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【ミシャル視点】その時、ギルドでは

気晴らしに書いた短編に評価ついてて泣きそう……

嬉しすぎる……


最強の種族・竜族の一角にして、この町の守り神として信仰を集めているモンスター・地龍。

そんな、普段は遥か天の上の存在が、【人化】した状態で目の前に立っていたとして、平静を保てる人間が一体どれだけいるだろうか?


俺は手の震えを地龍に悟られぬよう、腕を机の下へと隠した。


今まで俺は元冒険者として、そして現ギルドマスターとして、数多くの強者と接してきた。

竜とだって、対峙したのはこれが初めてでは無い。

……しかし、今日の来客は文字通り次元が違いすぎる。


これと対峙して少しも危機感を抱かないのは、恐怖心の欠如した魔人か、相手の魔力の流れすらも感じ取れない弱者のどちらかだと断言できる。


……一体、このギルドに何の用だ?


相手が地龍でさえなければ単刀直入に聞いているところだが、下手な態度を取って彼女の機嫌を損ねるわけにはいかない。

地竜は竜種の中では比較的温厚な種族だが、竜族というのは暇つぶしで町を壊滅させるほどの力を持っているのだ。


「それで、守り神様……」



「その呼び方はあまり好きではない。せめて地龍と呼べ」



「失礼、地龍様。今回は一体どのようなご用件で?」



「冒険者のパーティーが1組、ベルク山に侵入した件についてだ」



「……契約には、ベルク山に入ってはいけない、などという条件は提示されていなかったはずです。現に、ベルク山でのクエストも多数発行されております」



「あぁ。我と【蒼い彗星】の冒険者は敵対せず、互いに干渉しない。これが我とこのギルドの初代ギルドマスターが交わした契約。違うか?」



「その通りです。いや、まさか……」



「その、まさかだ。あろうことか、パーティーリーダーは我の討伐を目的に来たと抜かしおった」



地龍の言った通り、この町では、地龍と【蒼い彗星】による、相互不可侵協定が結ばれている。

どういう経緯でこの契約を結ぶに至ったのかは、地龍と【蒼い彗星】の初代ギルドマスターしか知らない。


それゆえ、「地龍の討伐」などというクエストは、このギルド始まって以来、一度も発行されていないはずだ。

そのはずなのだが……


……もしも、【蒼い彗星】に所属している冒険者が、パーティーの独断で討伐に向かっていたとしたら?

そう考えると、冷や汗が止まらない。



「少なくとも、当ギルドではその様なクエストは発行しておりません。他の冒険者ギルドから遠征してきたという可能性はありませんか?」



「……ふむ、そう言われると、我には判断しかねる。確証も持たず叱りつけるのは少々気が早かったな。非礼を詫びよう」



「いえ、地龍様が謝られることではありません。それで、何か冒険者の特徴等は覚えていますでしょうか?」



俺がそう問いかけると、地龍は少し考えるそぶりを見せてから、徐に口を開いた。



「魔剣士と、魔道士と、回復役(ヒーラー)の3人のパーティーだったな。自分達の実力に確固たる自信がある様子だった。恐らく、彼らは人間の中では強い部類に入るのだろう」



「ふむ。話を聞く限り、このギルドの冒険者では無さそうですね。そもそも当ギルドでは、ダンジョンアタックの場合や、そのパーティーならば確実に勝てると見込んだクエストを除き、少数パーティーでの討伐作戦は推奨していません」



……いや待てよ、確か、そんなパーティーのことを耳に挟んだことがある気がする。

自己中心的な魔剣士、傲慢な魔道士、楽観的な回復役の3人で構成されたSランクパーティーが。


……後で、アイラに話を聞かなければなるまい。



「そうか、早とちりだったか。すまなかったな」



「頭を上げて下さい! 貴女ほどの御方が、俺なんかにそんな……」



「どれだけ大きな力を手にしたからといって、礼節を手放して良い理由にはならん。こちらの勘違いで、お前の時間を奪ってしまったのは紛れもない事実なのじゃ」



「……」



……恐ろしく強い上に、相当な人格者ときたか。


俺は、初代ギルドマスターと地龍の間に一体何があったのかを知らない。


しかし、初代がこの地龍と敵対しないことを選んだ理由の一端は、地龍の持つ強大な力を恐れたのではなく、地龍のこういう部分に惹かれたからなのかもしれない。



「用は済んだ。我は帰……」


ドォォォォォォォォォン!!


地龍が部屋を出ていこうと扉に手をかけた瞬間、どこからか、轟音が響き渡った。



(何だ? 建築家が木材でも落としたか?)



最初はそう思ったが、それにしては音が大きすぎる。

……また、嫌な汗だ。

何か、不吉なことが起きようとしているような。

受付嬢が、慌だたしくこちらへ駆けてくる。


「ミシャルさん! 東の方向で謎の火柱が立ち上りました!」


「火柱!?」


まさか、この町が襲撃されているのか?

……しかし、東の方向はただ広い平原が広がっているだけだったはず。


「何者かの魔法によるものじゃな。ここまで音が響くほどの威力なら、十中八九魔人の襲撃と考えるのが妥当か」


「……お言葉ですか、地龍様。だとすると、わざわざ平原で魔法を使った理由が説明できません」


「いつの時代も、魔人の考えていることは読めないものじゃ。そう易々と読めるのなら、()()がその対策にここまで苦労することは無い。……まぁ、ここに我が居合わせたことに感謝しておくんじゃな。この町の『守り神』としての責務はしかと果たそう」


地龍は独り言のようにそう告げると、今度こそ部屋から出て行った。

……敵に回すと恐ろしいが、味方に付けるとこれほど頼もしい存在はいない。



「ミシャルさん! 手の空いている冒険者を集めて、緊急調査依頼を発行しますか!?」



「……いや、必要ない。今ギルドに居る冒険者に、不用意に平原の方に近づくなと伝えろ」



「かしこまりました。……しかし、それでよろしいのですか?」



「構わん。()()でも止められないなら、どうせ俺たちも全滅だ」



「はぁ……」



全く、このタイミングで地龍が来たのは、一概に悪いことばかりではなかったというわけか。



「失礼します、ミシャルさん。悪いお知らせが」



「……ヨーグか。悪いが、今は非常事態だ」



「では手短に。アイラ君たちが、平原での採取クエストから戻ってきていません」



「はぁ!?」



……最悪だ。


もはやこの場に居る俺たちには、アイラたちが魔人に遭遇する前に、地龍が間に合ってくれることを祈ることしかできない。


(地龍が来たかと思えば、次は魔人だと!? 一体全体、今日はどうなってんだ!)




……この時、ミシャル達は知らなかった。


その魔法が、魔人ではなく吸血鬼(シアル)によって引き起こされたものであるということを……


「よっしゃ書くぞ!」って思った時に限って予定や災難が重なる法則に誰か名前を付けて欲しい。


皆様のブクマ、評価で捻挫が早く治る気がします。

確証は無いです。

是非お願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] マーフィーの法則には、誰も逆らえない… すみません、最期のコメントみてこれだけ返したくなりましたw
[気になる点] 「17話の地龍討伐へ」で貴族がギルドに依頼してクエストを出した文があるが、今回の話ではクエストを出していないという、ギルドマスターはギルドのクエストを管理していないのか?それともギルド…
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