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異世界召喚された理由

手に取った本を広げて、フィアナは俺たちに見えやすいように広げる。そこには地図が広がっており、俺たちには全く読めない文字が書かれていた。


 日本語に近い訳でもなく英語に近い訳でも無く……全く見た事が無い文字だった。この世界での共通文字なのだろうか?そうなると、読めないのは物凄く困る。


「まず、この国には四つの大陸があります」


 広げた地図には、フィアナの言う通り、四つの大陸に分かれている。境界線のようなものが描かれており、それぞれに名前があるようだが、読めない。


「全く読めないのだ……言葉は伝わるのに、可笑しいのだ」


 確かに柊の言う通り、フィアナたちが話す言葉は日本語に聞こえる。しかし、書かれている文字は全く知らない。桃太郎の世界のように、主人公補正が掛かって居るのだろうか?


「まぁ、まぁ、とりあえずそれは置いておきましょう」


「そうだな。読めない物を気にしても仕方ないし」


「そう二ゃ!勉強をすればすぐに読めるようになる二ゃ!」


 楽しそうに笑うフィアナは、書かれている文字を指さしながら口を開く。


「ここが、私たちが居るメロディア大陸です。ここが、アレセイア大陸、スノー大陸、イデア大陸です」


 名前を言いながらフィアナは指さしをしていく。文字は読めないが、四つしか大陸が無いため、覚える事は比較的簡単に出来る。


 その地図には大陸の名前以外にも色々書かれているみたいだ。細かく書かれている場所もあるため、この本には世界について詳しく書かれているのだろう。


「四つの大陸には、それぞれお城があります。大陸の名前がお城の名前になっています」


 それはますます覚えやすい。メロディア城にアレセイア城、スノー城にイデア城。大陸の名前だけ覚えておけば、問題ないようだ。


「この四つの大陸は、それぞれ全く違います」


「どう違うんだ?広さとかか?」


 地図を見る限り、特に違う所は見えない。大きさもほとんど変わりないように見える。


「いえ、大きさなどは対して変わりません。全く違うのは、大陸の環境です」


「環境か……」


「そうです。例えるなら、私たちメロディア大陸は、自然が多くあります。逆にスノー大陸は、自然は多くありますが、雪に覆われているため、一面銀世界になります」


 スノー大陸と呼ばれているだけあって、名前の通り雪の大陸のようだ。多分だが、俺が想像している以上に雪に覆われているに違いない。


「他の国はどんな感じなのだ!?」


「アレセイア大陸は海に面しているため、水に潤っている二ゃ!イデア大陸は、不思議な森とか、不思議な生物が多く居る二ゃ!」


 アーニャが楽し気に説明してくれる。耳をピコピコ動かし、尻尾が大きく揺れている。


「イデア大陸はアーニャのような、亜人達が多く住んでいると『言われている』大陸です。あくまでも、言われているだけですが」


 今までの話をまとめると、この世界には魔力心コアと呼ばれる物があり、それが魔力の源になっている。そして、魔力を使い、自分の魔力で出来る限りの事が出来るのが、デザイアと呼ばれるこの世界の魔術という訳だ。


 亜人も居るが、会える頻度は限りなく低い。どこに住んでいるかも良く分かって居ない。


 四つの大陸があり、それぞれ環境が違う。そして大陸ごとにお城が存在する。という事は、フィアナのように王女様も各自存在するという事になる。今分かって居るのはそれぐらいだろう。


「ここまでは大丈夫ですか?」


 フィアナは広げていた本を閉じて、自分の元に戻す。本を使うのは大陸の説明だけのようだ。


「大丈夫だ」


「我も大丈夫なのだ!」


「ふふ、良かった。それなら本題に入れます」


 ここまでは、この世界についてフィアナとアーニャから聞いていた。何かためになる事があると思ったからだ。


 そしてついに、俺たちがこの世界に召喚された理由を説明してもらう。俺たちからすれば、いつも通りに物語の世界に来たという感覚だ。しかし、フィアナたちからすれば、俺たちは勇者降臨の儀で召喚された勇者という事になる。


 この世界に勇者を降臨しなくてはならない出来事が起こるという事だ。多分だが、このメロディア大陸……いや、この国を揺るがす出来事が起ころうとしているのだろう。


 勇者という自覚は全くないが、そういう目的で召喚されたというのは理解している。何が出来るか全く分からない世界だが、物語を完結させるために、出来る限りやろう。


「私がお二人をお呼びしたのは、ある大会に出て欲しいからです」


「大会なのだ?」


 柊も俺と近い事を考えていたのだろう。大会に出て欲しいと言われて少し戸惑っている様子が出ている。


「はい、もうじきある大会が開催されます。数百年に一度しか開催されない大会が行われるのです」


 フィアナは真剣な顔でそう言った。そして、深い深呼吸をして、再び口を開く。


神種選定じんしゅせんていと呼ばれる大会です」


「それはどんな大会なんだ?」


 名前だけではどういう大会なのか全くイメージする事が出来ない。だが、何か物凄い事が起きるというのは想像出来る。数百年に一度と言うのだから、きっとそうなのだろう。


「神種選定とは、太古の時代から行われていると言われている歴史ある大会二ゃ!」


 アーニャが手を広げて、思い出すように話す。まるで、太古の時代を知ってるかのように。


 気になるため、俺はフィアナの方に視線を向けた。すると、フィアナも俺の方に視線を向けていたため、目が合う。


「私は本で読んだ程度の知識しか持っていないので、アーニャに話をしてもらいます。私たちよりも、何百年も年上ですから」


「な、何百年!?」


 容姿は俺や柊、フィアナと全く変わりはない。十代と言われても違和感は無い。逆に、何百歳と言われても全く納得が出来ない。それほど違和感がある。


「もともと、私たちよりも亜人の方は、長生きです。人間では百年生きれば長い方ですが、亜人の方は百年なんて、私たちに例えると、まだ子供です」


「そういう事二ゃ!だから、私は前回と前々回の神種選定を見てきた二ゃ!だから、私が説明する二ゃ!」


「本当はエリスに話をして欲しかったんですが、断られましたので……」


 エリスというのはここに来る前にあったエルフの事だ。見た目は俺たちより少し年上に見えたが……フィアナの話方から察しれば、アーニャよりも年上なのだろう。


 なんか、年齢って信じられないと心から思った……。


「エリスはあんまり過去を話さない二ゃ!だから今回は私で我慢して欲しい二ゃ!」


「それは大丈夫なのだ!」


 その話には物凄く驚いたが、とりあえず神種選定について話を聞く事にする。確実に、この物語を完結させるために重要な出来事だ。しっかり聞いておく必要がある。


「それで二ゃ!過去に神種選定が行われた時も、何百年単位で行われた二ゃ!そして、必ず誰かが勝者として勝ち残ってる二ゃ!」


「戦いが関係しているのか?」


 大会と言われていたので、何かをするのだと思って居たが、アーニャの話を聞く限り、戦う物らしい。


「そう二ゃ!まず、この選定には参加資格は必要無い二ゃ!誰でも予選には出られる二ゃ!予選には二ゃ!」


 二度言ったので、これは重要な事なのだろう。


「本選には各大陸五組まで参戦出来る二ゃ!ちなみに、一組二人まで二ゃ!そして、この五組は大陸で行われる大会に勝ち抜く必要がある二ゃ!勝ち抜くと、大陸を代表して、神種選定に出る事が出来る二ゃ!」


「出るとどうなるんだ?」


 この大会に出る事は確定だが、これに出て俺たちは何をすればいいのだろうか?優勝が目的であれば、優勝するとどうなるのかも気になる。


「優勝すると、優勝者には大陸から莫大の富が与えられる二ゃ!そして、大陸のトップ……この場合は王女様には、神種様から願いを叶えて貰える二ゃ!」


 なるほど……俺たちには富が与えられ、フィアナには叶えたい願いを叶えて貰えるという特典が付く。そりゃ、勇者を呼んででも優勝したい訳だ。


 どんな願い事かは聞かなければ分からないが、教えてくれるのかも全く分からない。とりあえず、話を聞いた方が良いだろう。


「そういう訳二ゃ!何か質問ある二ゃ?」


「神種というのは一体なんなのだ!?」


 柊は手を上げて、真っ先に答える。叶えたい願いよりも、神種の方が気になった見たいだ。そういう所は柊らしい。


「神種というのは、私と同じ亜人二ゃ!」


「けど、全く立場が違います。アーニャは獣人という種族ですが、神種様は言葉の通り、神様に近い種族です。だからこそ、願いを叶える力も持っています」


「だったら、その神種を仲間にすれば、ずっと願いを叶えて貰えるのだ!それなら、選定も行わなくていいのだ!」


「……………」


 柊の言葉にフィアナとアーニャは口を閉ざす。そもそも、二人が様と付けて呼ぶのだ。この世界では特別な存在だろう。そんな神種を味方にするなど出来る訳ない。


「そんな事出来る訳ないだろ。ごめんな、こういう奴で……」


 宗教を信仰している者に対して、信仰している神様を馬鹿にしたら怒るのと同じで、この国では神種というのは信仰に近いのだろう。一種の神様のような存在だ。


「いえいえ……流石にその発想は無かったので驚いただけです。別に怒った訳じゃないですよ?」


「私も同じ二ゃ!確かに仲間に出来たら確かに最高だと思う二ゃ!けど、神種様というには実体を持たないと言われているのだ!」


「あくまでも噂ですけどね。合った事ある人はこの世界には居ませんし、神種様を見た者は、神種様の事を誰かに伝えてはいけないと聞きますし……」


 ようは、神種という存在は居るのだが、今この世界に居る人達は見た事が無いという事か。ますます、神様を信仰しているのと似ている。神様も居るか居ないか全く分からないしな。


「という訳二ゃ!二人には神種選定に出て欲しい二ゃ!そして、優勝して欲しい二ゃ!!」


「その大会は命を失う危険性はあるか?大きな怪我を負う可能性とか……」


 アーニャの顔に少し陰りを感じて、俺は確信する。この大会は願いを叶える大会だ。そんな命の危険も無く、願いを叶えてくれる訳が無い。だからこそ、優勝者には莫大な富が与えられるのだ。


 どれほどの富なのかは知らないが、おそらく一生遊んで暮らしても使えきれない量なのだろう。それを求めて、大陸中から集うに違いない。


「怪我はエリスが直してくる二ゃ。だけど、命は治らない二ゃ。当然、死んでしまう可能性は十分にある二ゃ……いや、私が知って居る範疇だと、毎回に死人が出ている二ゃ」


「毎回か……」


 俺たちにとってはこの世界は物語の世界だ。だが、この世界で死んでしまうと、俺たちは現実でも死んでしまう。それだけは絶対に避けたいが、この大会に出なければきっと、戻る事も出来ないだろう。


「出るのだ!!」


 突如、柊が大声で立ち上がり、拳を上に突き上げる。顔は真剣で、瞳には決意が宿って居る。柊は命の危険がある理解していながらも、大会に出る事を迷っていないのだ。それなら、俺も答えは同じだった。


「俺も出るよ。ここに来たにはそれが理由だしな」


 花恋と一緒に暮らすためには、物語を一つでも落とす訳には行かない。それだけ、一緒に暮らすのが遅くなるなるためだ。


 命の危険など初めからあると知って居た。物語の世界に行く時から知って居た。今更迷う必要は無いだろう。


「ありがとうございます……本当にありがとうございます!」


 フィアナは涙ぐみならがお礼と告げる。その姿を見ただけで、この大会に掛ける思いというのが伝わってくる。


 何か物凄く大切な願いを叶えるために、俺たちを呼んだのだと、なんとなくだが分かってしまった。


 フィアナも俺たちと同じで、叶えたい願いがある。誰にでもある物だが、俺はそれを叶えてあげたいと思った。俺に出来る事ならしようと心から決めた。


 現実では特に個性なども無く、得意な事も無い。だが、この世界は勇者として呼ばれたのだ。勇者なら強い力あるはずだ。だから、頑張って優勝しよう!


 そう自分に言い聞かせた。

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