第13話
11話の翌日のお話です
テテテンテンテンテンテンテンテン・・・テン・テテテ、テテテンテンテンテンテンテンテン・・・テン・テテテ、テテテンテンテンテンテンテンテン・・・テン・テテテ
朝はいつもオレンジ社のI,amPhoneのアラームで起床する。時刻はAM7時。目が覚めたら上に妹が乗っているとか、幼馴染・・・椿が起こしに来たところで、タイミング悪く僕の朝の生理現象に出くわして「サイテー」とか言われるイベントは一度もないし今後もありません。
自室のある2階から降りて洗面所へ向かう。妹の比奈が先に洗面台を使っていたので「おはよう」といいつつ順番を待つ。
鏡越しで僕を見ながら「風邪引かなかったんだ?」と、意味ありげな発言をする比奈だが、まずは「おはよう」の挨拶が先だろ。お兄ちゃんそういうのは厳しいんだからね。でも、今日のところは許しちゃう、と思いながら「風邪なんて引いてないぞ」と答える。
「昨日、椿ちゃんと長い間外に居たんでしょ?」
「あ~はいはい。なんでもないなんでもない」
母さんといい妹といい、なんで下世話になると生き生きするの?生きるために必要なマナかチャクラなの?適当にあしらって登校の準備を着々をこなす。
特に朝の食事は大事だ。しっかり栄養を補給しないと、体の成長の悪影響がでてしまう。僕が言うと信憑性ないけど。
なんだかんだで、いつも通りの時間に自宅を出た。
朝の登校描写は割愛かな。特に変わった事なんて起きないし。
強いて言うなら、体が大きくて強面で異性と縁がなさそうな柿沼が、朝から女子生徒と一緒に歩いているくらいか・・・・・・・な、なにぃぃ!?
◇◆◇◆◇◆◇◆
「誰よ!!朝にいた隣の女は!!?」
「おう、トラか。おはよう」
「あ、うん。おはよー。じゃなくて!今朝の女は誰かって聞いてるのだけれど!!?」
教室について、僕は早速柿沼に問いただした。口調がオネェかヒステリックな人みたいになっているけどそんな事は知らん。必死なんですよこっちも。
「あの子か・・・実はな、先週の金曜から、あの子と付き合う事になってな」
その時、僕に衝撃が走った。ざわざわする。
「最近頻繁に柔道部に見学しに来るもんで、てっきり入部希望かと思って声をかけていたんだが・・告白されて付き合ってくれって言われてな」
照れてはにかむ柿沼の顔を見て、僕の平常はピシピシとひびが割れ音を立てて崩れた。
・・・・・・・・・・・・・・・こ、こ、こ
「この裏切り者ーー!」
「いや、別に彼女作らない同盟を結んだ覚えはないが」
「なんかこう、暗黙ってあるだろう!?」
「知らん」
きーーーーーーーー!!もう柿沼なんて知らないんだから!!んもうっ!サイッテーーー!!!!!!!
「おはよう。朝からどうした?」
騒ぎを嗅ぎつけた由樹が話に加わってきた。僕はジャイ◯ンに告げ口するお金持ちの息子みたいに「あのね、聞いて!!実はかくかくしかじかで!本当にサイッテーよね!!」とすごい剣幕で説明してみせた。
説明を聞き終えた由樹は「なるほど」、と呟いた後「おめでとう、柿沼」と、メロンソーダやサイダーよりも爽やかに言った。くそ、素直に祝福されるとますます僕の立場が危うくなるじゃないか。
「んもうっ!ふたりとも知らないんだから!覚えておきなさい!!」
「朝からどうしたんだ?頭のネジ外れたか?」と柿沼。
「うるさい!このロリコン!」
「ロリコンじゃないぞ?」
本当にもう知らないんだからっ!と僕は教室を飛び出したが、すぐHRの予鈴が鳴ってのでそそくさと引き返した。
◇◆◇◆◇◆◇◆
昼になる頃には、すっかりキャラ作りを忘れていた。組み合わせを無視した栄養重視の弁当を突きながら朝の事を掘り返す。
「柿沼がねぇ・・・・なんか、『交際をしている暇があったら練習!』みたいな熱血な見た目してるから想像つかないな」
僕がしみじみすると、「俺は恋愛にだって興味あるぞ」と柿沼が心外だとばかりにムッとした。
「由樹はそこんとこ、どうなの?いい加減噂があってもいいくらいなのに」
そう言った瞬間、女子生徒がこちらの会話を盗み聞きしているような、これからの由樹の言葉を漏らさず受信するほどの尖った神経を巡らせる気配が教室全体を包む。Wi-Fiも繋がりそうだ。
気づいているのかいないのか「俺だって興味があるけど、誰とでもって気持ちにはなれないかな」と余裕たっぷりに聞こえる発言をしなさった。自覚はないんだろうけど、それは選べる側の台詞なんだよなぁ。
「そういうトラこそどうなんだよ」
「僕は由樹や柿沼と違って全然だ」とお茶を濁してやり過ごし、残りの煮干しとチーズを交互に食べた。皇さんにはプロポーズしたけど、別にお付き合いをしているわけではなさそうだし嘘はついてないはず。
◇◆◇◆◇◆◇◆
食後、僕たち3人はとある共通の目的の元、一体感を以て神聖な約束の場所へ赴くため廊下を颯爽と歩いていた。所謂連れションです。
その時、華やかな集団が向かいからやってきた。その中には椿も含まれていたが、あいつは白いマスクをしていた。もしかして・・・・・。
椿は僕に気づくと、渡り鳥の一匹が集団から抜け出すようにこちらへ歩いてきて、僕の前へと向かい合った。椿は背が高いのでめちゃくちゃ見下されてる。
「トラのせいで風邪ひいた」
・・やっぱりそうだったか。
「寒い中ブランコなんかで遊ぶからだぞ」
「体ダルい」
「保健室いけば?」
「付き添いは?」
「友達に頼めよ」
今までお互いわざと触れ合わないようにしていた距離感が嘘みたいになくなっている。周囲も物珍しい光景をみるように僕たちを観察していた。
「おばさんと比奈ちゃんに宜しくいっておいてね」
「わかった」
椿は「それじゃ」と、手を胸の高さまで中途半端に上げながら集団へ合流した。水中に放り込まれピラニアの餌食となった椿は、「なに?どういう事!?」などと、次々と質問攻めの標的とされ、話のネタにされていた。
それはこちらでも同じで、まず由樹が「なんだなんだ、いつの間にそんな仲まで進展したんだ?」と、ニヤつきながら茶化し、「お前も人をどうこう言えんじゃないか」と柿沼が不満げに抗議する。
「違う違う、全然そんなんじゃないんだって」とお決まりの否定をしている最中だった。背後から視線・・いや、死線を感じた。
ギギギと錆びれた音を出しながら振り返ると、ブリザード皇さんがこちらを見ていた。その藍色の瞳は、全てを凍らすほど冷たかった。
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興味のある方はいないと思うので、「見てやってもいい」って方は是非ご覧下さい!