第三研究室研究日誌 1/3
随分とボロボロになっている古い本。
中身を見るに日記のようなものらしい。
だいたい一週間に一度ほどのペースで更新されている。
世界の真理を知りたければこれを読んでおけと司書さんに手渡された。
□月○日
今月の定期報告が完了した。第7世代魔物の出来にはマルコシアス大臣も満足しているようだった。
実用化は近いのかもしれない。
また、マルコシアス大臣からの新しい方針として量より質で攻めるような強力な個体が依頼された。
現在個体として強さが追求された世代は第3世代が唯一であることを考えるに、第3世代を下地として研究を進めるのが懸命だろう。
□月□日
非常に興味深い現象が起きた。
いつもと同じように擬似精霊憑き加工を施した際、なんと本当に適応してしまったのだ。
その実験体は伝説と同じように目が青く染まり、恐ろしい力を持って暴れまわった。
その力は凄まじく、まだ完全に精霊が降りきっていないというのに研究室の三分の一が崩壊、第1から第7世代までの魔物全てを使ってようやく殺すことができたが、此方もかなりの数を失った。
どうやら素質がある素体に擬似精霊憑き加工を施した場合は真の精霊憑き現象が実現してしまうようだ。
見立てによると同じ種類の素体を使ったはずなのに擬似精霊憑き加工がなされた素体と真の精霊憑き現象が起きた素体では戦闘力に3倍近い差があったように見える。
また、真の精霊憑き現象には擬似精霊憑き加工には効果があった洗脳魔法が効かなかった。どうやら特殊な魔法耐性があるようだ。
多くの点において精霊憑き現象とは非常に興味深い。
今までの素体の数を考えるに万に1つもないような可能性のようだが、是非とも今度はちゃんと対策した状態で再び見えたいものだ。
□月△日
強力な力をもつ魔物の開発に行き詰まっている。
魔法陣を身体中に刻んだ第8世代、元々生態系の頂点に君臨する肉食獣を素体とした第9世代などいくつか試してみたところ、確かに強力ではあるのだかあるのだが、第3世代との戦闘力差が1.5倍を超えることがなく、大臣殿の言う「数より質」に至っていないように思える。
どれだけ地の馬力を上げたところで、上限の頭打ちが来てしまっているのだ。
いや、そうか、そうだ。引き出せる力に頭打ちが来ているのなら引き出せる力の源を増やせばいいだけではないか、そうだ。1つの素体に2つの精霊を降ろす。これが成功したならば恐らくその魔物は今までとは桁違いの戦闘力を発揮するはず。もしかすると真の精霊憑きの戦闘力にまで届くかもしれない。2つの精霊を降ろすのはそう難しいことではない。擬似精霊憑き加工の魔法陣の中心部を少し弄れば恐らくなんとなるだろう。いける、これならばいけるぞ。
次の定期報告まで時間がない。実験を急がなければ。