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ショッピング

時系列をある程度揃えるため、アイラ視点と「赤い不死鳥」視点をキリ良く交互に投稿しています。



「いい肉が入ったよぉ! 今日は全商品2割引きで提供だぁ!」



「今朝取れたての新鮮な野菜! 向こうの肉なんかより、野菜の方が健康に良いわよ!」



「鮮度抜群の魚だ! 買って後悔はさせねぇ! そこの肉と野菜より、こっちの魚を見てってくれ!」




メリーズの市場は、王都にも負けず劣らず非常に賑わっていた。

……競争意識だけなら王都以上かもしれない。

特に、肉屋、八百屋、魚屋の店主が競い合うように値段を下げるので、彼らの喧嘩は客から大好評なようだ。



「……ホワイトウルフの肉!? あれって食べれたのか、収納してくればよかったかなぁ」



「ハハハ、とても人間じゃぁ食べれねえ味だよ、坊主! ホワイトウルフの肉は家畜やペットの餌、釣り餌なんかに使われる。格安なのはそういうこった」



「あ、なんだ、そうなんですね。勉強になります」



肉屋の店主が、僕の独り言を拾って丁寧に解説してくれた。

……確かに、ホワイトウルフの肉だけ、明らかに周りの肉より値段が安くなっている。

それに、ギルドではホワイトウルフは爪しか引き取って貰えないので、倒した本体は普通持ち帰らない。



「……さて。坊主、人が丁寧に教えてやったんだから、何か見返りがあってもいいんじゃねぇか?」



肉屋の店主は、僕に向けて指でマルを作って見せる。



「……まさか、最初からそのつもりで説明を?」



「当然! こういう商売ってのは、図太さがないとやっていけねぇんだよ!」


肉屋の店主は、そう言って豪快に笑った。

……こういうノリの良い人は、不思議と嫌いになれないんだよなぁ。



「今回は僕の負けですね。焼き鳥を2本ください」



「よっしゃ、毎度っ! 400Gだ!」



買い食いをするつもりはなかったけれど、これは僕より店主が上手だったということで。

……まぁ、悪あがきはさせて貰いますけどね!



「ところで、2割引きはどうしたんですか?」



「聞いてたのかよ!……坊主からも俺と同じ匂いがするぜ。仕方ねぇ、320Gだ」


よし!


僕は店主に値引きされた分の320Gを手渡すと、受け取ったうちの一本をシアルに差し出す。


「え……私の分…?」



「あれ、焼き鳥は嫌いだった?」



「いえ! そんなことは。……でも」



シアルは辺りをキョロキョロと見回す。

……ここで僕は、ようやく彼女が牙を見られてしまうことを懸念しているのだと気づいた。



「大丈夫だよ、人間が吸血鬼を見分ける時に見るのは、ほとんど目の色だけだから」



僕がそう言うと、シアルは若干躊躇しながらも焼き鳥を受け取り、おずおずとそれに口をつけた。



……勿論、ある程度戦闘経験を積んだ人なら、魔力の質の違いから彼女に違和感を覚えるかもしれない。

しかし、決め手とも取れる目の色が青いのだから、少なくとも今この場で襲われる心配はないだろう。

まして、彼女は人間(ぼく)と一緒にいるのだし。



僕も、自分の焼き鳥にかぶりつく。



……美味い!



噛んだときに溢れる肉汁がかなり濃厚で、とてもじゃないが160G(普段は200G)で得られていい満腹感ではない。

これは、定期的に食べにきたいなぁ。



「……坊主、お前、彼女持ちだったのかよ。行き遅れた俺に、哀れみの追加購入があっても……」



……なぜだろう、僕に肉を売りつけるチャンスのはずなのに、店主の表情は悲痛さに歪んでいる。



「別に、彼女ってわけじゃないですけどね。じゃあ、安くて美味しいおすすめのお肉を教えて下さい」



「なんだ、違うのかよ! そうだな……怪物牛(モンスターブル)の肉なんかはおすすめだな。家畜の牛より安価だが、味は遜色ねぇ。モンスターの肉に抵抗がないなら、自信を持っておすすめするぜ」



「では、それを」



「毎度! 今後とも贔屓にな!」



……肉を買った後、僕は約1万Gの支出を代償に、格安で売られていた野菜や魚、更に調味料などを、まとめて1週間分ほど買い込んだ。


どの店でも鮮度の落ちた魚や野菜は値引きされることがあるのだが、【収納】しておけばそれ以上鮮度が落ちる心配は無いので、荷物持ち(ポーター)にとってはお得なセールでしかない。


この辺りは、戦闘に向かない荷物持ちの強みと言える。



市場はこれでだいたい見終わったので、今度は衣料品店へと足を運ぶ。

町の人に尋ねたところ、衣料品店は市場から割と近くに位置する……らしいのだが、土地勘の無い僕とシアルは案の定迷ってしまい、かなり遠回りしてしまった。


衣料品店「天使の衣」。

曰く、この町で最大の衣料品店で、素材があればオーダーメイドでの製作にも対応してくれるらしい。

今後、防具の製作なんかを依頼する機会があるかもしれないし、場所はしっかりと覚えておこう。



「アイラ様、やっぱり私はこの服があれば十分ですので、そんな贅沢は……」


「別に贅沢じゃないよ。衛生的に考えて、同じ服を洗わずに着続けるのは良くないからね」



……それに、本人に面と向かっては言えないけど、シアルならどんな服でも似合いそうな気がするし、バリエーションを増やしておいて損はないと思う。



「天使の衣」で、シアルの意思を尊重したーーと言えば聞こえはいいが、単に僕がファッションセンスに自信がなかっただけなのだがーー服を3着ほど購入した。

流石に僕が下着を一緒に選ぶわけにはいかないので、それだけは本当に彼女に任せっきりだが。



シアルはあまり派手な服は好まないようで、なるべく控えめな色を選んでいた。

……しかし、それを着てなおも絶大な魅力を感じてしまうのだから恐ろしい。

彼女が露出の多い服を選ばなかったことに、心のどこかで安堵している自分がいた。



「本当に何から何まで、ありがとうございます。私、頑張って早く戦えるようになりますから……」



店を出てから、シアルはそんなことを口にした。

……服を買って貰ったことに対して、どこか後ろめたさを感じている様子だった。


仮にこの先シアルが戦えるようにならなくても、彼女を見捨てるような真似はしないと思う。

そのため、僕としては、そこまで気にする必要は無いと伝えたいのだが……


彼女自身が、それを許さないのだろう。



「僕もなるべく協力するから、一緒に頑張ろう。あんまり一人で抱え込まないでね?」



「……! ありがとうございます」



……良かった、表情が明るくなった。



「さて、そろそろオークション会場に行こうか。魔石や掘り出し物の魔道具なんかが見つかるといいなぁ」



「ふふ、きっと見つかりますよ」



「ちなみに、どうしてそう思うの?」



「……勘、です」



「そっか、それから間違いなくあるね」



なんとなく、シアルの勘は当たる気がする。

そうして僕たちは、オークションが行われる会場へと足を運んだ。








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ものの数秒で終わる作業ですので…!

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[一言] 質問した訳じゃないのに情報料請求するの草
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