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第69話

いきなり修学旅行突入ですです。

もっと前段階がありましたが、一度原稿が消えてメンタル的に気力がないので、要点だけ抑え完結重視で認めます、

 修学旅行は三泊四日の仙台→盛岡の東北の旅となる。


 初日の今日は、松島や仙台市内周辺の観光地をあら方見学し、歴史についてうんたらかんたらと話しを聞かされて市内のホテルへとチェックインした。




 2人部屋が殆どだけど、なかには3人部屋があり、僕とと由樹、柿沼は迷うこと無くその部屋を選んだ。


 それでも、クラスの中心人物である由樹と柿沼がいるせいで、他の人達も僕がいる部屋をへと集まり、たまり場になっていた。



 こういう時に必ずと言って話題になるのが恋愛絡みについて。


 夏の祭りに、椿に告白をして玉砕をした関口が槍玉に挙げられ、根掘り葉掘りと詮索されていた。まさに死体蹴りだけど、「修学旅行だから」という大義名分を授かった強みからか、皆に容赦ない。


 その大義名分の力は由樹にまで及んでいた。



 文化祭の一件で、由樹と皇さんとの親睦が深まったのは明らかだった。よく2人で会話をする光景も目撃するし、と額縁に飾っておきたいくらい「ああ、絵になるな」と、感嘆すらする。



 由樹は、「そういうのじゃないから」と朗らかな笑みを湛えて否定をするけど、由樹の恋愛観は未だに謎。


 中学時代も多くの女子に人気があったにも関わらず、浮ついた噂は1つも立たなかった。これって凄いことなんじゃないか?



 その後、突如始まった麻雀に巻きまれ、対々和を積んでいたら四暗刻も狙えそうになり、欲を張ったらソッコーで捨て牌でロンされた。




◇◆




 修学旅行の2日目は盛岡に移動し、自由行動を取った。


 わんこそばはかかせないとのことでチャレンジをしてみたけど、45杯とまずまずの成績を収めた。


 ちなみに男性平均は70~80杯辺りらしく、柿沼は200杯近くをツルっとたいらげていた。本人曰く、「盛岡冷麺も食いたいからこれでも抑えた」とのこと。



 宿泊は旅館ホテルで、部屋の過ごし方は昨日を変わりなかった。


 しかし、由樹に「ちょっと外を散歩しないか?」と誘われ、こんなイケメンに誘われたら断る理由もないのでホイホイ着いていった。



 東北の秋口の夜は随分と冷える。


 周りは灯りが少なく、薄暗い群青の空には沢山の星が散りばめられている。東京に住んでいたら、一生見られない景色だ。



 こんな素敵な絶景を男子2人で歩くなんて、僕たちは何をしているんだろうね。


 そんな会話から、唐突に由樹が口にした。



「なぁ、トラ。俺が中学校の時に好きだった人って、わかるか?」


「・・・え、由樹って好きな人いたの!?」



 ロドリゴ・ドゥテルテが不殺主義を訴えるくらいに意外だったので、つい質問の答えではなく内容を聞き返してしまう。



「俺だって男だぞ、当たり前だ」


「え、由樹の股ってなにもないツルツルなんじゃ───」


「───トラ」由樹は僕の言葉を断ち切った。その声は、先が丹念に研がれているように鋭利に聞こえる。「割と真面目な質問なんだ」



本当に、今後の人生がかかっているみたいに逼迫していた。思わず息を呑む。こんな由樹は初めてだ。だから、思考を切り替えて熟考する。



「○○○とか?」


 中学でも人気があった女子の名前を口にしたけど、由樹は何も言わずに首を横に振った。


 その後も何人もの名前を挙げたけど、相変わらず首を横に振るだけ。本当に由樹の眼鏡にかなう人なんているんだろうか。それとも、一種のとんちみたいなものなんだろうか。答えは「青春」みたいな。



「じゃあ椿とか」



 何の意味もなく、消去法の1人として口にした名前だけど、そこで初めて由樹に違った動きがあった。


 いつまでも首を振らずに黙って、それから「そうだよ」と呟いた。



「・・・・・・・え、椿!?」


「あぁ、お前の幼馴染の、椿だ」



 頭の内側から鈍器で殴られたような強い衝撃が走る。


 あ、嘘、え?


 本当に?そんな態度は一度も見せなかったし、2人が話している様子をあまり見たことがなかったからいまいちピンとこない。



 少しして、思考が回るようになり気づく。



「あ、でも、『好きだった』って・・・」


「あぁ、失恋だな」


「・・・告白したの?」



 僕も大義名分を振りかざすと、「してないけど、好きなやつがいるっぽいから諦めた」と答える。



「あ、椿にも好きな人いたのか!」



 次から次へと衝撃事実が舞い込んできて、頭の処理が追いつかずぴえんだ。



「柊が好きなのは・・・トラ、お前だよ」


「・・いやいや、それは流石に」



 一瞬逡巡する様子を見せ、「それ、本気で言っているのか?」と哀れんだ。



「そりゃ、家族同士の付き合いもあるけど・・・」


「俺は今さら驚かないけどな、このご時世に異性の同級生と家族ぐるみで仲が良いって、相当な感情じゃなきゃありえないだろ」



「そう・・なの?」


「はぁ・・・本当にどうしてトラみたいな奴に負けたんだ俺は」



「待って待って、まだ椿が僕を・・・」



 その先を口にしようとした瞬間頭の中に様々な光景が浮かんでは消えていった。

 それは、仲直りをした冬の公園だったり、僕の家で料理を振る舞う姿だったり、世話を焼いてくれる光景だったり。



「いや、でも、僕なんかに、そんなありえないよ」




 由樹の言葉を否定し、話から逃れようとするけど、由樹ゆきがそれを逃さない。



「いいさ、それは後からわかることだし。それより、トラ、俺が今好きな人・・・わかるか?」



 何となく、心当たりはあるけど、でも、どうしてもその名前を口にするのが躊躇われた。


 これ以上、人との関係がゴチャゴチャになるのは嫌だから。



「・・・皇さん?」



 恐る恐る言うと、由樹の口角の片方が上がり、その顔すら見惚れてしまうほど格好良かった。


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