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透明な空(マイルス視点)

微妙に蛇足です。

内容自体は前話と同じなので、マイルスの心境なんて知ったこっちゃねぇよと言う方は読まなくて大丈夫です。



いつもアイラがギルドへ顔を出す時間に、俺は【赤い不死鳥】……ではなく今日は【蒼い彗星】に出向く。


何度見てもショボいギルドだ。

酒場も無ぇし、内装もダサい。



(さて、アイラの野郎は……)



ギルドの中を探すが、アイラは居ない。

今まで、あいつが時間通りに出向いてこなかったことなどなかったというのに。

痺れを切らした俺は、受付嬢にアイラの居場所を直接尋ねることにする。


「いらっしゃいませ。当ギルドの利用は初めてですか?」



「悪いがクエストの依頼をしに来たわけじゃない。アイラという冒険者を知っているか?」



「はい、アイラさんなら、確かに【蒼い彗星】に所属する冒険者です。ご用件なら、言伝を預かります」



「いや、いい。あいつは今どこにいる?」



「私は存じ上げません」



「なら住居の場所を教えろ。直接出向いてやる」



「失礼ですが、ギルドには守秘義務がありますので」



……ここが【赤い不死鳥】なら、無理矢理にでも聞き出してやるところだ。

だが、今日はそういうわけにもいかない。



「あいつは今日ギルドに来るか?」



「それも分かりません。ただ、今のところアイラさんは、1日も欠かさずギルドに顔を出しています」



「そうか」



俺はギルドの前で張り込みをすることにした。

あいつの性格上、これまで継続してきたことを突然やめる、なんてことはありえない。

アイラの野郎は絶対に来る。



そうして俺はギルドの前で気の遠くなる時間を過ごし、俺が退屈のあまり寝落ちしそうになっているところに、アイラがギルドに入って行ったのが見えた。



(……は? 女?)



あの野郎は生意気にも、女を二人も引き連れていた。


一人は美しい蒼眼の女。

もう一人は……幼女。


だが、幼女の方も成長を加味すれば上玉だ。



(落ち着け。あいつは俺たちが貸し与えていたSランクという肩書きを使ってあの女どもをたぶらかしたんだ。あいつがランク詐称の犯罪者だと知れば、幻滅するに違いない)



俺はアイラがギルドから出てくるのを待った。

……だが、あいつは何やら受付嬢と長話をしていて、一向に出てくる気配は無い。


ようやく出てきたかと思えば、アイラは俺の顔を一瞥もしねぇ。

まさか気づいていないのか?


あいつは以前、強力な魔力の持ち主はすぐに察知できると豪語していたはずだが……

やはり、口だけだったようだな。

仕方ない、こちらから声をかけてやろう。



「遅い。遅すぎる。一体どれだけ俺を待たせれば気がすむんだ、アイラよぉ!?」



「……なんでお前がここに居るんだよ、マイルス」



第一声が「なんでお前がここに居る」だと?


……違う。


お前はここで俺に許しを乞うべきだったんだ。

【赤い不死鳥】があんな状況にならなければ、そもそも俺はお前にチャンスすら与えなかったんだぞ?



まぁいい、俺は寛大だ。

それに、アイラが戻らなかった場合、困るのは俺も同じ。

アイラの無礼には、しばし目を瞑ってやろう。



「その女共は誰だ。お前の連れか?」



「パーティーメンバーだよ」



こいつらが?

……なるほど、さては外見で選んだな。

やはりこいつは、冒険者というものをを舐めてやがる。



「ふん、とても強そうには見えねぇがな。なるほど、お前は元Sランクの肩書きを使って、初心冒険者のパーティーに取り入った、というわけか」



「赤の他人である貴方に何と言われようと構いませんよ、私は。ただ……」




「べ、別に何だっていいだろ! マイルスには関係無いんだからさ!」



この女、今何かを言いかけたな。

……まぁいい。


この俺に堂々と意見してくる女、か。

屈服させるのが楽しみだ。



「そうもいかねぇよ。……なるほど、見込みはあるようだ。よし、そいつらも歓迎しよう」




「さっきから、一体何の話をしてるんだ?」



(……は? こいつ、本気で分かってなかったのか?)


いや、落ち着け。

これはいわゆる、念押し。

心の中では「もしかして」という期待に胸を膨らませつつ、違かった時のために保険をかけている。


……やはり、お前のやり口は気に入らねぇ。

だが、今日だけは付き合ってやるよ。



「決まってんだろ。この俺がわざわざ迎えに来てやったのに、礼の一つも無しか?」




「ごめん、話が読めないんだけど。どうして僕がマイルスにお礼を言わなくちゃならないのか、できれば説明して欲しい。本当に心当たりが無いんだ」



「はぁ? テメェ……」



くどい。

よほど俺の口から聞き出したいようだな。

荷物持ちの分際で、生意気な……



「一度しか言わないぞ。この俺が、お前に【赤い不死鳥】復帰の権利をやると。そう言っているんだ」



言ってやったぞ。

これで満足か、アイラよぉ!?

ここまで俺が下手に出ている以上、お前に中に断る選択肢は残っていない。


お前は昔からどんな頼み事をされても断れない、極度の甘ちゃんだったもんなぁ?



「そういうことか。要らないよ。【蒼い彗星】がこれからの僕の居場所だから。それじゃ」



「は?」



こいつは、何を言ってやがる。

俺の聞き間違いか?

この俺が、直々に【赤い不死鳥】への復帰を許可してやったのに。


おかしい。

絶対に、おかしい。

アイラに限って、そんなことは……



「おい、待てよ、話はまだ……」



そうか、アイラは自分が横領してしまったという罪の意識から、【赤い不死鳥】に戻ることを後ろめたく思っているのかもしれない。

ならば、それをしっかり説明してやれば……



「うおっ!?」



俺は見えない「何か」に足を取られ、転倒する。



(ぐ、ぐぅ!? 外れねぇ……)



なんだ、これは。

足に、気色の悪い魔力が纏わりついている。



「おい、アイラ! これはお前の仕業か!?」



アイラの野郎は俺には一瞥もくれず、明後日の方向へ歩き始める。



……焦るな。

あの方向にあるダンジョンは、【氷瀑のダンジョン】くらいのものだ。

ならば、この魔力が外れたら、後を追ってやる。

そして、罪の意識に囚われた哀れなアイラを、この俺が直々に救い出してやろう。


あのダンジョンはいくつかルートが分岐しているが、ボス部屋の手前で全ての道が繋がる。

……向こうは3人だが、Bランクのダンジョン程度、俺1人の方が遥かに早く攻略できる。

そこまで先回りしてやればいい。



可愛い後輩が待ってるんだ。

さっさとあいつを連れて、【赤い不死鳥】に戻らないとな。




この時マイルスはこう考えていたよーという話。

未だに彼はアイラが赤い不死鳥に戻りたいと考えていると思っています。

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