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隣町からのスカウト

既にブクマが何件か…!

ありがたや。


……【赤い不死鳥】を追放された。


実感が湧かなすぎて、今起きたことは全て悪い夢なのではないかと思えてくる。

しかし、これは紛れもない現実だ。



悲しいことのはずなのに、僕の頭は追放がまるで他人事であるかように冷め切っていた。

【赤い不死鳥】に留まりたいと願う気持ちは、ネイの一言を最後に消え失せてしまったようだった。



僕が極めて冷静で居られたのは、今後の身の振り方に一応アテがあったからかもしれない。

というのも、僕はここ最近、隣町にあるギルドから熱心なスカウトを受けていた。



他のギルドからより高待遇で優秀な人材を引き抜いてくるというのは、冒険者界隈ではそこまで珍しいことではない。


大手ギルドには必ずと言っていいほど「スカウト班」と呼ばれる組織があり、他のギルドや新人冒険者の中に才覚のある人材がいないか、常に目を光らせているのだ。


そして、どういうわけか、僕はスカウト班の目に止まったらしい。



「アイラ君! 【蒼い彗星】に移籍しないか?」



……噂をすれば、ってやつですか。


いつも通りならそろそろ来るのではないかと思ってはいたが、いくら何でもここまで都合の良いタイミングで来てくれるとは思わなかった。



「毎度唐突ですね、ヨーグさん。ちょうど、貴方のことを考えていたところです」



隣町・メリーズに拠点を置く【蒼い彗星】は、【赤い不死鳥】と肩を並べるほどの大手ギルドだ。


この国にギルドは星の数ほどあるが、国外にまで名の知れた有名なギルドは、わずか三つしかない。



「赤い不死鳥」



「蒼い彗星」



「緑の息吹」



これらの大手三ギルドは纏めて「三原色」と呼ばれており、それぞれ他のギルドを凌駕する圧倒的な成績を叩き出している。



【蒼い彗星】のスカウトであるヨーグさんに初めて声をかけられた時、僕はひどく困惑した。


冒険者としては底辺職である荷物持ち(ポーター)をわざわざ他ギルドからスカウトするなど、恐らく前代未聞だろうから。


……しかし、僕がいくら断っても、ヨーグさんは一歩も引かなかった。


毎日のように【赤い不死鳥】に通い続けては、僕に何度も声をかけてくれた。

ヨーグさんの好意を断らなければならないのが、昨日までは本当に心苦しかった。


そう、昨日までは。



「しつこいようだけど、【蒼い彗星】に移籍する気はないかい?……ウチのギルマスが、アイラ君に随分とご執心でさ」



そう言って、ヨーグさんは申し訳なさそうに笑う。



「では、これからよろしくお願いします」




「やっぱ、そうだよね。愛着のあるギルドだろうし、無理矢理移籍させるのはこちらとしても不本意だ。僕が何とか、ギルマスにアイラ君を諦めてもらう方向で説得して……え? 今なんて?」



「実はついさっきギルドをクビになりまして、恥ずかしながら生活のアテが無いんですよね」



俺は、ギルドを追放された経緯を、パーティーを追放されたところから順にかいつまんで簡潔に説明する。


「……そういうわけで、僕は今一文無しの無職です。もし僕を拾ってくれるというなら、その話は喜んで受けさせて頂きます」



それを聞いたヨーグさんは、顔をしかめた。



「酷い話だね。無能、か。僕に言わせれば、無能なのはアイラ君を追放したパーティーリーダーと、それに賛同したギルマスなんだけど……」



……ヨーグさんは、優しい人だなぁ。



「実力を買ってくれるのは嬉しいですが、お気遣いは無用です。僕が実力不足なことくらい、自分が一番分かっていますから」



「それだけ収納量が多いのに、まだ上を目指そうとするのか。アイラ君には頭が上がらないな」



収納量?


僕が言っているのは、【収納】の話ではない。

僕は、どこか話が食い違っているように感じた。



「えっと、僕が言っているのは【収納】の話ではなくて、純粋な戦闘能力の話で……」



「戦闘能力?一体何を言って……まさか、【紅き閃光】は、君を…いや、荷物持ち(ポーター)を戦力として数えていたのか!?」



「は、はい。それが、どうかしたんですか?」



ヨーグさんは、途端に表情を強張らせた。

……まるで、見てはいけないモノを見てしまったような反応だ。



「アイラ君、荷物持ち(ポーター)は普通、戦わない職業なんだよ。そもそも荷物持ちに戦闘能力を求めるのが、根本的に間違っているんだ」



「………………はい?」



荷物持ち(ポーター)の仕事は、クエストで得た素材を収納し、持ち運ぶこと。優秀な荷物持ち(ポーター)に求められるのは、『いかに多くのものを収納できるか』ということなんだ。つまりー」



「ちょ、ちょっと待ってください!」



……頭の整理が追いつかない。

荷物持ち(ポーター)は普通、戦わない?


いや、そんなはずはない。


【紅き閃光】ではモンスターと戦う場面なんて何度もあったし、その度に僕は足を引っ張ってどやされていた。



荷物持ち(ポーター)だって、戦えるに越したことはないじゃないですか。その分、戦力が一人分増える訳ですし」



「……理論上は、そうだね。でも、よく思い出してみて欲しい。アイラ君は、アイラ君以外で荷物持ち(ポーター)が戦闘をこなしているのを見たことがあるかい?」



そう言われて、真っ先に思い浮かぶのは。



「ありますね。僕の後釜として【紅き閃光】に抜擢された、ネイという女性がそうです」



僕がそう言うと、ヨーグさんは頭を抱えた。


ヨーグさんが僕に何を伝えたかったのかはよく分からなかったが、ネイが戦えると言うのは本当だ。


彼女は荷物持ち(ポーター)ながらも、的確な弓矢でパーティーを援護していた。



戦える荷物持ち(ポーター)


彼女は僕に憧れていたと言っていたが、実のところ、憧れていたのは僕の方でもあるのだ。



「……はぁ。とりあえず、アイラ君が異常な環境下にいたのはわかったよ。だとしたら、この後アイラ君は【蒼い彗星】の冒険者の態度に驚くかもしれないね」



「? それは、どういう意味……」



「着けばわかるさ。時間も惜しいし、すぐにメリーズに向けて出発しようか」



「……はい」



僕はヨーグさんの含みのある言葉に疑問を感じつつも、言われた通りに出発準備を整えたのだった。

もし少しでも「面白い!」「続きが気になる!」と思って頂けたら、ブクマ、並びに下にある評価ボタンをポチっと押してやって下さい。

ものの数秒で終わる作業ですので…!

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― 新着の感想 ―
[一言] 僕が極めて冷静でいられたのは…と思ってる割には 未練たらしく縋りつこうとしてたような気がしましたが? ! ヘッドハンティングを隠すための、演技だったんですね 納得です
2021/09/24 01:46 退会済み
管理
[良い点] スカウトさんがいい人でとても好感度が高い! [気になる点] なんだろう?こう、また自己評価低い勘違い系でそれを指摘されても改めないアホの主人公か?と身構えてしまうところがある [一言] お…
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