ヴィルヘルムの心臓
森の隠れ家に帰ると、ティナは食い倒れツアーのチケットが売られたことに落ち込みながらも、パンを3つ平らげ寝てしまった。
「シグルド様、ティナは可愛いですね」
「姿はレティシアのものだ」
ヴィルヘルムに、ティナの寝顔を見せると寝込みを襲いそうな気がしてきた。
さっさと外に出よう。
ティナの寝顔を見せるのがおしい気がしてきた。
「ヴィルヘルム! 外に出るぞ。話がある」
「はい、畏まりました」
隠れ家の外に、ヴィルヘルムと出ると早速気になっていたことを聞くことにした。
「ヴィルヘルム、本当に俺がヴィルヘルムの主なのか?」
「えぇ、本当です。不死王様がいない今、俺の主はシグルド様唯一人です。唯一無二の主ですよ」
「息子だと言うだけで何故主なんだ?」
「不死王様はご自分の力をシグルド様に譲渡したと話しましたでしょう?」
「だから、何故力を譲渡したら俺がヴィルヘルムの主なんだ?」
不死王の力があるだけで人間と魔族のハーフの俺がヴィルヘルムの主になるとは思えなかった。
「……まぁ、ティナも寝ていますから見せてあげますよ」
ヴィルヘルムは服を広げ、胸を露にすると自分自身の胸に尖らせた爪を突き刺した。
まるで、開き戸を開くように胸を広げ心臓を見せると、そこには何かの術陣があった。
「俺は不死王様に心臓を捧げました。命ある限り不死王様に仕えると。そして不死王様と契約をしました。この心臓に浮かぶ術陣がその証です。」
確かに胸を開き心臓を見せられるとティナは卒倒しそうだ。
「俺は元々人間に混じって暮らしていた下級魔族です。吸血鬼ですが、吸血鬼の中でも下級でした。それを不死王様が小間使いとして召してくれたのです。俺が弱いからと不死王様は力も分けて下さりました。シグルド様ほどではありませんが、おかげですぐに傷も治ります。まぁ、元々吸血鬼ですからね。血を頂いたら傷はすぐに治りますが……不死王様のおかげで今は下級ではなくなりましたよ」
そう流暢に話すヴィルヘルムの開いた胸は俺の身体のように瞬く間に元に戻っていった。
「……ヴィルヘルム……俺はエンディスの城を落とすぞ。俺を冤罪で処刑したショーンは許せない。ヴィルヘルムは手伝えるのか?」
「勿論です。何なりとご命令下さい。そして、報酬も下さい。」
報酬も要求されて図々しいと思うが協力者には報酬は必要だ。
無報酬だと裏切るかもしれない。
ヴィルヘルムは術陣があるから裏切りはないだろうが、それでも報酬があれば、無報酬よりもやる気になるだろう。
「……何が欲しい? ティナはダメだぞ」
「では、生娘を下さい。エンディスの城を落とすなら城の生娘を」
「いいだろう。エンディスの城を落としたら、城の女はヴィルヘルムにやろう」
「俄然やる気が出てきましたよ」
ニヤリと悪魔のような笑みのヴィルヘルムに、こいつなら役に立つだろうと確信するように思った。




