5・夢
「……わかりました。あなたは、とんでもない大導師だ……」
意識を取り戻したゴシカは、野盗たちを縛り上げて街道脇に転がすと、明の前に立ち、畏まってそう言った。
「そんなことはないが……」
「いや、あります! ちょっと考えられないレベルで、もはや神話の英雄に等しい。私も混乱してますもん。何これこんなことあるの?」
「これは相当混乱してるな……」
しゃちほこばった喋りは、彼女なりの演出なのかもしれない。それが維持できないほどの驚きだったということだろうか。
「あ、あの、私が伴士でいいんですよね? さっきOKしましたよね? ね?」
「ああ、うん」
ゴシカの勢いにのまれるように頷く明。
彼女はどこか正気を失ったような瞳で、返答を反芻している。
「あと、助平でもないんですよね? ね?」
「だと思うが」
「!」
かと思えば、今度は急に泣きだした。
「……こ、こ、こんなこと……あるの……? 嘘……嘘……」
「え、ええと……」
事態がのみ込めず、わたわたと手を動かすばかりの明。
ゴシカは泣くのを堪えてようとして、それでも涙があふれるために、釣り上げた唇と頬の上を滝のように零れ落ちていく。
「ご、ごめんな……さい……私……伴士になるの……夢だったから……」
子どものようにしゃくり上げるゴシカ。
「夢……」
今度はそれを聞いた明が、それを反芻するように呟く。
夢。
月並みな言葉だ。
だが、それだけに、重い。
「俺は……」
他人から夢を乗せられるだけの器の、人間だろうか?
わからない。
明は、かつてサッカーで全国を目指した。
今は、自分の書で人の心を動かすのが夢だ。
そのおかげで、サッカーの夢が断たれたときも、折れずに済んだ。
夢は、前に進むための杖だと思っている。
だから、ゴシカにとって伴士が夢だと言うのなら、彼女の願いに頷いたからには、ちゃんと答えなくては。
もちろん、日本に帰ることは大事だが、それは少なくとも彼女が納得できた時でなければ。
明は、そう思った。