気付いた事を気付かれてはならぬ
学校からの帰り道、何時も通る道を歩いていると、生者にあらざる者が目に入った。
思わず足を止める。
死者を目にしたのは、初めてではない。
しかし、今まで見た何よりも邪悪そうで、『見える事を気付かれたらヤバイ』と感じた。
視線を逸らし、『見てない見てない』と心の中で唱えながら、歩みを再開する。
恐怖心を押し殺しながら傍らを通り抜け、5メートル程歩いてホッとした時……。
『オ゛マ゛エエ゛、ミ゛エテイ゛ルナア゛?』
欠けた顔が、私を覗き込んでそう言った。
「キャアアアアア!!」
私が語り終えると、ケイが悲鳴を上げた。
「ケイってば、怖がり~」
アイは笑う。
「想像力豊かなの!」
「はいはい」
私、ユウを合わせた三人で、放課後の教室で怪談話をしていたのだ。
「あ。もう、こんな時間」
時計を見れば、17時になろうとしていた。
「帰ろ」
「だね」
私達は、鞄を持って生徒昇降口に向かった。
学校からの帰り道、ケイコ達と別れると、生者にあらざる者が目に入った。
思わず足を止める。
死者を目にしたのは、初めてではない。
これまでの経験で、『見える事を気付かれたらヤバイ』と解っている。
視線を逸らし、『見てない見てない』と心の中で唱えながら、歩みを再開する。
緊張しながら傍らを通り抜け、5メートル程歩いてホッとした時……。
『オ゛マ゛エエ゛、ミ゛エテイ゛ルナア゛?』
欠けた顔が、私を覗き込んでそう言った。
直後、悪霊は木っ端微塵に砕け散った。
だから、気付かない振りをしていたのに。
理由は解らないが、私が悪霊に気付いた事に向こうが気付き、それを私に気付かれると、粉微塵となってしまうのだ。
その後、時間をかけて戻るのか・そのまま消滅するのかは、判らない。
判らないが、流石に可哀想なので気付かぬ振りをしている。
それなのに、どいつもこいつもちょっかいを出して来るのだ。
気にしてもしょうがない。
私は、悪霊を粉砕して私を守ってくれたであろう何かに感謝して、その場を立ち去った。