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差がありすぎないか?

 決意を固めた俺は、フィアナに連れられて部屋を出る。同様に柊はアーニャに連れられて部屋を出た。


 デザイアを使用するために必要な魔力総量を量るために部屋を出たのだ。どうして別々に出る必要があるのかはイマイチ理解していないが、そう言われたので従った。


 魔力総量は数値化出来ると言っていたので、量る何かがあるのだろう。どういう風に量るのかなど説明を受けていないが、危険な物という可能性は極めて低いと思う。


「ここです」


 連れられて立ち止まると、小さな部屋の前だった。扉は木製で、他の部屋と少し違う空気を纏っている。中も薄暗く、あまりしっかりと見えない。


「結構暗いんだな」


「あ、すいません。灯りを付けます」


 フィアナは近くにあった石に手を翳すと、部屋の中に数個ある石に全て灯りがともる。


「それは一体なんだ?」


 電気という訳でも無い。仄かに輝く石には科学要素は全く感じられない。石自体が光を持って、光って居るように思える。


「これは魔石と呼ばれる物です」


「どこでもありそうな名前だな……」


「ふふ、そうですよ。でもこれはこの世界では無くてはならない物です。生活には必要不可欠な物なんですよ」


「俺たちの世界の電気のような物か」


 電気が無ければ物凄く困る。テレビは使えないどころか、夜は常に暗い家になる。水道もガスも無ければならない物だが、灯りをともす役割を考えると、電気のような物と認識した方がいいかもしれない。


「電気というのは良く分かりませんが、この魔石には文字通り、魔力が蓄積されています。私たち人間とは比べ物にならないほどの魔力があるんです」


 フィアナは小さな魔石を手に取ると、転がしながらそう言った。


「魔石に魔力を込めると、反応して灯りをともします。他にも熱を出したりなど、他にも様々な役割を持っています。便利な石なのです」


 一つで電気やガスの役割も果たすという事か。それは物凄く便利だろう。それにフィアナの言い方から察するに、あまり高価な物でも無く、珍しい物では無いのだろう。生活に必要不可欠な物が、高価な訳が無い。


 簡単に入手出来て、なおかつ手ごろな値段で購入する事が出来るのなら、物凄く便利な物だろう。


「それでは魔力総量を量りましょうか。あちらは既に始めているでしょうし」


 柊にはアーニャと騎士団長が付いている。フィアナは俺と二人きりという訳になる。普通、柊と一緒の方が良いと思うが、フィアナ自身がこの組み合わせを提案したため、こうなった。


「わかった。俺は何をしたらいいんだ?」


 部屋の中には何かある訳では無い。魔法陣がある訳でも無い。しかし、フィアナの部屋とは全く空気が違う。何かあるのは確実なのだろうが、目には見えない。


「この空間自体は魔力総量を量る物となっています。魔術……デザイアを使うとそのまま総量もわかります」


「便利だな。それも魔石が量るのか?」


「そうです。けど、量る魔石には魔力が一切蓄積されていません。使い終わった魔石を使用して、魔力総量を量ります」


 明りが灯って居る魔石以外に魔石の姿は全く見えないが、フィアナが嘘を付くとは思えない。見えないだけであるのだろう。


「魔力を使うイメージは、心に思い浮かべる事です。そして、思い浮かべた現象とさらに強く想像出来るような、詠唱を言います。手本を見せましょか?」


「いや、一回やって見るよ」


「わかりました。簡単そうに言いましたが、慣れるまでにそれなりに時間がかかります。慣れてくると魔力の制御も出来るようになりますが、とりあえず、全力でやってみてください」


 部屋でフィアナに見せてもらった時は、思い浮かべるだけで出来ると思ったが、やはりそんな簡単に使える物では無いみたいだ。魔力を制御するには、練習が居るのだろう。


「わかった」


 俺は目を瞑り、心の中に思い浮かべる。イメージはフィアナが行った炎では無く、全てを凍らせる事が出来る氷のイメージ。初めて行うので、少しだけ時間を掛ける。そして目を開けると、唱える。


「凍ってくれ」


 柊やフィアナのような詠唱は全く浮かんでこなかったので、俺は何かを凍らせたいという思いをそのまま詠唱にした。


 そして、俺の詠唱に反応するように、手の平からイメージした氷が……出なかった。


「…………」


 厳密には氷は出てきたのだが、イメージしたのとは全く違う物が出てきた。


「これはなんですか?」


 フィアナは可愛らしく首を傾げる。その仕草は純粋に気になって居るという感じだが……それは俺が聞きたかった。


 俺は全力で出来たか否かは分からないが、自分的には全力で行った。そして、結果がこれだった。


 手の平には全てを凍らせる氷どころか、冷蔵庫に入ってる氷すら出せなかった。手には雪の結晶が一つ現れただけだった。そして、俺の体温で消える。


「悪い、もう一回やってみるーーー」


「あの……ワタル。非常に申し訳にくいのですが……」


 フィアナの方に視線を向けると、申し訳なさそうな顔をしている。手には青色をした魔石を持っている。


「どうしたんだ?」


「多分ですが……それ以上行っても同じだと思います」


「え……」


 目が合うと、そっと視線を逸らす。手に持った魔石で魔力総量を量ったのだろう。


「どうだった?」


「百四十程度です」


 それが高いの低いのか全然分からなかった。だが、部屋でフィアナが話していた時、私が百二十でアーニャが二百と言っていた。そして、フィアナは両手から炎と雷を出現させていた。つまり、それより高い俺はもう少し何か出来るとう事では無いだろうか?


「それは高いのか?」


 低いのか高いのか聞いてみる事にした。そもそも、聞かなければ分からないし、気になる。高ければこの世界では役立つだろうし。


「正直に言いますと、物凄く低いです。その辺に居る小さい子よりも低いですね……」


「…………」


 異世界召喚される主人公というのは総じてその世界では物凄く強いというのが鉄板では無いだろうか?なんでも出来て、女の子に囲まれて……いや、別に女の子に囲まれなくても問題は無いが、それでも弱いのはちょっと……。


「一般的な魔力総量というのは、大体、千五百程度です。これだと凄い事は出来なくても、普通に炎を出したりするぐらいならできます。三千超えた辺りから、戦う事が出来ます」


「俺何も出来ないってことじゃ……」


「そうですね……申し訳ないです」


 フィアナが謝る理由は良く分からないが、勇者降臨の儀を行った本人として申し訳ないのだろう。


「フィアナはどれぐらいなんだ?」


「私は一万四千程度です」


「物凄く高くない?」


「そうですね。この数値は大陸探しても中々居ないと思います。もっと高い人も居ますけど……探し出すのはそれなりに苦労するはずです」


 つまり俺は勇者として召喚されたにも関わらず、全く何も出来ないという訳か。ポンコツ勇者だな……。


 そんな事を思って居ると、重く響き渡る爆発音が城内に響き渡る。


「な、なんの音ですか!?」


 いつも落ち着いた話方をしていたフィアナが焦って居た。自分のお城で爆発音が聞こえれば当然だが、一体何があったのだろうか。


「もしかして、敵襲!?」


 そう呟くと、フィアナは駆け出した。俺も急いで後を追いかける。


 使用人などが慌てた動きをしていたため、爆発音が聞こえた方向はすぐに分かった。フィアナも同じようで、迷わずに駆けていく。


「それにしても早いな。全く追いつかない……」


 全力で走る俺を軽々しく置いていく。走りずらい服を着ているにも関わらず、男の俺より早いのは驚きだ。少しづつ距離が離れていくが、完全に見失う前に煙が上がって居る場所にたどり着いたため、立ち止まる。


「ギルバード!敵襲ですか!?」


 煙が上がって居る場所には騎士団長も居た。だが、慌てるフィアナとは対照的に、騎士団長は全く慌てて居なかった。


「違います。敵襲ではありません」


「そうですか……良かったです」


 騎士団長の言葉にフィアナは安堵のため息を吐いた。爆発音に慌てていた使用人も、騎士団長の言葉で落ち着きを取り戻す。それほどまでに騎士団長は皆から信頼されているのだろう。


「そうも言ってられない二ゃ!ある意味、敵襲よりも凄い事が起こってる二ゃ!」


 その言葉と同時に煙が上がって居る部屋から柊が無傷で出てきた。安心した俺も安堵のため息を吐く。


 柊が出てきた部屋も俺が先ほど居た場所と全く同じ場所だった。つまり、魔力総量を量って居たのだろう。だが、そうだとすれば先ほどの爆発は一体……。


「ツカサは凄い二ゃ!私は初めて見た二ゃ!」


 飛び回るアーニャの手には、フィアナと同じ魔石を持っていた。しかし、俺がデザイアを発動し終わった時とはまるで違う。別の石のように光輝いている。


 その輝きだけで、広い部屋の中を明るく出来るほどの輝きで、どういう違いなのかは聞かなくてもかわかってしまった。俺の時はただの青い魔石だったからだ。


「姫様、聞いてください。ツカサ殿の魔力総量は、十五万四千です……」


「じゅ、十五万ですか?」


 一般的な魔力総量を聞いた後だからこそ、俺にもわかる。あまりにも高すぎる。フィアナの一万四千ですら中々居ないと言ってたのに、その十倍以上の魔力総量。何が出来るかなど想像も出来ない。


「そう二ゃ!そんな総量聞いた事が無いの二ゃ!これが勇者様の力なの二ゃ!」


「うむ。これほどまでとは恐れ入った……」


 騎士団長も柊の魔力総量に驚いている。顔には出さないようにしているが、額には少しだけ汗が滲んでいる。城を守る騎士団長が驚いているという事は想像出来ない凄さだという事だ。


 数百年生きているというアーニャが聞いた事が無いというのだから桁外れの魔力総量だろう。


「やったのだ!テンプレ異世界最強系主人公なのだ!!」


 少しだけ違う方向に喜んでいる気もしなくもないが、自分の持っている物が、桁外れな力だと知って嬉しいそうにしている。中二病を患っている柊なら尚更だ。


「ところで、ワタルはどうだった二ゃ?ツカサが凄いのだから、ワタルも凄いはずなの二ゃ!」


「一般的には女性よりも男性の方が魔力総量というのは高い。もしかすると、ツカサ殿よりも高い可能性もあるはずだ」


 何も知らない二人から期待の眼差しを向けられる。一方、俺の魔力総量を知って居るフィアナは、気まずそうに視線を逸らす。出来れば自分から言うより、フィアナに言って貰った方が嬉しいのだが……自分で言う事にする。


 どうして俺だけ低いのか?などと聞かれても答えられないし、俺にはどうすう事も出来ないからだ。


 だが、隠す訳にも行かない。ここは腹をくくって正直に言うしか無いだろう。というか、嘘を付いてもデザイアを使えないのだからバレてしまう。


「百四十です」


 俺の言葉に少しの間だけ、時間が止まり……アーニャとギルバードは同時に声を上げる。


「え」


「…………」


 ある意味驚いた二人は、そっと俺から視線を逸らした。その気遣いが逆に心に響く。


「とりあえず……これからこの事を話に戻りましょうか」


 フィアナがそう言ってくれたおかげで、この場は何事も無く終わった。最強主人公は夢のまた夢だった。


これは少し差がありすぎないか?何も出来ない勇者と対照的に、伝説になりかねない勇者、柊。同じ勇者として呼ばれたにも関わらず、全く別次元の性能差に肩身が狭いのだが……どうしてこうなった?


 訳が分からないまま、俺はその場で立ち尽くすのだった。


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