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部活動???

物語の世界に行けると言われてから二週間程度が経過した。願いを叶えることが出来ると言われている本は、時間、場所など関係なくランダムに物語を語りだすそうだ。俺達が行きたい時に行けるというものではないので、実質、本次第だ。


 写真の花恋に「おはよう」と挨拶をし、ゆっくりと学校に向かう。途中コンビニに寄り、朝食と昼食を購入してから向かった。異世界に行ってから、非現実的な出来事は何も起きていない。ボランティア部に入部したという事以外、全く変わらない毎日を送っている。


 ボランティア部に俺が入部したという事は一日経たないで広まった。誰が広めたかは定かではないが、その広がり具合は物凄いスピードだった。今まで男子が部室に入ったという話すら聞かなかったボランティア部に入部したのだから同然と言えば当然なのだが、それにしても物凄い速さだった。


 入部届けを職員室に持っていた時は、立花先輩が話しをしてくれた先生以外はみんな驚き、色々質問された。本当の内容を話す訳にも行かず、適当に話をしたが、やはりそれだけ驚く出来事なのだと思い知った。


 彩以外のクラスメイトや、他の学年の男子にも色々説明されたが、全て適当に話しを合わせてなんとか納得させることに成功した。だが、納得のいかない生徒も多く、入部したいという人が何人も居たが、全て立花先輩に断られていた。


「ご、ごめんなさい……航は特別なの……」


 と、普段なら絶対に出すことが無い声と、両手をモジモジさせる仕草は可愛かったが、違和感しかなかった。だが、名演技だったのは間違いなく、呆然とした姿で去っていく男子が多数居た。勿論、呼び方のその時だけ航と呼び捨てだった。


「おはようございます」


 HRが終わり、全ての授業が終了すると俺は部室に足を運び、先輩達が居ることを確認してから挨拶をした。


「おはようー」


「おはよう、航君!」


「来たか、我の配下よ」


 彩と一緒に来た俺は、適当に椅子に座り、みんなの方を向く。こうして集まっているが、この二週間、特にすることはない。部活としての活動もしているらしいのだが、そもそもボランティア部がどう言った活動をしているのかは詳しくはしらない。


 彩に手伝いをしているという話を聞いたことが何度かあるが、それ以外は何も分って居ない。今度聞いてみようと思った。


「はい、全員集まったわね!今日は久しぶりに部活動をします!!ずっと、お茶飲んだり、話をしているだけじゃないってとこ、星野君に見せるわよ!!」


「おお、今日はなんだかいつもよりやる気あるね六花♪どうしたんだろ?頭でも打ったのかな??」


「ありえますね!立花先輩が部活を率先してやろうと言い出すなんて!」


「我が入部してからこれで二度目の部活動なのだ!」


「そんなに、部活してないんですね……」


 部活の詳しい内容を聞こうとしていた矢先、部活をする見たいなので、いいタイミングだった。だが、こうして四人の話を聞いているだけで、いかにもボランティア部が部室でダラダラしているだけなのか分かってしまった。


「してるわよ!いつも職員室前にある願い箱は見てるわ!!」


「なんですか、その願い箱って……」


 この学校に一年少し居るが、初めて聞いた単語だった。


「航も知っているでしょ??職員室の前にある青い箱のことだよ」


「ああ、あの箱のことか……」


 そういえば、職員室の前に青い箱があったのを思い出した。あれ願い箱っていう名前が付いていたのか。普通に青い箱って呼んでいた。


「あのボックスには、皆のたましいが集められるのだ」


「ようするに、ボランティア部はあの箱に入れられた手伝って欲しい事とかを手伝う部活なんだよ♪」


 なるほど、こちらから動くのではなく、お願いが無いとまず、部活が出来ないのか。それなら部活をあまりしていない理由も納得できる。中身待ちという訳か。


「航は活用したことないの??」


「あるように見えるか??」


「ごめん、全く見えない!航なら何でも手伝ってあげたのに!!」


「すごい贔屓な部活だな……。ただの青い箱かと思っていたから、ボランティア部の物だと知って居たら……」


「それでも星野君は活用しなそうだわ」


 苦笑いを浮かべる立花先輩に、俺も同じく苦笑いを浮かべ相槌をする。全くその通りだと思う。他の人に頼みたい事など今考えても全く浮かんでこない。しいていえば花恋のことだが、他の人に相談してどうこうなる問題ではないので、結局の所、活用しないだろう。


 逆に知って居たら彩が居る部活と知っているので、余計に活用しなくなりそうだ。


「まぁいいわ。活用するしないは、個人の自由だもの。私が決めることじゃないわ。それよりも、部活の内容よ!」


 立花先輩は足元から職員室前に置いてある青い箱を取り出した。今まで尻目で見る程度だったので、こうして近くで見るのは初めてだ。


「立花先輩……本当に部活するんですね。私、冗談だと思ってました」


「我もなのだ」


「ちなみに私も♪」


 立花先輩の部内での信頼度が分かった気がする。今までそれぐらいボランティア部としての活動をしていなかったのかと思ってしまう。


 立花先輩は部活をするのを嫌かもしれないが、俺は中身を見たことがないので、みんながどんな内容で出しているのか少し気になる。


「ひどいわね……まぁいいわ。どうせ今回もくだらないのが多いだろうと思って見たら、面白そうな内容があったからすることにしたのよ!」


 満面の笑みで言う先輩は、箱に中身を机の上にばら撒く。俺が思っていた以上に紙が入っていて驚いたが、その紙を一枚手に取り、中身を見てみると、立花先輩が部活をしたくない理由がなんとなく分かった気がした。


『僕はボランティ部に入部したいです!どうしたら入部出来るか教えてください!!入部できるならなんでもします!!床磨きや、靴磨きでもなんでもするので入部させてください!!!』


「…………」


「ね?私が部活動したくない理由が理解出来るでしょ??」


 先輩は紙の中身を少し見ては、近くに置いてあるゴミ箱に入れていく。その様子は飽き飽きしている感じが伝わってきて、毎回こんな内容ばかりなのだろうと察することが出来る。


『立花先輩!仙道先輩好きです!僕と付き合ってください!!むしろ突き合ってください!!!』


「これに関しては内容最低だよね……私でも軽く引いちゃうよ……」


「故意に書いているとしか思えないのだ」


「しかも、私と六花限定だしね……」


 他にもこのような内容ばかりで、もはや一枚一枚見ていくことすら苦痛に感じるほどだった。なるほど、これなら俺が部長であっても部活動は頻繁には行わないだろう。もはや、中身を見ずに捨ててしまうかもしれない。


「けど、たまにちゃんとしたお手伝いの内容の人もいるのよね。だから、一枚一枚見ていくしかないわ」


 嫌そうな顔をしながら見ていく先輩。そんな中、一人そわそわしている柊の姿が視界に入った。少し額に汗をかいているようにも見える。


「どうしたんだ??そんな妙にそわそわして。トイレか??」


「ち、違うもん!!と、トイレだったら我慢せずに行くもん!!デリカシーが無いのだ!!!」


 普段作っているキャラではなく、素の状態の柊が居た。何か隠しているに違いない。入部して二週間しか経過していないが、それぐらい分かるようになってきた。


「何かそわそわしてるなって思ったけど、トイレかって……流石航だね。このラノベ主人公!!って感じの乗りかな??」


「そんな乗り要らないのだ!我は航先輩の妹じゃないのだ!!」


「一体なんの話してるんだ……」


「航もいずれ分かるよ!だから!だから今は関わるな」


 ドヤ顔で言う彩だが、少し可愛いと思ってしまった自分が嫌だった。どうせアニメの話だろうが、当然の如く、彩と柊以外誰も付いていけない。


「ふぅ……終わったわね」


 俺達が下らない話をしていた間に立花先輩は願い箱に入っていた紙を全て見終わったようだ。机の上に一枚も無いということは全てゴミ箱の中に入っているということだろう。


「久しぶりにこうして中身を見たけど、やっぱり内容はひどかったね……六花が部活したくない気持ち分からなくないけど、定期的に見ないとまじめな物まで送れちゃうよ??」


「分かってるわ。けど、そんなことほとんどないわ。だからこうしてたまに見て、内容は全て確認するってぐらいがちょうどいいわ。本当にアホばっかりよこの学校……」


 ため息を吐いて、箱を床に置いた。今日の部活はこれで終わりのようだ。何もしていないが、あんな内容ばかりでは動くことは出来ないだろう。返事を返すのは馬鹿らしい……だからこそ、ゴミ箱に捨てているのだろう。


「じゃ、これでボランティア部の活動を終わりにしまう。お疲れ様でしたー」


「ちょっと待つのだ!!!」


 立花先輩の声を掻き消すほどの大声でそわそわしていた柊が叫んだ。急なことだったので、体がビクとなった俺達が、柊へと一斉に視線を向ける。


「先輩、わざと私の隠してるのだ!!」


「ん???一体何のこと??」


 笑みを含めた顔で言う先輩。明らかに知っているという顔をしているが、柊の反応を見て楽しんでいるのか、手で訳が分からないというジェスチャーをしている。


「あんなに嬉しそうに部活動します!って六花が言ってたのに、このまま終わるなんてありえないよ♪何かあるはずだよ」


「そうですね!立花先輩が楽しそうにしている時は基本的に人をからかっている時ですもんね!」


「桜さんって以外にひどいわよね」


「気のせいですよ。彩はいつでもみんなに優しいです!」


 桜が咲いたような満開の笑顔を先輩に見せる彩に、何も言えなくなったのか、ばつの悪そうな顔をして、再び口を開いた。


「まぁいいわ。それで柊さんは一体なんのことなの??」


「我も願い箱に紙入れたのに。見つからないのだ!!先輩、先にざっくり見ただろうし、抜かれてるもん!!」


「さすがの先輩でもそこまでしないだろう」


 流石に部員である柊が入れたとなれば気が付くはずだ。立花先輩でも、部員が出した紙を無かったことにはしないだろう……いや、少しはするかもしれないな。もしかしたら高確率でしてるかも……


「何のこと言ってるの??あ、もしかして、あの超痛い内容の紙??」


「そうです!!あの超痛い内容の紙です!!」


「つかさ……自分で痛いって言ったら元も子もないよ……」


「それは確かに♪」


「まぁ、自分で気が付いているだけ、まだマシだと信じよう」


「あ、痛くないもん!!普通の内容の紙だもん!!」


 勢いで自分が書いた内容の紙を痛いと言ったことに気が付いた柊だが、今更修正したところで遅い。この部室に居る全員聞いてしまっただろう。俺は心から自覚があって良かったと思っているよ……。


「あの紙ね、内容が日本語で書いてあるのに、全く意味が伝わらないから捨てちゃったわ、てへ♪」


 可愛らしく舌を出し、ウインクを決めた立花先輩。あきらかに柊をからかっている様子だった。いつも思うが、先輩は人をからかっている時が一番楽しそうで、いきいきしている。


「てへ、じゃなもん!!読めるように書いたもん!!」


「確か、星野君と一緒に買い物に行きたいとかなんとかだっけ??」


「読めてるのだ!!!」


「当たり前よ、痛い言葉の上から読みがなふってあったからね。あんなめんどくさい事するのだったら、普通に書いたらいいのに」


 柊……ワザワザそんなめんどくさいことしてたのか……てか、初めから柊自身も呼んでも内容理解出来ないこと前提で書いてたんだな……。


「俺と一緒に買い物行きたいのか??」


「う……我の配下なら我が背負う重みを持つのは当然のこと……」


「ようは荷物持ちしろってことか」


 中二病の言い方で誤魔化しているが、仄かに頬が赤いのを俺は見逃さない。たぶん、柊なりに恥ずかしいとか照れくさいという思いがあるのだろう。中身は普通の女の子なのだと自覚させられる。


「別に一緒に行ってもいいぞ??」


「え??いいの??」


「ああ、別に柊の事嫌いじゃないし、断る理由もないからな。荷物持ちでもなんでもしてやるよ」


「むむむぅ」


 隣で彩が頬を膨らませている姿が視界に入る。少し申し訳ない気分になったが、俺の勘であれば俺が肯定すれば話しが動き出すはずだ。俺はチラッと立花先輩に目を向けた。


「星野君ならそういうと思ってたわ!だからこそ、一緒に行くのは反対だわ!」


「どうして??航君が良いらないいと思うけど私自身」


「そうね、だからこそ柊さんとだけじゃなくて、ボランティア部全員で行きましょう!!」


 本来優しい立花先輩が、後輩のこういう出来事を邪魔するとは到底思えない。むしろ普段ならイベントとして、みんなで尾行しましょう!とか言っても可笑しくはない。


「星野君が入部して二週間ぐらいでしょ??これから一緒に居る時間長いのだから、一度学校じゃなくて、プライベートで集まって親睦を深めるのも悪くないはずよ!」


「なるほどね♪それはいい考えだと思うよ!つかさちゃんと彩ちゃんもそれでいい??」


「私は大丈夫です……」


「我も大丈夫なのだ……」


 頬を膨らませながら俺の方を見てくる彩と、「荷物もってくれるならみんなと一緒でもいいや」と一人でぶつぶつ言っている柊。ともかく、立花先輩の意見にみんな同意のようだった。


「今週の土曜日にするわ!!静奈は大丈夫??」


「その日は予定なかったはずだから大丈夫だよ!」


「そう、良かったわ!三人も土曜日で大丈夫??」


「俺は大丈夫ですよ」


「私達も大丈夫です」


「よかったわ!!それなら土曜日に駅前集合にしましょう!!」


「はーい」


 急遽決まったボランティア部全員で集まる予定……というか、俺の入部歓迎会??なのかわからないが、こうして俺の事を思って親睦会をしてくれるのは非常にありがたい。


 土日は彩にオススメされたアニメでも見ようかと考えていたので、予定が出来て俺も少し嬉しい。こうして遊びに行くのは中学校の部活をしている時以来だから少し楽しみでもあった。


「それなら今日は解散しましょうか!」


「そうだね♪特にやることもないもんね」


「じゃ、今日は解散しましょう!!土曜日だから忘れないでよ!ちなみに集合時間は十一時ね!一分でも遅刻したら全裸で校内逆立ちで一周してもらうから!!」


「これで六花が遅刻した時だね!」


「たぶん、この学校の全男子が立花先輩を見に来るイベントになりそうです」


「当然、航君も見に行くでしょ??」


「……いきませんよ」


「一瞬、間があったけど気のせい??」


「気のせいですよ、じゃ、俺は帰りますね」


 急いでかばんを持ち、部室を後にした。


 立花先輩ほどの可愛さを持つ人が裸で逆立ちするのであれば、当然男なら見に行くに決まっている。これで行かなければ男ではないだろう!!とは言えず俺は逃げるようにして帰路に付いたのだった。


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