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6・書道部、首都へ

 カリギュラ国の首都ローマン。

 城塞都市でもあるそこは、まるで何かを閉じ込めるかのように円形の壁に覆われている。

 石造りの大都市、その周りは木々に覆われ、森林を貫く東西南北の街道がそれぞれ門に繋がる形だ。

 なんでも、かつてこの国は森林の伐採を繰り返し、見通しの良い平原としてしまったことで、敵国の進行を招いてしまったという。その反省から、何世代にも渡って植樹を行い、現在のような森の只中にあるような首都となったのだそうだ。

 そんなローマンのそばまで、明とゴシカは来ていた。

 野盗の襲撃から3時間ほど経っており、明は疲れが見えるが、ゴシカはまだまだ余裕があるようだった。彼女は健脚に自信があるらしく、これまでの道中も、野盗などと出くわした際はその脚で逃げて来たそうだ。

 流石に首都のそばまで来ると野盗たちも出なくなる。警備隊が目を光らせているからだ。しかしながら、一本道の街道というのは野盗にとってはこれほど狙いやすい場所もない。時折、無謀な野盗が現れては、捕縛されて門の外に吊るされていることもあるという。

 リスクを負ってでも活動したがる野盗が現れること自体、首都が栄えているということであるが、二人の眼前に見えてきたローマンの南門は、隆盛を示すように近づくにつれその巨大さを露わにした。

 タンカーが屹立しているのかというほど特大の大理石の一枚板を削り、アーチが作られており、その周りをピラミッドのように大理石の石積みがされ、神殿のような荘厳さを持っている。城壁全てが大理石というわけではなく、門の一部だけがそうなのだが、東西南北ごとに異なる石で組まれているという。

「よくこんな巨大な岩を持って来れたな」

 見上げて呆然と呟く明。

「そうですね。いったいどうやっ……」

「そりゃあ、フォトンで軽くして持ってきたんだ」

「!?」

 おのぼりさん丸出しの二人に話しかけてきたのは、後ろで短く結んだ白髪に白鬚のたっぷり日焼けした大柄な老人だった。片手にクワを握っており、顔や足にも泥がついていて、農作業中なのが見て取れた。

「ワシのじいさんの頃はこんな立派な門じゃねえで、石を組んで作ってたそうだで。やっぱりでぇり石はきれえでええなあ!」

「は、はあ……ところであなたは?」

 老人の勢いにのまれつつ、ゴシカが苦笑いを返す。

「ワシか? ワシはそこで畑をやっとるもんじゃ」

 彼が指差した先には、門のすぐそばだというのに、小さな畑と掘っ立て小屋があった。畑にはキャベツかレタスの仲間と思しき葉野菜が植えられている。

「す、すごい所に……よ、よく許可が下りましたね……?」

「昔から住んどるんじゃ。今さらどうこう言われるもんではないわ」

 老人は大声で笑った。声の大きさに門の前にいた衛兵が驚く程である。

「なるほど。蝶が飛びまわって美しい景色ですね」

 呑気に言った明だったが、それを聞いた老人が目玉をひんむいて驚く。

「なんじゃと! いかん!」

 彼は大慌てで畑に向かって行く。

「どうしたんですか?」

「ばーろ―! あの蝶は害虫じゃあ! あいつら、卵産みにきよるんじゃ!」

「ええっ!?」

 老人は、手で蝶を追い払おうとしたが、ひらひらと舞うだけで群れはその場から離れようとしない。

「くそう! これが獣なら、百戦錬磨のワシの殺気に逃げていきよるんじゃが、虫にはわからんらしい!」

「はは……」

 苦笑しつつ、明は畑に向かって行くと、かがんで地面に文字を書き入れた。

 すると――

「おおっ!?」

 蜘蛛の子を散らすように、蝶が一斉に逃げていく。

「に、兄ちゃん、何をしたんだ?」

「【除虫】と書いたんです」

「フォトンか! あんたすごいのう!」

 老人が満面の笑顔で、一気に距離を詰めて明を抱きしめた。

 困惑しつつも、明は石にサインペンで同じ文字を書き入れ、彼に渡した。

「油性なので、しばらくは消えないと思います」

「あんたいい男だな! 気に行った! フォトン使いが、わざわざこの時期にローマンに来るくれえだ。御前試合に出て職探しってハラだろう。なぁに、そこで落ちちまったら、ここにまた来い! ハラいっぱいオレの野菜食わせてやる!」

 ガハハと笑う老人。

「え、縁起でもない事を言わないで下さい。アキラ殿は間違いなく一位になります!」

 頬を膨らませてゴシカが否定する。

 が、それで怪訝な表情を浮かべたのは明の方だった。

「ん? ちょっと待ってくれ。俺、ローマンに行くとは言ったけど、御前試合に出るとは言ってないが?」

 確かに、ゴシカは御前試合を見るためにローマンに向かっていた、というような事を言っていた。

 だが、それは護衛対象になるようなフォトン使いを探すためだったはずだ。

「ローマンに行くのは、情報を集める為だろう?」

「おめえ、いまローマンに入るにゃあ、御前試合に出るしかねえぞ。王様が人前に出るのに誰でも入れちゃまずいだろがい」

「え? え?」

 明は、何が何だかわからず頭を振ったが、一つだけ理解できたことがあった。

 これ、出ないとダメそうだ。

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