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第19話

 2年に進級できるかどうかの期末考査まであと2週間となった。



 毎回テストには僕なりに万全を期して挑んでいるし、これからもそうするつもりだけど、正直今回は少し自信がない。



 理由は、皇さんとか皇さんのせいで授業に集中できない日が多くなっているからだ。




 ここは一度、(ふんどし)を締め直す必要がありそうだ。






 それから期末考査までの間は何事もなく授業をこなし、自宅に帰っては勉強をして寝るという、本来学生が成すべきの味気ない生活を過ごしていた。




 今回も学年一位を目指しているであろう皇さんも、流石に僕なんかと構っている時間はないらしく、放課後に声をかけられることはなかった。




 僕にとっても、最近少し弛んでいた気がするし、皇さんと会わないのは都合が良いといえば良いけど、非日常の刺激が足りないというか、何か物足りない気がする。それこそ、所々ピースが抜けているパズルのように。





 学校全体の雰囲気も、期末考査によって張り詰めていた。




 本番まで後数日、ここを乗り切れば春休み、入学式、そして新学期が始まる。

 



 そして、いよいよ期末考査当日を迎えた。十全・・・とはいかないけど、それなりに努力をしてきた成果を発揮するだけだ。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆





「はぅあ~~~~~~~」




 無事期末考査を無事終えた僕は、自宅のリビングでひたすら開放感の海に浸っていた。ちなみに結果としては、まぁまぁといった手応えを得られた。




 期末考査終了後は、学校全体が弛緩した空気の中で消化試合のような授業を聞き流し、終業式を終えて春休みを迎えて今に至る。




 だがここで、思いもよらない事態が発生する。嘘、必然です。部活動をしていない僕にはたっぷりと時間が残されていた。




 つまり暇っ・・!


 圧倒的退屈っ・・!






 新学期まで残り数日と迫ったけど、やっぱり家の中で毎日陽を見ずに過ごすにも限度がある。ここら辺でちょっとしたスパイスが欲しい。




 お昼にテレビの「笑っていっすか?」をソファの上でワクドキしながら見ているときだった。




「あれ、お兄もしかしなくても暇?」




 背後から無遠慮な声が聞こえたので、僕は上体のみを反らして振り返る。はい、ご存知妹の比奈ちゃん登場です。




「え、これが暇に見える?」



「うん」



「笑っていっすか?の次はヒルナンデスケド!?を見るから忙しいんだよね、ははは」




 僕は確かに暇だけど、だからってどんな用事でも欲しいってわけじゃない。ましてや、妹が「暇?」って聞く時は大抵ろくなことがない。申し訳ないが、僕じゃなく他をあたってもらおう。



 


 ◇◆◇◆◇◆◇◆






 家庭内ヒエラルキー最下層の僕は、現在妹と池袋へと訪れていた。




「何買うの?」



「えーっと、服とか・・小物とか」




 春の大バーゲンセールで服の安売りが池袋で開催されていて、友達と行く予定だった比奈だったが、友達がぎっくり腰で来られなくなったらしい。・・・・ぎっくり腰って、友達いくつだよ・・・・。




 なので、暇な僕を見て荷物持ちとして連れてきたとの事。




 会場には春休みの影響により、平日にも関わらず人がうじゃうじゃといた。一人一人が思うがままに動くので、気をつけて歩かないとすぐに人と接触してしまいそうで危ない。




  

「早くしないと商品無くなっちゃう!」




 比奈が先駆けとして敵軍へ正面から突っ込んでいく勇ましい武士のように、人混みの中へ「おりゃーー」とばかりに突っ込んでいく。そして、戦場で死闘を繰り広げるが如く商品を掴み、品定めしては戻して他の商品を掴んでは戻してを繰り返す。




 御眼鏡に適った商品は荷持である僕にポイポイ渡して、そして新たな仲間を見つけるために戦場を駆け抜ける・・・・・・・。ネット通販じゃダメなんですか?




 僕は殿として遠くから見守ることにした。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆




 ある程度比奈の買い物が済んだので、僕たちは一息つくことにした。



 屋台でチーズ入りのよくわからないアメリカンドッグを買って、その爆発的なカロリーに戸惑いながらもベンチで座って食べる。年頃の可愛い妹と外出して、一緒に屋台の食べ物を食べるとか最高かよ。ちなみに何故か僕の奢りなので、兄として冥利に尽きます。






 新大久保でも売ってそうなよくわからないアメリカンドッグを食べ終えた僕は、比奈に提案もといお願いをした。





「もう買う物がなかったら帰ろうよ。僕、人多いところ苦手だ」



「東京生まれ東京育ちなのに?」


「東京生まれ東京育ちなのに」




 それを言ったらHIPHOP育ちになるし、悪そうな奴はだいたい友達になっちゃう。親にだって迷惑をかけてきたことになるけど。僕はアウトローじゃない。





「お兄は欲しいモノとか無いの?」





 「欲しいモノ・・・」 の独り言の後、僕が今一番欲しいモノを思いついたので「身長!」と答えた。




「なんで一生手に入らないモノを欲しがるの?」




「一生手に入らない!?」




 比奈ちゃん!?それは、それだけは僕に言っちゃダメなやつだよ!?



 ショックでボディブローのようにじわじわと効いて足にくる。そして、比奈の言葉は隕石のように僕の心にクレーターを作りましたとさ。




「そんなことより、本当に欲しいモノないの?」



「そんなことより!?」




 重ね重ね酷いよ比奈ちゃん!?よりにもよって僕の一番の望みを「そんなことより」だなんてっ!





 四角いリングのコーナーに座りながら全身白くなっている気持ちでいると、比奈が「シュシュが欲しいって言ってたよ」と教えてくれた・・・はいいけど。




「誰が?」



「椿ちゃん」



「へぇ」



 ってか、比奈ちゃんも椿と同様に主語を言わない側の人間なんですか?僕の敵になるの?




「・・・・・・・・僕が買うの?」




「さぁ、お兄に任せる」





 比奈は不敵に笑いながら僕を試してきた。

ご覧頂きありがとうございます^^

ようやく物語が大きく動く新学期前まで進みました(;´Д`)


執筆ってこんなに難しいのかと驚愕しながらゆっくりと書き上げています。

まだまだ続きます(多分)ので、これからもお付き合いください。

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