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【赤い不死鳥side】マイルス不在のギルド

間に合えば年内にあと1話、間に合わなければ今年最後の投稿です。


【追記】少し話が噛み合わなくなると感じたため、第13部分の一部の文章を訂正しました。

普通に読み進める分にはそこまで気にはならないとは思いますが、一応ご報告です。

以降はなるべくこのようなことが無いように気をつけます。


マイルスが消息を経ってから数日が経った。


ダックとしては、弱みを握られたマイルスが居なくなるに越したことは無い。

しかし、良くも悪くもマイルスがこのギルドの「軸」として機能していたのは、紛れもない事実だった。


貴族によるギルドの支援。

民からのクエスト依頼。

王族、貴族による高額クエストの供給。


無名かつ、すぐ隣に【青い彗星】が位置している状況下で【赤い不死鳥】が大手ギルドまでのし上がることができたことは、王都初のSランクパーティーに昇格した【紅き閃光】の存在が大きい。


彼らに憧れて【赤い不死鳥】を志す新人も多ければ、彼らに直々にクエストを依頼したいとわざわざ高額を支払う顧客も居る。

中でも特に貴族からの支援や高額のクエストは、貴族とマイルスが直接交渉を交わすことがあった為、マイルスの不在は貴族とのパイプが絶たれかねない状況なのだ。


一人の冒険者に依存している時点でギルドとしての体裁は崩れたも同然なのだが、手の届かないところで好き放題にやられた後では、すぐにマイルスへの依存を断ち切ることはできない。

……ダック自身、マイルスがどこで、誰と取引したのかを把握し切れていないからだ。


だからこそ、ダックはマイルスの行動に、ある程度は黙って指を咥えることしかできなかった。



(地龍を倒すと豪語しておきながら、一体何処へ行ったというのだ! 目の前の貴族はどうあしらえばいい。なぁ、マイルス!?)



ダックは、地龍のクエストを依頼した貴族を目前にして、えも言えぬ焦燥に駆られた。

マイルスが多方面に売りつけてきた過度な自信のツケが、ついに回ってきたのである。

これは、ダックが最も恐れていたことの一つだった。



「一日でクエストを終わらせると言っていたマイルスが、どうしてまだ帰ってこない。まさか、失敗したのではあるまいな?」



「あ、あいつに限って、そんなことはないでしょう。あの山は広いですから、地龍を探すのに苦戦しているのかもしれません」



「……ふむ、では、あと3日だけ待とう。それまでにマイルスが戻ってこなければ、このギルドへの支援と契約を打ち切らせて貰うことも考えなければなるまい」



「そんな! それは……」



この貴族……カディオ=グランタールは、【赤い不死鳥】の冒険者が集めたモンスターの素材を、定期的に自身の経営する店に卸す契約をしている。

それだけでなく、このギルドの支援者として毎月一定の金額を落としてくれる貴重な存在。

それが断ち切られるとなると、ただでさえ雲行きが怪しくなってきた【赤い不死鳥】が更に窮地に立たされることは目に見えている。


……そんなことが分からないほど、ダックが無能な訳ではない。

他のギルドなら、或いは今も経営は彼の掌の上だったかもしれない。


ダックの不正は、ダックの用心深さを上回る当時の優秀な副ギルドマスターによって暴かれ、それを見かねたマイルスによって()()された。

その時、もし副ギルドマスターが別の人物だったなら、ダックは今も美味しい蜜を啜り続けていただろう。


(ガラムめ、そもそもあいつさえいなければ、マイルスの好き勝手にギルドを動かされることも無かったんだ……!)



ダックは、既に【赤い不死鳥】を去った前・副ギルドマスターの姿を思い浮かべ、怒りの感情をあらわにした。


が、タイミングが悪かった。



「なんだね、その不満そうな表情は」



(違う、今のはお前に対してじゃない!)



ダックは内心では焦りながら、なんとかカディオに対する言い訳を捻り出す。



「……失礼、出来もしないことを口走ったマイルスの奴に、少しばかり腹を立ててしまいました」



そして慌てて表情を直し、無理に笑みを浮かべる。

……だが、その節操のない様子が、更にカディオを怒らせた。



「私は例の地龍を、同じくコレクターの貴族達に()()お披露目するつもりだったのだよ。マイルスの言葉を信じたからこそ、今日だ。中には、地龍の素材の一部を高額で買い取ると言ってきた貴族も居た。だが、その商談は破綻した。事の重大さがわかるか?」



貴族は、趣味にかける金銭感覚も庶民の比にはならない。

少なく見積もっても数百万単位の金が動く取引だったのだろう。



「も、申し訳ございません、カディオ様。以降、このようなことが無いよう、きつく言い聞かせておきますので……」



「……これまでも【紅き閃光】にはかなり世話になった。それに免じて、今回だけは大目に見てやろう。三日、くれぐれもお忘れなきよう。では、私は失礼する」



「あ、ありがとうございます!」



ひとまずカディオとの契約が継続したことに、ダックは胸を撫で下ろす。

……だが、マイルスが地龍を倒して戻ってこないことには、厄介な問題を先送りにしただけ。



(クソ、クソ、クソ。マイルスめ、普段は目障りだが、こういうときに限って……!)



どうにかしたいのは山々だが、こればかりはマイルスを信じて待つことしかできない。

ダックは頭を抱えた。



……この日を境に、不死鳥は急降下を始める。


今年中に15000pに行きたいという密かな目標がありましたが、投稿頻度的に厳しかったですね。

正確かつ早く書けるように修行しなければ。


評価・ブクマ等よろしくお願いします!

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