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ネフィルの思惑

最近またモチベ低迷期に入りつつある……

なんとか完結まで持っていきたいところです。

頑張ります。


大魔王。

各地に散らばる魔王達。

竜族。

人間。

魔人。

精霊。

天族。



それぞれの思惑が、水面下で動き出している。

今はまだ、読み合いってところかしら。

……恐らく、スタンピートを皮切りに、全ての勢力が一斉に動き出す。


ベルク山にある魔断石が、一体何を意味するのか。

地龍がそれを知らないはずがない。

だからこそ、地龍は頑なにあの山に鎮座し続けた。

そして、そんな地龍が不用意にベルク山を留守にするとは考え難い。

そこには確実に、何かしらの思惑がある。



……私はどう動くのが正解かしら。

本当なら、アイラには一刻も早くメリーズを去って欲しい。

でも、本人はきっとそれを望まない。

そもそも、メリーズから逃げることでさえ、一時的な先延ばしにしかならない。

空間魔法を継承させてしまった以上、アイラが魔王達の標的にされることは明白なのだから。

いずれ復活するであろう大魔王が、自身を再び封印する恐れのある人間を野放しにするとは思えない。


ひとまず今は少しでも有利に動けるように、より多くの情報を集めないと。



「ネフィル、今日もどこかに行くの?」



「行かないわよ。心配しなくても側にいるわ」



「気付かれてないと思ってる?」



「うん」



「……はいはい、気付いてませんよ。くれぐれも無理はしないでね」



黙って魔力を借りていることに対しては本当に申し訳ないと思っている。

数日前から、アイラがそれに勘づき始めていることも、その上で黙っていてくれることも知っている。



でも、今日は本当にどこにも行かない。

だって、お楽しみが待っているんだもの。



私は、自らの魔法の中に足を踏み入れる。

私が創った空間の中には、今まで幾度となく見てきた、遠近感の掴めない真っ白い空間が広がっている。

そしてその中心に、私がかつてないほど怒りを注いだ女が二人。

この時を、どれほど待ち侘びたことだろう。



「あら、少し見ないうちに傷が治ってるじゃない。聖女のヒールって便利なのねぇ。……それで、何か言うことは?」



「……無いわよ。誰が助けろと」



「じゃ、死ぬ? いいよ、ここで死んでも」



私は異空間の中に閉じ込めた女……ミリーに問う。

私が傷を負った2人と鉢合わせたのは本当に偶然だった。

2人が例の魔人にやられたのは明白だったが、何故魔人がこいつらを狙ったのかは分からない。

或いは、まともな理由すら無いのかもしれない。


理由はともかくとして、私は安堵した。

2人が、まだ一命を取り留めていたことに。

……アイラを縛り続けていた奴らが、魔人如きに殺されるのもつまらないじゃない。



「わざわざ自分から死ぬわけないじゃない。私を殺したかったのなら、最初から助けなければ良かったのよ。早くここから出しなさい! さもないと……」



「さもないと?」



「お前を殺してでもここを出る。知ってた? 魔法ってのは、使用者が死ねば消えるのよ」



「本当に? ……私を殺したら、永遠にこの空間を彷徨うことになるかもしれないわよ」



私の一言に、二人は黙り込む。


……馬鹿ね、そんなわけないじゃない。


ここは魔法によって作られた、魔法が消えれば、跡形もなく消滅する空間。

永遠に彷徨うことはない。

空間の彼方へ、存在が葬られるだけだ。

それを知りながら、私は演技を続ける。



「ふふ、いくら空間魔法でも、使用者が死ねば魔法も消えるわよ。真に受けちゃって可愛いわねぇ」



「良かったわ、それなら話が早い。簡単に死んでくれるんじゃないわよ! サナ!」



「はい! 【魔法の(エンチャント)加護(マジック)】!」



「【死の風(デスウィンド)】!」



ミリーが氷の王級魔法を放つ。

そして、その魔法は聖女のエンチャントで威力が2倍近く引き上げられている。

受けた者を凍らせる風……か。

悪くない魔法だ。


……でも、私相手に王級魔法の2倍程度じゃ話にならないわね。

せめて8倍はして貰わないと。


私は微風を受けて乱れた髪を整える。

そんな私の様子を見て、驚愕している2人。

魔力の塊である精霊を相手に温度攻撃を仕掛けたところで、通用するはずもないのに。



「なっ……こいつ、防壁も展開せずに、無傷!?」



「精霊に温度感覚は無いのよ。知らなかった?……それとも、魔道士ともあろう者が、私が精霊であることを今まで見抜けなかったのかしら?」



「う、嘘に決まってますよ! 精霊は人間を「種」として見ていると聞きます。貴女が本当に精霊なら、私たちなんてどうでもよかったはずです」



「目の前に精霊がいるのに、そんな根拠の無い噂を信じるのね。個人を判別できないのは本能に従って動く下級精霊だけよ。一緒にしないで欲しいわ」



……まぁ、「どうでもいい」という点ではあながち間違ってはないかもしれないけどね。



「だ、だから何だっていうのよ! 精霊だって不死身じゃない。精霊の体を形成する魔力をより強い魔力で吹き飛ばせば、それで済む話よ!」



それも下級精霊なら、ね。

私は別に魔力を失ったって死にやしないのだけど……

まぁ、そういうことにしてあげましょうか。



「それなら早く実践してみせて欲しいわ。実は、以前から死にたくて仕方なかったのよ」



「なら、望み通り殺してあげるわ!」



ミリーがぶつぶつと言葉を発しながら、魔力を集め始める。

詠唱?


……遅い。

あまりにも遅い。


集まっている魔力量からするに、放たれるのはせいぜい極大魔法。

こんな実力でアイラをこき使い、見下していたことが腹立たしい。

【紅き閃光】は雑魚を処理する速度だけは一流だったが、個々の実力は言うほど高くなかった。

まして、雑魚処理一つを取ったところで、それも【収納】がチートすぎるアイラがいたからこそ機能していた強みだ。

アイラ頼みだった奴らがアイラを切ったのだから、こうなったのは自業自得。

同情する余地もない。


私は、ミリーの詠唱が終わるのをじっと待った。

……発動するはずもない魔法の詠唱が終わるのを。



「【白銀の世界(ホワイトアウト)】!……え? 発動しない!?」



それっぽく技名を叫びながら、宙で手を振っただけ。

あまりにも予想通りすぎる滑稽な結末に、ふつふつと笑いが込み上げて来る。



「……あはははは! いい気味ねぇ! 精霊がいないとろくに魔法も使えない魔道士が、精霊に楯突いて勝てるとでも思っているのかしら!」



「詠唱」。

それは、唱えることで精神を統一し、魔法に集中することができるとされている行為。

……でも、その実態は精霊に向けたメッセージ。

魔道具に刻まれる魔法陣と仕組みは同じだ。


下級精霊は魔力が無くなると死んでしまうため、定期的に魔力を供給してくれる人間の元に集う。

そして、魔道士の魔力を対価に、魔道士が望む魔法を放つ。

「精霊魔法」の使い手と呼ばれるのは意志を持った精霊を従えた人間だけだが、自力で魔法を使う技量が無い人間は、無意識のうちに下級精霊の力……「詠唱」に頼っている。

自力で魔法を扱える人間は、詠唱の力には頼らない。


ミリーは王級魔法までは自力で扱えるが、それ以上を放つ技量はまだ身についていなかった。

故に、「詠唱」に頼るほかない。

この空間には、私以外の精霊は存在しないというのに。



「精霊を倒すのに精霊の力に頼っちゃダメじゃない。ほらほら、頑張って!」



「ほ、【白銀の世界(ホワイトアウト)】! なんで、なんでよぉ!」



自慢の魔法が発動せず、焦りを隠せないミリー。

自身では攻撃手段を持たない故、そんなミリーを見ていることしかできないサナ。

まさか、雑魚狩りで名を上げた【紅き閃光】の実態が、ここまで酷いものとは。

想像以上に、想像以下だったわ。



「ところでサナ。貴女はさっきから何もしていないようだけど、何か打開策は考えないのかしら?」



「わ、私は支援職ですよ!」



「『モンスターを倒せないなら倒せないなりに工夫して動けばいいと思います』……だっけ? アイラにはそう助言したんだから、貴女も支援職を言い訳にはできないわよねぇ」



「……!」



こいつらがアイラに放った心無い言葉の数々は、今でも一語一句違わず覚えている。


ミリーはマイルスと違って直接手を下すことはなくとも、何度も精神的なダメージを与えるような言動をした。


サナは更に悪質だ。

アイラの前でこそ大人しく、時にアイラを励ましていたが、マイルスやミリーの前では本音を曝け出していた。

要するに、相手によって態度を使い分けていた。



「それで、次はどうするの? まさか、『極大魔法が使えませんでした、はい終わり』なんてことにはならないわよね?」



「お、王級魔法なら良いんでしょ! 【氷柱落とし】!」



「【魔法の加護】!」



(別に受けてもダメージは無い。……でも、こいつらに絶望を与えるなら、ミリーが魔力切れを起こすまで、半永久的に防ぎ続けた方が良いかしらね)



私は【不可視の盾】を展開する。

ミリーはムキになって何度も同じ魔法を放ってくるが、そのどれもが私に届く前に砕け散った。


何度も何度も同じようなやりとりが繰り返され、ついにミリーは魔法を放つ手を止めた。



「な、なんなのよ。アンタ、一体何が目的なのよ。一方的に私の魔法を受け続けるだけで、一向に攻撃してこないのはどうして?」



ミリーが魔法ではなく言葉を投げかけてくる。

それもそのはず、ミリーの魔力はもうほとんど底を尽きかけていた。

もう一発撃つための時間を稼いでいるつもりだろう。

この空間に魔力はない。

魔力の自然回復など見込めないというのに。


可哀想な女。

そんな簡単なことも、自分の犯した罪すらも自覚できないなんて。



もう、いいかしら?

「何をしてもここからは出られない」と、二人に印象付けられたかしら?


……あぁ、私は悪い精霊だ。

私が次に発する一言でこいつらの表情がどう変化するのかを、心の底から楽しみにしている自分がいる。



「自己紹介が遅れたわね。私はアイラに従う精霊、ネフィル。私はずっと、貴女達がアイラにしてきた仕打ちを見てきた。でも、心優しいあの子は今更貴女達をどうこうしようとは考えないでしょう。だから、アイラに代わって、私が天誅を下すことにしたわ」



「アイラに従う精霊?……残念ね、アイラに魔法の適性なんてない。適当なことを抜かして、私達を騙そうったってそうはいかないわよ!」



「……ふふ、そうね、アイラ自身も自覚していなかったものね。貴女達が知らないのも無理は無いわ。『空間魔法』。それが、アイラに備わっていた魔法の適性よ」



「……嘘」



「空間魔法は古代に失われた魔法のはずです。ミリーさん、騙されないで下さい!」



「そ、そうよね。やっぱりアンタは嘘吐きよ!」



「別に何と言われても構わないわよ。話の続きをしましょう。色々考えたんだけど、ひとまず貴女達がアイラに心から懺悔し、アイラが貴女達を許すまでの間、ここに閉じ込めることにしたわ」



「何を勝手なことを……!」



「あら、この空間の支配者は私よ。全ての決定権は私にあるわ。生かすも、殺すもね」



もう少し、助けられているという自覚を持って欲しいわね。

私は改心するチャンスを与えているのに。



「それじゃ、ごきげんよう。心からの謝罪、期待しているわ」



私は二人を置いて、【名もなき空間】を後にした。

……取り残された二人がどんな行動に出るのか、じっくりと観察させて貰うことにしましょう。


無駄に高いプライドが折れるか。

何も無い空間で、精神が崩壊するか。


さて、どっちが先かしらね。



異空間の中は時間の流れが超ゆっくりになる……とか、色々鬼畜設定を考えてみたり。


やっとここまでこれた。

私のモチベのためにも応援よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] モチベーション下がってる時は無理なさらないで、書きたくなるまでゆっくり何ヵ月でも休むのもアリだと思いますよー(・∀・)ノ
[良い点] どんどん鬼畜っていただければと。
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