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お祝いパーティー 1

 魔術学院で予選が行われた事により、学院は予選の日から五日間休みになっている。今日は予選が終わってから四日目になる。


 今日もいつも通りの快晴で、気持ちが良い天気になっている。そんな中、今日はラトリーとドメインがお城の中に来る事になっている。それも誰でも入れる場所では無く、俺と柊が過ごしている部屋まで入れるようになっているのだ。


 普段はお城の中に入れたとしても、そこまで奥に入る事が出来ない。俺や柊が生活をしている場所は一般人が入る事が出来ない場所になっている。だが、俺と柊が予選を突破したため、フィアナとアーニャがお祝いパーティを開いてくれるらしい。だが、その四人だけで行うのも寂しいという事で、城下町が襲撃された時に動いてくれた二人を招待しようと、意外にもギルバードが提案したのだ。


 フィアナもその事には賛成で、いつかお礼をしたいと思って居たようだ。だからこそ、今回は特別で俺の部屋まで入れる事になった、当然、城の中を移動する時はギルバードや、騎士が付添う事になる。だが、二人はそれでも来たいと言っていた。


 フィアナやギルバードに誘われたとなれば断る事は出来ないとも言っていた。だが、二人共嫌々参加する訳では無いようなので良かった。


 俺は身支度を行うと、そのままフィアナの部屋に向かう。柊はまだ寝ている可能性があるため、後で起こす事にする。とりあえず、今はフィアナに何時ごろに連れてこればいいかを確認する。一応、二人には十時頃に城下町の広場で待ってもらっているが、時間が悪ければ城下町で時間を潰さなければならない。今まで一般人を入れた事が無い場所なので、それなりに準備なども掛かるだろう。


 フィアナの部屋の前に辿り着くと、左右に居る騎士の人に会釈をし、扉をノックした。


「入ってください」


 そう言われ、俺は扉を開けて中に入る。そして、視界に映るフィアナに目を奪われる。なんとフィアナは普段着ているドレス姿では無く、薄いレースに包まれた服を着ていたのだ。普段よりも肌の見える部分が多く、そして何より物凄く似合っている。普段はドレスの下に隠されている豊満な胸が薄着のため、しっかりと浮き出ている。見た目も可愛いため、男ならば誰でも釘付けになるだろう。


「どうしたんですか?そんなに見て?」


「いや……特に何も無い」


 しかし、フィアナは普段よりも遥かに薄着であるにも関わらず、一切気にしていない様子だった。むしろ、どうして見られているか本当に理解出来ていない様子だった。


「そうですか。不思議なワタルです」


 顎に人差し指を添えて、可愛らしく首を傾げる仕草に心臓が高鳴る。さらに、薄着のため豊満な胸も動きによって揺れる。当然のように視線は揺れる胸に向かう。


「それで、何かあったのですか?もしかして、お呼びする二人についてですか?」


 胸に視線が向いていた事に気が付かれていないようだ。俺は少しだけほっとして、本題に入る事にする。


「今日は何時頃に連れてきたら良いんだ?一応、城下町の広場で十時に集合してるけど……」


「その時間で構いませんよ。一応、名目上ギルバードや騎士の人に同行して貰いますが、この城下町のために戦ってくれた人達です。問題になる行動はしないでしょう。だから、その時間に転送魔方陣で城内に連れてきて貰って大丈夫です」


「わかった。それなら十時頃に連れてくるよ。地下室に転送で大丈夫か?」


「はい、大丈夫です。一応、城内に入ったらギルバードの元に向かってください。部屋に居ると思います。後ーーー」


 すると、フィアナは俺に背中を向け、歩き出した。タンスがある方向に向かい、中から何か取り出す。そして、俺の元に持って来た。


「渡すのを忘れてましたが、これを城内ではぶら下げるようにしてください」


 フィアナの手から、首掛け式のカードホルダーを渡される。会社に勤めている人が、身分証明のために首からぶら下げているのと同じ物だ。中には名刺などが入れられるようになっている。


「一応、城内の者に話は通ってますが、勘違いをして大騒ぎになる可能性もあります。これは今日一日この城のある程度の場所は入れるという証明になります」


 カードホルダーの中には、メロディア大陸の紋章が描かれた名刺のような物が入って要る。フィアナの名前も書いているため、証明書のような物だろう。これで、ドメインとラトリーは何も怪しまれずに城内に居られるという事だ。


「わかった。城の中に到着すれば身に着けるように言うよ」


「ありがとうございます!楽しいお祝いパーティーになればいいですね!」


「ああ、絶対になるよ」


 今日はフィアナも俺の部屋に来るそうだ。二人のお礼も兼ねているため、どうしても参加すると言っていた。それに、ドメインとラトリーならば、何も心配はいらない。警戒する事も無いだろう。


 それに王女であるフィアナにもいい機会だろう。多分だが、この大陸でフィアナと対等に話す事が出来るのはギルバードやアーニャと言った特別な人だけだろう。その二人でもやはり、王女であるフィアナには遠慮してしまう。ラトリーやドメインも遠慮はするだろうが、それでも話せる相手になってほしい。学院の生徒と話す機会など決して多くないはずだ。少しでも他の人と交流出来て、尚且つ信頼出来る相手になってほしい。


「それでは私は準備がありますので……」


「ああ、俺も柊を起こして迎えに行ってくるよ」


「お願いします!」


 フィアナの笑顔に見送られ、俺は部屋を後にする。それから真っ先に自分の部屋に戻り、渡されたカードホルダーを机の上に置き、隣の部屋に居る柊を起こしに行く。


「起きてるか、それそろ起きないと準備もあるだろ」


 俺はノックをしながら声を掛ける。すると、中から慌てた物音が聞こえてくる。少しの間だけが空いたが返事が返って来た。


「起きてるのだ!少しだけ待ってほしいのだ!」


 珍しく何か慌てた声を上げる柊が気になる。何かあった可能性もあるが、重要な事では無いだろう。だが、気にもなるので後で聞いてみよう。今は準備を終わらせる事を優先させた方が良いだろう。


「わかったよ。部屋の前に居るから」


「了解なのだ!直ぐに終わらせるのだ!」


 中から元気な声が聞えてくると同時に俺は、扉から離れる。騒音や声を荒げないと聞こえないとはいえ、扉の前に居ると聞こえてほしくない音が聞こえる可能性もある。だからこそ、少し離れた窓の外を眺める事にした。


 窓の外では、今でも襲撃の後が残っている。騎士など村人が今でも直す事に専念しているだろうが、かなり良くなってきた。一部を除いてほとんど治っている。被害も大きな物では無かったのが幸いしているのだろう。


(それにしても、神種選定ももうすぐか)


 予選が終えた事により、神種選定も近づいた。この異世界転生物の物語も中盤に差し掛かっただろう。今までの物語と比べてかなり長い滞在になるが、現実世界では時間は経過していないので問題は無い。だが、気になる事はある。


(この物語の完結は神種選定に優勝する事なのだろうか?)


 ほとんどの確率で優勝する事が条件だろう。しかし、優勝するとフィアナの両親が覆われている氷が解ける。それでフィアナの願いも叶い、物語は完結するーーーというのが、今の予想だ。物語の進みからしても、この結果が一番納得の行く物になるだろう。しかし、フィアナの両親を見た時に感じた物も気になる。


 氷漬けになっている二人からは、強い意思を感じたのだ。今、俺が花恋のために物語の世界に来ているように。フィアナが両親の氷を溶かしたいと思って居るようにーーーそんな強い意思が感じられる。フィアナは襲われたように見えると言っていたが、俺にはそう見えなかった事が気になる。


 単純に俺の勘違いであれば良いのだが、今は物語の主人公という事になっている。当然、主人公補正が掛かっている。その俺がこう感じたという事は何かあるのでは無いか?今でもそう思って居る。


 しかし、誰も氷漬けになった所を見ていないので、理由も原因も分からないままだ。だからこそ、確信を持って断言する事が出来ないが……もし、物語の完結を妨げる出来事が起きるとすれば、間違いなくここでは無いだろうか。


「とにかく、無いごとも無く進めば良いが……」


「何がなのだ?」


 後ろを振り向くと、柊が可愛らしく首を傾げながら不思議そうにしていた。どうやら、心の中で呟いていたつもりだったが、声に出ていたようだ。


「なんでもないよ。それよりも行こうか」


「行くのだ!!」


 俺の言葉を信頼したのか、柊は深く聞く事無く、廊下を進む。とりあえず、その場面にならなければ物語はどう転ぶか誰にも変わらない。花恋が出てくる場面があれば良いのだが、期待はしない方が良いだろう。


 とりあえず、今は城下町の広場で待っているであろう二人を迎えに行く事が優先だ。


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