は、私の腕を掴んで来た。
「きゃあ! 止めて下さい!」
お前は悪徳お代官か!?
時代劇じゃないんですよ!
そう思っても、ショーン王子は離してくれない。
そして、床から冷気が染み出すように、段々と空気が冷えてきた。
身体に感じるほどの冷気が染み出ている。
ショーン王子達はお酒を飲んでご機嫌だからか、まだわからないようだが、お腹が露になっている踊り子の服の私は寒い!
鳥肌が立ってきていた。
そして、段々と冷たくなっている私に、私の腕を掴んでいるショーンがやっと気付いた。
「どうした……? 冷たいぞ……? 温めてやろう」
「いやっ!」
これ以上触られたくなくて、ショーン王子をひっぱたいて拒むと、ショーン王子はプライドを傷つけられたのか、ご機嫌な顔から怒った顔になった。
「何をする!」
「止めて下さい!」
さっきまで、小さな声で話していたが、大きな声を出すとショーン王子は少しだけ気付いた。
ハッとした顔で、私の顔を見て思い出そうとしている。
「その声……どこかで……」
しまった!? バレた!!
そう思った瞬間に床が爆発し、氷の塊が縦横無尽に現れた。
その場にいたものは、皆驚き叫んだ。
そして、床から湧き出た氷を見たものは恐怖した。
氷のなかには、死体が閉じ込められている。
混乱が起きて、腰を抜かす者もいれば、おぼつかない足で逃げようとする者など、宴とは一転した騒ぎになっていた。
「ヒィッ……!?」
「し、死体!?」
この混乱に乗じてでも早く逃げないと!
急いで立ち上がろうとすると、ショーン王子が逃がさないとでも言うようにまた掴まえて来た。
「女! 貴様驚いてないな!?」
「離して!」
「ロニー! この女を連れて行け!!」
「イヤァ!!」
「……………………………………」
連れて行かれたくなくて叫ぶと、ショーン王子は無言だった。
「あの……」
ショーン王子はキョロキョロしている。
「ロッ…ロニーはどこだ!?」
「知りません!」
私がショーン王子のいうロニーって人を知っているわけがないでしょう!!
「ロニーーー!?」
ショーン王子はロニーと雄叫びのように叫んでいた。




