掌握 3
コンコン━━━━。
バリィを掌握しようと来たはずが、まさかこの邸に俺に冤罪の片棒を担いだ男がいたとは。
やつを捕らえ処刑に関わった者を吐かすつもりが、予定外の対面ができることに気分が高揚していた。
高揚する気持ちで、トラヴィスがいる部屋の扉をノックし、ゆっくり開けるとトラヴィスはベッドに片膝を立てて偉そうに座り込んでいた。
今から、呼び出したメイドとあれやこれやとお楽しみだったのだろう。
だが、お楽しみなのはトラヴィスだけで、メイドは泣くほど迷惑だ。
「遅いぞ! どれだけ待たせるんだ!」
「それは悪かった。随分待たせたようだな」
部屋にやって来たのがメイドではなく、男だと分かりトラヴィスは慌て出した。
暗がりで扉の前はまだハッキリ見えない。
姿を見せてやろうと、閉じられたカーテンを一気に炎の魔法で燃やすと、外の夕焼けの光が一気に差し込んで来た。
「……っ誰だ!?」
トラヴィスは慌ててナイトテーブルの剣を持ちベッドから飛び降りた。
「つれないな……もう忘れたのか? お前が片棒を担いで処刑に追いやったのに」
「……っシグルド!?」
「メイドは来ないぞ。お前が嫌だとさ。お前が下手くそなんじゃないか?」
俺が来た為か、トラヴィスは歯ぎしりしながら、焦り怒りの顔になった。
下手くそと言われて、プライドが傷ついたのかもしれない。
「もう一度殺してやるっ!」
「斬りつけても構わんぞ」
トラヴィスは叫びながら斬りつけてきた。
斬られれば、不死身の俺でも血はでる。
剣で斬られた所から霧のように血が飛び散った。
トラヴィスは呟くように、やった……っ、と安堵の表情になった。
「残念。死なないんだ」
斬りつけ近付いて来たトラヴィスの首根っこを掴み、頭を引き寄せ、耳打ちするようにそう言った。
そして、トラヴィスの剣を力任せに取り上げ、トラヴィスを突き飛ばすと、俺が処刑された時と同じように心臓を貫いてやった。
「……っ!? なんで……!?」
トラヴィスは、床にそのまま勢いよく音を立てて倒れた。
「お前らが、俺の人間の心臓を貫いたから魔族の心臓が覚醒したらしいぞ。自業自得だな……」
トラヴィスの身体は、自身の血が流れ水溜まりのようになりその上に横たわっていた。
「……もう聞こえんか……話しをする暇もなかったな」
トラヴィスを部屋に転がしたまま、廊下に出ると、案内して来たメイドがいない。
ぐるりと廊下を見渡すと、外から扉の開いた音を聞き逃すことはなかった。
「廊下に立っていろと言ったのに……」
俺が恐ろしくて逃げるのか、殺される心当たりがあるのか……どちらにせよ見逃す気はなかった。
そのまま二階の窓をぶち破り、走り去ろうとしていたメイドの前に飛び出るように降り立った。
「ひっ……!」
「俺は立っていろ、と言ったぞ。ここは廊下か?」
メイドは震える足を止め、怯えながら睨んだ。
「……ひ、人殺しっ! すぐにバリィ公爵様の私兵が来るわっ! あんたなんか処刑されたままで良かったのよっ!」
「……処刑に賛同したんだな……」
このメイドも、バリィの味方だ。
処刑にも賛同し、署名をしたんだろう。
バリィへ忠誠を誓っているなら、やはり見逃せない。
「バリィの邸の警備が来ないことに不審はなかったのか? もう私兵は来ないぞ」
「…………っ!!」
この邸に来る前にヴィルヘルムとバリィ公爵の敷地内にある私兵の詰所はすでに抑えていた。
私兵の詰所の中は死体しかない。
バリィの私兵ということで街では評判も悪く、横柄な態度だったと調べはついていた。
処刑される前にも、あまりの街人への態度に俺と揉めたこともあった。
バリィの私兵というだけでどれほど偉いのか。
そんな私兵に助けを求めてどうなる。
そしてそのまま、トラヴィスと同じようにメイドの心臓も貫いた。
地面に倒れたメイドを見ると、トラヴィスで試そうと思っていたネクロマンサーの力を試そうと考えた。
力の使い方を教えてもらったわけではないが、何となくわかる。
ネクロマンサーの能力も魔力がいるはずだ。
魔力を集中して、操り糸を繋ぐイメージでメイドの死体を動かそうとした。
案の定使い方に間違いはなく、メイドは起き上がった。
ヴィルヘルムの言うとおり、俺にはネクロマンサーの能力があった。
父親からの能力の譲渡は間違いなく行われていたのだ。




